第43話 禁断の甘味その名はさつまいも
「流石に寒くなってきたね」
私は台所から熱々のお茶をテーブルに人数分並べてこたつに入る。
「んーわたしたちはそうでもないよ」
シルフィーナはそう言っているがこたつに肩まで入っている姿からは、全く説得力が感じられない。
「シルフィーナたちには状態異常が効かないのよね?」
「そうですわ~」
グランディーネはこたつからでてきて、お茶とみかんを食べ始める。
「大体の物語だとお酒って状態異常の扱いになることが多いけど、シルフィーナは普通に酔うよね」
「お酒は百薬の長よ。つまりお酒は薬なのよ」
「そういう扱いになるんだ」
ラノベあるあるだと、お酒は毒の扱いのものが多いけどシルフィーナたちにとっては薬になるようだ。
「ん? シルフィーナたちって病気になったりするの?」
「なりませんわ」
ウィンティーヌはお茶が熱かったのかチョロチョロと水を注いで冷ましている。
「なら薬って必要ないよね?」
「そうですわね」
「そもそも薬と毒は表裏一体みたいなものだから、お酒が薬扱いならやっぱり酔うのはおかしくないかな?」
「言われてみますとそうですわね」
ウィンティーヌと一緒に首を傾げる。
「まあ考えても仕方ないか」
お酒を飲んで酔っ払うのはシルフィーナだけなので、彼女だけ特にお酒に弱いだけなのかもしれない。グランディーネもウィンティーヌも酔わないし、ウィンティーヌに関しては水と変わらないように飲んでいる。
まったりと面白くもないテレビを見ていると台所からチンという音が聞こえてきた。私はこたつから出ると台所へ向かいオーブントースターを開けて中身を取り出した。
「あつあつ」
素早くお皿に乗せてこたつのところへ戻る。
「オトハはそれが好きね」
「だっておいしいんだもん」
「わたしもほしいですわ~」
グランディーネが物欲しそうに言ってきたので、お皿ごと彼女の前に差し出す。
「もう一個作るから三人で食べて」
「やったー」
「ありがとうございますわ」
「なんやかんやいってもシルフィーナも好きでしょうに」
「大好きよ、甘くておいしいから」
再び台所へ向かい、あらためて一本さつまいもを洗ってからオーブンへいれる。できるまでは時間がかかるけど仕方がない。オーブンの大きさから一階に一つしか焼けない。
「ストーブどこになおしたかな。ストーブがあればお湯も沸かせるし、さつまいもも焼けるしいいのだけど。家の中では見ていないから蔵になおしていたかな?」
もしくは家をもらった時に処分したかもしれない。明日にでも蔵を探してみてなければ買うのもいいかな。そう考えながらこたつのところへ戻ると、既にさつまいもは皮だけの状態になっていた。
「いや早くない?」
「オトハおいしかったよ」
「ごちそうさまですわ~」
「まるではちみつを舐めているような甘さでしたわ」
「グランディーネの肥料とウィンティーヌの水のおかげかな」
おわかりのようにこのさつまいもは異世界でノム爺たちが作ったやつだ。最初に私が植えたやつではなくて、収穫後に改めてノム爺たちに植えてもらったものになる。ただ肥料と水は同じなので味はそこまでの違いはない。
今家の畑は寒くなり実のなりが悪くなってきたので切り倒して今は何も植えていない。冬野菜でも植えようと思ったのだけど、異世界でノム爺たちにお願いしたほうが楽なので仕方がないと思う。それに旅を始めると世話ができないと言い訳をしておく。
冬は寒いので異世界のほうが過ごしやすい。夏も同じようなことを言った気がするけど気のせいかな? それと南に向かえば向かうほど気温が上がるので寒暖差と服装には気をつけないといけない。
再びチンと言う音が台所から聞こえた。台所に行き、さつまいもをひっくり返して再び温める。オーブンレンジの調整できる時間が最大十五分なので二回温めて合計三十分温める。
再び十五分後チンと聞こえてきたのでこたつから抜け出してさつまいもを持ってこたつに戻る。熱々の皮を少しずつ剥がしていく。皮をめくるとその中は真っ黄色で見るからに甘そうに見える。
流石に熱々なので少しだけ冷ましてから口をつける。歯につきそうなほどのねっとりとした口当たり。すごく甘い。ここ最近は毎日最低でも一本は食べている。あまりにも甘いので、少しカロリーが心配になるがやめられない。
「みんな晩は何が食べたい?」
「んーお鍋?」
「お鍋もいいね」
「おでんがいいですわ~」
「あーおでんか、おでんはちょっと下ごしらえが必要かな。作るなら明日でいいかな」
「そうめんをいただきたいですわ」
「ウィンティーヌってそうめん好きよね。だけど流石に冬にそうめんはどうなんだろ? ラーメンみたいに作るなら良さそう?」
この中だとお鍋が簡単でいいかな? もんだいは冷蔵庫に入っている食材で何鍋になるか。
「それじゃあ今日は鍋にしようか」
こたつから出てお皿を回収して台所へ向かう。冷蔵庫には何が入っているかなと確認しようとしたところでピンポーンとインターホンの音が聞こえた。
「シルフィーナなにか通販で頼んだ?」
「頼んでないよ」
「それじゃあなんだろ?」
インターホンのカメラを確認するも誰も映っていない。いたずらかな? そう思ったところで再びピンポーンと音が聞こえてきた。でもカメラには誰も映っていない。
「ど、どちらさまですか?」
音声を通話にして聞いてみる。
「久しぶりね私よ私」
「私さん? え、その声って鈴ねえ?」
「とりあえず中に入れてくれないかな」
「え、ちょっと、急にどうしたの? ちょっとまってねすぐ行くから」
私はそう言ってその場を離れてこたつのところへ移動する。
「みんな大変、鈴ねえがきた。どこかに隠れるか異世界に戻ってもらえるかな」
「中にいれるの?」
「うん、従姉妹なんだ。確か今は日本にいないはずなんだけど」
「かくれますわ~」
「そうね、テントに隠れればいいかしら?」
「どこでもいいから見つからないようにお願いね」
シルフィーナたち三人は連れだって庭に張ったままのテントへ飛んでいった。それを見送り窓を閉めて私は急いで門へ向かう。
「おまたせ鈴ねえってどうしたのその荷物?」
潜戸を開けるとそこには鈴ねえと複数のスーツケースが置かれていた。
「えへっきちゃった」
「ごめん、意味がわからないのだけど」
いやほんとどういうこと?





