第32話 ふ、増えた
かき氷を食べ終わったところでいつも通り、グランディーネが食器をきれいにしてくれたのでそのまま片付ける。
「さて、ハンモックを試してみようかな」
私はさっそくハンモックに乗り寝転ぶ。結構いい感じ。地面で直接寝なくていいのはかなり快適かもしれない。
「ゆらゆら~」
「ゆらゆらね」
シルフィーナとグランディーネの二人もハンモックに乗り込んで寝転がっている。しばらくゆらゆらしていたら、眠くなってきた。相変わらずのいい天気だけど、パラソルのおかげで直射日光は当たらない。
「あー起きよ。このままじゃあ本格的に寝ちゃう」
ハンモックの上で体を起こして伸びをする。ちょっと試そうと思っていただけなのに思ったよりも寝心地が良い。
「シルフィーナとグランディーネはハンモックはどう? ありゃ寝てる?」
「「…………」」
ゆらゆら揺れているハンモックの上で二人とも寝ている。昼食を食べたから眠くなったのかもしれない。
「はぁ、まあいいか。私も寝ちゃおうかな」
再びハンモックの上で横になる。さわさわと草の揺れる音が聞こえる。肌を撫でる風が心地良い。最近は休みといっても買い物に出かけたりと何かと忙しかった。たまには一日寝て過ごすのもいいかもしれない。
◆
何かが乗っているような寝苦しさを感じて目を覚ますと、なんか増えていた。何が増えていたかって? うん、みんなが今思い浮かべたものじゃないことだけは確かですよ。
「おも……くはない」
身動きが取れない。掴んでいいものか迷う。顔を動かしてシルフィーナとグランディーネを確認してみる。まだ寝ているようだ。
「どうしたものかな。そろそろ晩御飯の準備を始めたいのだけど」
「んっ、ん? ふわぁー。あら目を覚ましましたの?」
「それはこっちのセリフかな。とりあえずどいてもらえる?」
「あら、失礼しましたわ。あまりにも寝心地がよろしかったもので」
「誰の胸が真っ平らで寝やすかったって?」
「そのようなことは一言も、ふむ……いえ何もございませんわ」
「おいこら」
先程まで私の胸の上で寝ていた者が浮かび上がるのを確認して体を起こす。
「はじめまして。私はウィンティーヌと申します」
ウィンティーヌと名乗った妖精の見た目は、白銀の髪と青い瞳をしていて青色の着物のような服装をしている。背中からは蝶のような羽が生えている。きっとこの妖精もシルフィーナとグランディーネの同僚なのだろう。
「あー、ウィンティーヌがいる」
「おひさしぶりですわ~」
私とウィンティーヌの話し声で目を覚ましたのかシルフィーヌとグランディーネがウィンティーヌの側に寄ってきた。
「ウィンティーヌが北からでてくるなんてどうしたの?」
「あなたたちが近くにいるのを感じたからですわ。それからアレクシアさまが気にかけている人間……? 人にも会ってみたいと思いましたの」
どうやらアレクシア様経由で私のことは知っているということらしい。あの白い空間で会った後は、シルフィーナを経由して疑問に答えてもらったくらいだろうか。一応私のことを気にしてくれていたというわけだ。まあそれよりも、晩御飯の準備をそろそろ始めたい。
「えっと、ウィンティーヌだったかな。あなたもご飯を食べていく?」
「お食事ですか? 私たち妖精は人が食べるものをとる必要はございませんが」
「そうなの? シルフィーナとグランディーネは普通に食べているけど」
そういえばそんな事を聞いた気もする。確か花の蜜を食べているとかどうとか。もしかして食費がかさんでいるのは、餌付けした私が悪いのだろうか?
「食べるなら用意するし、食べないならそれでもいいけど」
「よろしければいただきたいと思いますわ」
「わかったわ。それじゃあ少し待っていてね」
さてと、久しぶりにキャンプメシを作りますかね。そう、健康診断も終わったので久しぶりに焼き肉をするつもりだ。いわゆるBBQだ。まあ以前もやっているのだけど、今回は食材を豪華にしている。
焚き火台に以前使ったオガ炭を入れて火をつけ網を乗せる。まず用意したのは牛肉のステーキ。一人一枚……といきたかったけど、人数が一人増えたので三枚焼いた後に切って分けるつもりでいる。
ステーキを焼いている横にグリルプレートを置いて牛ロース肉を焼いていく。これは御飯の上にのせてローストビーフ丼にする。
次は家で作っておいたチーズのベーコン巻きに火を通す。他にも野菜をベーコンで巻いたものを多数用意している。このベーコンの使いやすさは異常。何を巻いても美味しくできるのはすごい。
焼き上がった小さめに切ったステーキ肉を四つのお皿に分けて並べる。ベーコン巻きなどの串ものは大皿に盛り好きなだけ取ってもらうことにした。あとはローストビーフ丼も四人分に分ける。
「ウィンティーヌはお酒はいけるほう?」
「酔ったことはないですわね」
「それじゃあとりあえずビールにしておくね。シルフィーナは今回は酎ハイを用意したからそれを試してみて」
用意した酎ハイの元を炭酸ジュースで割ってアルコールを薄める。これならシルフィーナでも飲んで酔っ払うことはないと思う。
「おまたせ」
「お肉がいっぱいね」
「おやさいもありますわ~」
「もしかしてシルフィーナさんはいつもこういうのを食べていますの?」
「まあ大体は」
ウィンティーヌは驚いているけど何に驚いているのかわからない。肉肉しいメニューに驚いたのか、それとも妖精の体に入りそうにない量になのか。
「それではいただきます」
「いただきます」
「いただきますわ~」
「いただきます?」
ウィンティーヌも周りに合わせていただきますをしている。
「これが人の食べるものなのですね。それにこのビールというものは、喉越しがよろしいですわね」
ウィンティーヌはビールが気にいったようだ。ただ酔ったことがないということなので、どうせ酔わないならウィスキーとか焼酎を薄めたものでいいかもしれない。





