第30話 知らないうちに無職ではなくなっていた疑惑
ついにこの日がやってきた。事前に日にちと人数が区切られているので待ち時間はそれほどでもないと聞いている。とはいえ面倒事は速く済ませるに限ると思い、八時開始のところを七時半に到着するように向かった。
はい、既に人がいっぱいでした。私が住んでいるところは田舎なのでお年寄りの比率が高い。それに加えて若い人は会社勤めだろうからここには来ない。つまり若年健診で診察を受けに来る若い人というのは限られているわけだ。
場違い感が半端ない。特に年齢よりも若く見られがちな私は特にそう感じてしまう。とはいえここまで来たので最後尾に並ぶ。
時間が来たところで入口が開き順番に入っていく。事前に書いていた診察用紙をチェックしてもらって暫く待つ。列が進んでいき最初に血圧。診察用紙と私を何度か見比べているのは、年齢の割には見た目が中高生に見えるからだろうなーと。
血圧の後は身長と体重。入院していた時に測っていたのと比べると体重が少し減っているかな? 自転車旅の効果かもしれない。残念ながら身長は一ミリも増えていなかった。まあ成長期は過ぎているので仕方がない。
続いて採血と心電図。そこまで終わればもう少しで終わる。残っているのはX線検査になる。そう、あれだ。バリウムを飲むあれが残っている。これがあるから今日は朝食を食べていない。
白い液体を我慢して飲み、検査車両の中に入る。変な回転する装置でくるくる回されて指示に従い横を向いたりして終了。結果は数日後に郵送で送られてくるらしい。
「はぁ、やっと終わったー」
シルフィーナとグランディーネは家で留守番してもらっている。こんなのについてきても暇なだけだからね。もうすぐお昼前なので近くのスーパーで惣菜かお弁当でも買って帰ろうかな。家に帰ってから作るのは面倒くさい。
健康診断も終わったことだし次のキャンプからはカロリーを気にしなくて良さそうだ。はいそこ駄目人間の発想とか言わないで、自分でもわかっているから。だけど最近はお野菜系と鶏肉で我慢していたので、そろそろガッツリお肉を食べたい。
(グランディーネがたくさん飲むから最近ビールの消費が激しい。焼酎にしたら少しはお酒代が浮くかな?)
そういうわけで、ビールの他に焼酎を買っておく。なんならアルコール度数の高いウィスキーにしたら安上がりになったりしないかな? 逆にシルフィーナはお酒にあまり強くない。ビールを少し飲んだだけでも酔っ払う。
ジュースにしてもいいのだけど、意外とジュースも積もり積もればいい値段になるよね。ビールほどじゃないけど。なんならシルフィーナにはチューハイの元的なものをジュースで割ったのがいいかもしれない。
ものは試しと考えて買ってみることにする。お酒はこんなものでいいかな? 気がつけば買い物カゴいっぱいになっている。買い物カートを押しながらもう一つ買い物カゴをカートに乗せる。
お次は酒のつまみを買わないと。定番のスルメにチーズ鱈、通称チータラ。これ好きなんだよね。あとはビーフジャーキーとサラミも入れておく。
他に買い残しはないかな? あっ、お昼ご飯。あとキャンプメシ用の食材を忘れていた。レジに並ぶ前に気がついてよかった。
野菜コーナーとお肉のコーナーをまわり、適当にお弁当を三つカゴに入れてレジに向かう。流石にもう買い忘れはないはず。
あ、はい、お酒は二十歳からですね、知ってますよ。はい免許証。いえいえ、毎度のことなので慣れたものですよ。気にしないでくださいな。いつものことなのでいつでも出せるように免許証は用意している。
そんなやり取りを終えて金額の確認。はは、すごいことになっているけど必要経費だと思って支払う。実際は無職なので経費にできないけど。
あれ? そういえばシルフィーナがヨウツーブの収益化だどうとか言っていた気が……。もしかして収益化していたら私の口座に入るのかな? そうなると収入になる? え? ど、どうしたらいいのかな。
考え始めると気になってくる。収益化で入る金額がどれくらいかわからないけど、もしかして開業届的なものも出さないといけないんじゃ……。考え始めると色々と面倒くさいことになっている気がしてくる。
とりあえず家に戻ってシルフィーナにどうなっているのか確認しないといけない。安全運転に努めながらも急いで家に帰り着く。買った荷物を複数回に分けて家に持ち込み、冷蔵庫や冷凍庫に入れていく。今更焦っても仕方がないのでやらないといけないことを先に済ませる。
「シルフィーナ少し聞きたいことがあるのだけど」
電子レンジで買ってきたお弁当を温めながら、スマホをポチポチしているシルフィーナに声をかける。
「なーに?」
「シルフィーナは開業届とか確定申告とか知って、るわけないよね」
私は異世界育ちの妖精に何を聞いているのだろうか。流石のシルフィーナでも日本のややこしい税金のアレコレを知っているわけない。
「開業届? まだ収益化をしていないからやっていないよ」
「あ、そうなんだ」
「うん、それにね収益化するためには開業届を出さないといけないでしょ」
「そうなの?」
「そうみたいよ。だけどね開業してしまうと失業保険がもらえないみたい」
「それは困るかも」
まだ失業保険はもらい始めて一ヶ月ほどしか経っていない。もらえるならギリギリまでもらいたいのが本音。もらえなくなるのはもったいない。それにしても、私よりもシルフィーナのほうが詳しいってどういうことかな。
「わかったわ。まだ収益化をしていないからその辺りは気にしなくていいのね」
「そうなるね」
とりあえずは、まだ収益化をしていないので無事に私は無職と名乗れるようだ。
「はぁ。安心したところでお昼を食べましょうか」
「わたくしはこちらのお弁当をいただきますわ~」
「あっ、それわたしが狙っていたのに!」
私とシルフィーナが話している間にグランディーネがチキン南蛮弁当を確保した。残っているのはからあげ弁当とのり弁の二つ。
「好きな方選んでいいよ」
「えーっと、それじゃあ海苔弁をもらうよ」
「オーケー」
三人分のお茶を入れてから揚げ弁当の蓋を開ける。あそこの店のお弁当は比較的安くておいしい。





