第33話 やったねオトハちゃん。食費が増えるよ。
まずはステーキから。炭火で焼いたためか柔らかくてジューシーな仕上がりになっている。あとは炭火ならではの香ばしさとでもいえばいいのか普段食べるものよりもおいしい気がする。
普段からステーキを食べているかというとそんなことはないので、そんな気がするだけかもしれないけど。おいしいことには変わりがないのでいいでしょう。なんだかステーキ一枚分食べただけでも満足感が半端ない。これはビールが進む。
無性にお米が食べたくなったので、ローストビーフと一緒にお米を食べた。ローストビーフ丼もおいしくできている。
口直しになるかはわからないけど、野菜類をベーコンで巻いたベーコン巻きを食べ、再びローストビーフ丼を食べる。久しぶりに食べた肉祭に私の胃袋は満足したようだ。そしてビールがおいしい。お肉を食べてビールを飲む。何とも幸せな気分になる。
「あー、お腹いっぱい。ごちそうさま」
私は先にごちそうさまをする。シルフィーナたちはまだ食べている。シルフィーナとグランディーネがたくさん食べるのは知っているけど、ウィンティーヌも二人同様に大食感みたい。三人の様子からすると妖精はそういうものなのだろう。
人の食べるものは食べる必要はないような事を言っていたけど、シルフィーナやグランディーネに負けず劣らず食べている。あとお酒も水のように飲んでいる。全く酔わないというのは本当のことだったようだ。
「後片付けはお願いしていいかな?」
「やっておくよ」
「わかりましたわ~」
「仕方ないですわね」
三人の返事を聞いて私は一人ハンモックに寝転ぶ。お腹がいっぱいになったこととお酒で少し酔ったためか目を閉じるとすぐに眠りに落ちた。
◆
パチパチという薪が燃えている音が聞こえる。
「あー、ごめん寝ちゃってたわ」
辺りは日が暮れたためか真っ暗になっている。時計で時間を確認すると既に日付が変わっている時間だった。
「起きたようですわね」
「火の番をしてくれてたのね。ありがとう」
「おいしいごはんを頂いたお礼ですわ」
シルフィーナとグランディーネの姿は見えない。ハンモックに寝ているのかとおもたけどそこにも二人はいない。
「シルフィーナとグランディーネは?」
「写真がどうとか動画がどうとか言いながらどこかへ行きましたわ」
「そうなんだ」
どこかでツブヤイッタークロス用の写真やヨウツーブ用の動画でも撮りにいったのだろう。私が夜の異世界に滞在したのは初めてなので、夜ならでわの景色が撮れそうではある。
ハンモックから起き上がり、火の番をしているウィンティーヌの横に腰を下ろす。焚き火の火の温かさと薪が鳴らすパチパチという音が心地良い。
「残っていたものは全部三人で食べきっちゃったのね」
「おいしかったですわよ」
「ウィンティーヌの口にあったのなら良かったわ。人の食べ物は食べないといっていたからどうかと思ったのだけど」
「食べる必要がないだけですわ。決して食べられないわけではないですわよ」
「シルフィーナとグランディーネを見ていればわかっていたことだけどね」
「あの二人を妖精の基準とはおもわないでほしいですわ」
そういわれても私が知っている妖精はシルフィーナとグランディーネ、それとウィンティーヌの三人だけだ。三人の共通点は身体的な特徴以外だと、よく食べてよく飲むというものしか思い浮かばない。
「まあいいですわ。おいしいものをいただきましたので、私もオトハさんに祝福をお贈りさせていただきますわ」
「え、別にいらないけど」
私のその言葉が聞こえなかったのか、もしくはあえて無視したのか、ウィンティーヌは私の額に口づけをした。
「うふふ、今後ともよろしくお願いいたしますわ。オトハさん」
「確信犯かな? そもそも祝福ってなんなの? シルフィーナの祝福は言語理解みたいなものだったけど」
「内緒ですわ」
内緒らしい。シルフィーナとグランディーネから祝福をもらったときも特に体の不調はなかった。そもそもグランディーネの祝福の効果も未だにわかっていないので今更か。シルフィーナの祝福は言語理解みたいなものというのはわかっているので、ウィンティーヌの祝福もそういったなにかがあるのだろう。
「いやまって、さっき今後ともよろしくとか言ってたよね。ウィンティーヌも一緒に来るってこと?」
「もちろんですわ。面白そうですから同行させていただきますわ」
どうやらまた食費が増えることになりそうだ。
◆
朝になったところで荷物をテントに放り込んで家に返ってきた。今は朝食を食べている。保冷の関係もあり朝食分の食材は用意していなかった。
「いただきます」
「いただきまーす」
「いただきますわ~」
「いただきます」
今日の朝食は珍しく食パンではない。本日のメニューは納豆ご飯にお味噌汁にレタスとミニトマトのサラダとカブの甘酢漬けだけにした。昨日食べすぎたせいでまだお腹の中に残っている気がするので控えめで。
まあこれだけじゃ足りない暴食児が三人いるので、その三人用にソーセージとハムエッグを追加で用意している。それでも足りなければお酒のツマミとして用意していたスルメでも与えておけばいいでしょう。
三人が食事をしているうちに今日のお昼ご飯用のお弁当を作ることにする。いつもは大体サンドイッチにしているのだけど、今日は朝にご飯を炊いたので久しぶりにキャラ弁を作ることにした。
新キャラ、ではなく新しくウィンティーヌが仲間に加わったのでそれっぽいものを作ることにした。シルフィーナの緑色の髪は青のりをすり鉢で粉状にしてご飯に混ぜて作る。グランディーネの茶色の髪はおかかを使用。ウィンティーヌの白銀色の髪はどうしようかと迷った末に、普通に白ご飯にした。どう考えても白銀色って無理じゃないかな?
あとはおかずでそれぞれの羽の形を表現したのを作った。少し時間がかかったけど三人には見られることなく完成した。テレビのある部屋を除いてみると、三人ともサブスクでアニメを見ているようだった。
今見ているアニメはシリーズとして十年数年続いているもので、今見ているのは確か初期の方のものだったはず。もともとは二人だった主人公チームが次のシーズンで三人に増えたやつだったかな?
三人がアニメを見ている姿を確認してから台所に戻り、冷えたお弁当にフタをして保冷バッグに入れる。
「みんな、その話が終わったらあっちへ行くよ」
三人が頷くのを確認して必要な物をテントに入れていく。旅を始めてからそろそろ二ヶ月になる。当初の予定では一ヶ月くらいで海にたどり着く予定だった。だけど雨によって荒れた川に阻まれて北へ向かうことになったり、途中で週休二日にしたりと予定が変わった。
とはいえ確実に前へ進んでいるおかげで、シルフィーナによるとこのまま何事もなければ、二、三日のうちに海にたどりつけるようだ。もう少しで私の旅も一段落つきそうだ。





