第38話 人手がほしいと少し思う
異世界でそれも森の近くに拠点を作って何をするか。一言でいうと農業をやってみようかと思っている。とはいえ売り先がある訳では無いので家庭菜園の規模を少し大きくした程度にはなりそうだけど。
なんてったってよく食べる妖精が今は三人いる。そして人類種の暮らしている大陸に行くための方法である妖精の小道を使うには、あと三人の妖精から祝福をもらわないといけない。
シルフィーナたちの話では、祝福をもらってそれで終わりとはならないだろうと。きっとグランディーネやウィンティーヌのように、私のところに居着くだろうと。
どうやら私の作るご飯というよりか、料理がおいしいかららしい。そもそもシルフィーナたち妖精には料理をする文化がない。私に出会うまではあまり料理に興味がなかったように感じられる。もしかすると異世界あるあるの一つ、異世界料理は美味しくないとかそういう感じだろうか。
そういうわけで、食費を浮かせる目的も兼ねて畑を作ろうと思った次第だ。祖父母の持っていた農地のほとんどは売却済みなのだけど。家の前にある車庫の周辺にわずかに残っているので、そこで季節のお野菜を作ろうと思っている。
それと異世界でも作るつもりでいる。日本とは違い私のいる大陸には四季がないという話だ。なので、日本で作るもの以外の季節のものは異世界で作る予定をしている。あと異世界だと倍化の能力を使って成長速度を倍にできるようなので、それを活用したら半分の日数で収穫できるようになるだろう。意外と倍化の能力って汎用性が高い気がする。
ちなみに異世界の方はグランディーネにお願いして畑を作ってもらっている。畑を作りたいという話をしていたら「かんたんですわ〜」と言ってすぐにふわふわに耕された土が出来上がっていた。
とりあえず今日は日本のほうで畑を耕そうと思う。こっちではグランディーネにお願いするわけにはいかないのでトラクターを使う。車庫の中に祖父が所持していたトラクターが残っている。
さっそくトラクターに乗り込みエンジンをかけるとブロロロとエンジンがかかる。燃料は軽油。ガソリンではないので注意が必要。車庫を出て畑にする予定の場所まで走らせる。速度は最高速にしても時速三十キロほどまでしか出ない。
大体一反ほどの畑を耕す予定でいる。時間としては一時間ほどだろうか。一応定期的に耕うんをしているので荒れてはいない。のんびり一速で走らせながらのんびり耕す。今日は天気が曇りなので助かった。
この耕うんが終わったら肥料をまいて再び耕うんをしないといけない。それが終われば畝立て機で畝を立てる。一日でやるつもりはないので今日はこの耕うん作業が終わったらゆっくり休もうと思う。
家の方の種まきを終えた。キャベツ、白菜、大根、にんじん、オクラ、ミニトマト、トマト、きゅうり、なす、ピーマン。思いつく限り夏に蒔いたらいい種を選んだ。だいたい二ヶ月くらいで収穫できるだろう。
一方の異世界の方には、それ以外のじゃがいも、さつまいも、たまねぎ、とうもろこしあたりを植えた。じゃがいも、さつまいも、たまねぎは種を蒔くわけではないのでかなり腰にきた。
うん、もう二度とやらない。こんなの一人でやる作業ではないわ。あとちゃんと育てばいいのだけど。雑草の処理はグランディーネにお願いしていて、水やりはウィンティーヌにお願いした。
異世界農業定番の米は作らないのかって? んなもん買ったほうが早いしうちにはコンバインとかないんよ。手作業で収穫? 無理無理かたつむりですわ。それにお米は水の管理やらなんやら大変なので、ああいうのは人手がないとやってられない。
まあなんとか種まきは一通り終わったので暫くはのんびり過ごすつもりだ。
◆
「家にいても暑いだけだし北の大地の方にいってかき氷でも食べようか」
「さんせーい」
流石のシルフィーナも日本の夏の暑さにやられたようだ。久しぶりにワンタッチテントを取り出して、以前川沿いを進んでたどり着いた北の地付近をイメージしながら異世界渡りを使う。
「この辺りは涼しいというより寒いね」
ちゃんとコートを着て来たらよかった。さっさと雪を回収して家に戻ろう。なんども取りに来るのは面倒なので、クーラーボックスいっぱいに雪を入れていく。さらさらの雪なのでなるべくその状態を維持するように詰め込んだ。
「流石にいっぱいにれると重たい」
こういうときこそ倍化の出番。重さをマイナスに倍化することで重さが半分になる。
「あら、オトハさんにシルフィーナさん、気配を感じたと思えばこのようなところで何をしているのかしら?」
どうやら雪をとっている私の気配を感じたようでやってきたようだ。
「かき氷を作ろうと思ってね。ウィンティーヌも一緒にどう?」
「そういうことでしたら私もご一緒させていただきますわ」
「オーケー。ちなみにグランティーヌがどこにいるとかわかる?」
「畑の世話をしているのではないかしら?」
「そういうことなら一度戻ってから畑にいってみるよ」
クーラーボックスを家において、異世界の拠点近くに異世界渡りで移動する。畑の方に向かうとグランディーネが畑の上からじーっと苗の成長を見ている。畑全体を倍加させて成長を早めているおかげか成長が早い気がする。
「グランディーネ、みんなでかき氷を食べるけどどうする?」
「いただきますわ~」
近寄ってきたグランディーネを伴って家に戻りかき氷の準備をする。準備と言ってもクーラーボックスから雪を取って器に乗せてシロップをかけるだけ。
「みんな何味がいい?」
「んーブルーハワイ」
「抹茶がいいですわ~」
「ぶどうをお願いしますわ」
なんとなくいろいろなシロップを用意してみた。ただしシロップって色が違うだけで味は一緒という話なので気分の問題だろう。そのことはシルフィーナたちには言っていない。
この上に果物や練乳ミルクと小豆なんかを乗せれば十分味も変わるだろう。そんな私はいちごシロップの上に練乳ミルクをかけている。
「あーずるいわたしも!」
「あずきがほしいですわ~」
「はいはい、わかったよ。ウィンティーヌは何もいらない?」
「私はこのままでいいですわ」
やっぱり夏はかき氷がおいしい。この後一杯で満足した私をよそに、シルフィーナたちのためにそれぞれ三杯作らされた。妖精ってお腹壊さないのだろうか。





