第40話 妖精って結構いっぱいいるようです
「グランディーネさま、お久しぶりでございますじゃ」
「おひさしですわ~」
ずらりと並んだ小さなおじいさんがグランディーナに片膝をついて頭を下げている。その数は総勢で、何人くらいいるのかな? 百人を超えているよね。ミケさんが連れてくるって言ってた人数って百人くらいと言っていたよね。報酬は変わらずでいいって? それなら何も問題ありませんよ。
「ふむ、お主が依頼主じゃな。わしらはノームじゃ」
「はじめまして私は峰崎音羽です。オトハと呼んでください」
「オトハじゃな」
「えっと、代表のおじいさんの名前を聞いてもいいですか?」
「わしらノームに個人を表す名はないのじゃがな。そうじゃの、ノム爺と呼んでもらおうかの」
どうやらノム爺とその仲間の小人たちはノームらしい。確かノームも妖精だと聞いた覚えがある。正確な身長はとんがり帽子をかぶっているのでわからないけど百センチほどの高さに見える。
見た目は白雪姫に出てくる七人の小人を思い浮かべればわかりやすいかもしれない。全員が白くて長いひげをたくわえている。ただ老人かというとそうにも見ない、年齢不詳といったほうがいいかもしれない。
「ノム爺以外のノームを呼ぶときはどうしたらいいの?」
「わしらノームは一人であり全てでもあるのじゃ。いわゆる全は一、一は全というやつじゃな」
どこかの錬金術師かな? あれ? あれは一は全、全は一だったかもしれない。たぶん言っている意味はだいたい一緒だと思うけど。
「つまりはノム爺以外のノームに話をしても、ノム爺に通じるって感じ?」
「そういうことじゃ」
そういうことらしい。
「依頼はここに植えられている芋を全て収穫したらよいのじゃな?」
「はい、お願いします」
ノム爺はノームたちのところへ歩いていく。ちなみに今回はじゃがいもとさつまいもだけの収穫になる。玉ねぎととうもろこしはまだ先なので今回は収穫をしない。
「皆聞いたとおりじゃ。それでは収穫をはじめるのじゃ」
ノム爺がそういうとノームたちが一斉に畑に向かっていた。ノームって身長が小さいので収穫作業は楽なのかもしれない。あと今回来たノームは農業関係に特化しているとミケさんが教えてくれた。
収穫作業を見ている間にミケさんに聞いてみると、ノームには他にも種類がいるとのことだった。鉱山採掘が得意なノームもいれば、料理が得意なノームや物作りが得意なノームがいるとのことだった。
そしてそれぞれのノームにはノム爺のような長がいて、その長と意識を共有しているようだ。だから先ほどノム爺は他のノームと話しても伝わるといったのだろう。
「収穫は終わったのじゃ。倉庫はサービスじゃ」
収穫作業の傍らノム爺たちは、収穫物の置き場所を用意するのをすっかり忘れていた私の代わりにちょっとした小屋を作ってくれた。高速で組み上がっていく小屋は見ていて面白かった。
「それじゃあここから二割をノームが持っていくにゃ。そしてにゃーが仲介料として一割もらっていくにゃ」
収穫物が三割ほど減ったけど、かなりの数がまだ残っている。倉庫を作ってもらって助かった。種芋の分を残しておくにしてもそれでも簡単には使い切れない量に思えた。それに一つ一つが大きい。
「ねえノム爺、倉庫のお代としてもう一割ほどもらってくれない?」
「ふむ、オトハ殿がいいのであれば受け取らせていただくのじゃ」
もう一割減ったけど、まだ大量にある。倉庫を作ってもらえたので、じゃがいもは常温でなら三ヶ月は大丈夫かな? たしかさつまいもも三ヶ月は持つはず。近所のさつまいもを作っている人は、確か地下に保存していた気がするから後でグランディーネに穴を掘ってもらって試しにそこで保存してみようかな。
「それでは儂らはかえるのじゃ」
「ノム爺ありがとうね。あ、そうだ、今度また農作業をお願いしてもいいかな? できれば種まきとか苗を植えるのを手伝ってもらえると助かるのだけど」
「ふむ、報酬次第で受け持つのじゃ」
「その時はミケを通してくださいにゃ」
私が勝手にノム爺と取引をすると思ったのかミケが間に入ってきてそういった。
「その時はミケさんを通してお願いするわ。報酬が適切かとか何がいいかとか私にはわからないから」
「任せるにゃ」
「まあそれもよかろう。それではグランディーネさま、またお目見えできることを願っておりますじゃ」
「またねですわ~」
ノム爺は最後にグランディーネに挨拶をしてから、他のノームたちと合流した。そして積み上げられていたじゃがいもとさつまいもごと空気に溶けるように消えた。ノームたちが消えた場所は、蜃気楼のようにゆらゆらと空間が揺れて見えている。きっとあれが妖精の小道なのだろう。
それを見送りミケさんを見てみると、ミケさんは自分の受け取る報酬分のじゃがいもとさつまいもを次々にリュックサックに入れているのが見えた。そのリュックサックは不思議なことに、どれだけいれても膨らむ様子はなかった。
「あれどうなってるの?」
「キャット・シーの能力ね。あれがあるからキャット・シーは商人をしているのよ」
シルフィーナがそう答えてくれた。ラノベによくある三大チート能力の一つである無限収納的な物をキャット・シーは使えるのだとか。あのリュックサックに収納の機能があるわけではなく、キャット・シーとしての能力らしい。
私の異世界渡りと似たような仕様なのだろう。ミケさんの無限収納も収納したいというイメージをすることで使えるいうことだった。
「それではにゃーは帰りますにゃ。それからオトハさまにはこれをわたしておくにゃ」
そういってミケさんは黄色い鈴を手渡してきた。
「これは?」
「にゃーに用事があるときはそれを鳴らせばいいにゃ」
試しに鈴を降ってみたけど音がならない。
「鳴らないけど?」
「用事がなければ鳴らないにゃ」
「そうなの? それじゃあ」
もう一度降ってみるとリンリンと音がなった。
「にゃにゃ、にゃーの肉球をさわりたいにゃ?」
「あーうん、使い方はわかったわ」
ミケさんの手を取り肉球を揉むように触る。
「にゃーの肉球は高いにゃよ」
「もしかして売ってくれるの?」
「売り物じゃないにゃ」
手を振りほどかれた。いや流石に切り取って売って欲しいとは言わないけど。
「冗談よ。その代わりたまには触らせてね」
「しかたないにゃー」
どうやらお許しが出たようだ。
「それではにゃーはいくにゃ」
ミケさんはリュックサックを軽々と背負い、ミケさんが立っていた場所の空間が歪むと同時にその姿を消した。





