第44話 来訪者の目的
「ちょ、ちょっとまって。今はだめ、片付けるから少しだけ待って」
「片付けなら一緒にやってあげるからいいでしょ」
手に持つスーツケースを私に押し付けてきた。いや、ほんとまってせめてシルフィーナ達を異世界に戻すまで待ってほしい。
「鈴ねえ本当に少しだけ待ってお願い」
受け取ったスーツケースを一度足元において家の方に走る。そのまま玄関から家に入らずに庭のテントの中に潜り込み入り口を閉めた。
「三人ともごめん、暫くあっちの世界に行っていて」
「何があったの?」
「説明はまた今度でお願い!」
私は異世界の拠点をイメージして入口を開ける。シルフィーナたちは、仕方がないなという感じでテントからでていった。
「それじゃあ、隙を見てこっちに来るようにするから」
シルフィーナたちの返事を待たずに私は再びテントの入り口を閉めて家へ戻るイメージをしてから入口を開けた。すると目の前に鈴ねえの顔があった。
「ぎゃーー」
「わーー。って何してるのようるさいわよ」
「ご、ごめんって鈴ねえなんでここに」
「なんでそんなにあせっているのかと思ってね。なんでこんなところにテントがあるの? もしかしてここで寝てるの?」
キョロキョロとあたりを見回して首を傾げている。
「もしかして私はここで住めってこと?」
「ちがうから。ほら中を見たらわかるだろうけどキャンプ気分を味わうためにのものだから」
「ふーん。腑に落ちないけどまあいいわ。それより片付けはいいの?」
テントの中を覗き込みながら鈴ねえはそう聞いてきた。
「えっと、もう大丈夫かな?」
「音羽の焦りようからてっきり男でもいるのかと思ったのだけど違ったか」
「私に男? あはは、またまたご冗談を」
「ごめん、私が悪かったからそんな真顔で答えないで」
私は鈴ねえの横を通ってテントから外に出る。
「荷物運ぶのよね」
「あ、うん、本当にごめんなさい」
しょんぼりしている鈴ねえを見て仕方がないなと気を取り直す。まあ、私にもいろいろとあるということで。
「もういいから、荷物を運びましょ。それになんで鈴ねえがここにいるのか聞きたいし」
大門まで戻りスーツケースを一つずつ家の中に持ち込む。二人で二往復して全部運び終える。鈴ねえにはテレビのある部屋に行ってもらい私はお茶を入れて戻る。
「それで日本にいないはずの鈴ねえが荷物を持ってここにきたの?」
鈴ねえこと峰崎鈴音は父方の従姉妹にあたる人になる。私とは違い身長は百六十を超えていて、体型も羨ましいほど整っている美人さんだ。
「急に来て本当に申し訳ないけど、しばらくここに置いてくれないかな」
「日本にいないはずの鈴ねえが荷物をいっぱい持って来たのだからそれはわかるけど、理由を聞いても?」
鈴ねえは学者をしていて、大学を卒業してからしばらくして海外に渡った。それ以降は数年に一度日本に戻ってくるくらいで、今回のように長期の帰国としか思えないほどの荷物を持ってくることはなかったと記憶している。
「私が民間伝承学の学者っていうのは知っているわよね」
「えっと学者ってのは知っているけど、何の分野とかは初耳かな」
「あれ? 言ってなかったかな。まあそれはいいわ、今回日本に戻ってきたのはある動画を見たからなのよ」
なんだか嫌な予感がする。民間伝承学というのがどういうものかよくわかっていないけど、伝承学というくらいだから昔から伝わっているなにかを調べる学問なのだろう。その学者である鈴ねえがわざわざ動画を見て日本に帰ってきた。
「動画を見たくらいで日本に帰ってきたの? もしかしてネッシーでも映っていたとか?」
「言いたいことはわかるけど、ネッシーは未確認動物学だから民間伝承学とは違うわね」
「そうなんだ。えっとそれでどういう動画だったの?」
「言葉で説明するより直接見てもらったほうが早いわね」
鈴ねえはスマホを取り出すと素早く指を動かして私の前にスマホをおいて動画を再生した。その動画は見覚えのあるものだった。というかシルフィーナが映っていた。
「えっとこの動画がどうしたの? 映画の宣伝か何かかな? 最近のCG技術はすごいんだね」
「それがそうではないのよ。私の知り合いに動画に詳しい人がいてね、この動画は全く加工された跡がないようなのよ」
「へ、へーそうなんだ」
これはかなりピンチではないだろうか? もしかして私のことが動画のどこかに入っていて身バレしちゃったのだろうか。
「それでねここに映っている妖精が日本の何処かにいるって話になってね。それで調査のために暫く日本に滞在することになったのよ」
「そうなんだ。でもどうして日本だと思ったの?」
私の知る限り日本を特定する動画はなかったと思うのだけど。
「ああ、それは見てもらえればわかると思うけど、日本家屋のに思える場所で何かのアニメだとおもう日本語が聞こえているのよね。ヨウツーブ社に詳しく聞こうとしても個人情報は教えられないと言われて教えてもらえなかったわ。それと一応ヨウツーブやツブヤイッターで投稿者にコンタクトを取ろうとしたのだけど返事はなかったわ」
鈴ねえの差し出してきたスマホをみると、そこにはシルフィーナとグランディーネが映し出されていた。それはシルフィーナとグランディーネの二人がアニメに出てくるキャラと同じように変身ポーズをしているものだった。
そう、それは私が以前何気なくスマホでとったあの映像だった。





