第3話 創世神アレクシアとのお話
「結論から言うとオトハには自力で行ってもらうことになるわ。私は直接地上のものに干渉が出来ないのよ」
「まあ、神様あるあるですね」
「その言い方はどうかと思うけど、有り体に言えばそうね」
「ちなみに、陸地は繋がっていますよね?」
「残念ながら繋がっていないのよね」
「えっと、それって無理じゃないですか?」
この大陸がどのくらい大きいのかはわからない上に、大陸の端に行ってから海を超えて今いる大陸の裏側へ行くなんて無茶過ぎる。
「そうね。先程は自力で向かってもらうと言ったけど、今の状況を鑑みて私の権限であなたの自由行動を認めます。だからオトハは好きに過ごしてもらっても構わないわ。なんならこの世界のことは忘れてあちらの世界に戻ってもらってもいいわよ」
「転生者が複数いるので私一人くらいいなくても問題ないってことですか」
「残念ではあるけど、状況的に無理強いできるものでもないからね。そもそも他の転生者には納得をしてもらってこの世界に転生してもらったのよ。そう考えるとオトハにはちゃんと了承をもらっていないというのもあるわ」
この世界のことを忘れて元の世界で生きていく。それってまた仕事を探しをしないといけないということになる。
「いくつか聞きたいことがあるのだけどいいですか?」
「ええ、構わないわよ」
「私のあちらとこちらに行き来できるこの力はなくなったりはしませんか?」
「既にあなたの魂に刻まれている力だから無くならないし、無理に引き剥がすことも出来ないわ」
「それじゃあ、私がこの世界とあちらの世界を行き来してもいいってことでしょうか?」
「構わないわ。この大陸で過ごしてもらってもいいし、最初に言ったようにこの大陸の裏側を目指してもらってもいいわ」
どうやら本当に好きにしていいようだ。私がこの世界に来たのはバカンスのためだったりする。地球でないことはわかっている。危険はあるかもしれないけど未知の世界というものに魅力を感じた。
「他になにか聞きたいことはあるかしら?」
「そうですね……。そもそもこの大陸ってどういう目的で作られたものか聞いても? それにもう一つの大陸はどういったものでこの大陸とはどう違うのとかですかね?」
「あちらの大陸とこちらの大陸の違いは、住んでいる人種が違うわね。向こうの大陸は人類種と呼ばれる者たちが暮らしているわ。オトハのわかりやすいように言うと、人間とそれ以外にもエルフやドワーフに獣人など他にも様々な種族が暮らしているわ」
「まさに異世界ファンタジーって感じなのね。それでこちらの大陸は?」
「今オトハがいる大陸は、精霊や妖精が暮らしているわ」
こちらもこちらでファンタジーをしている。
「大陸ごとに種族を分けているのにはなにか理由があるの?」
「元々この大陸は何もなかったし誰もいなかったのよ。だけど精霊や妖精というものは空も海も関係ない存在なの。そういった精霊や妖精があちらの大陸からこの大陸へ渡ってきてそのまま住み着いたというだけよ」
「そうなんだ」
「あとはあちらの大陸よりも凶悪な魔物もいるわ」
「やっぱり魔物っているのね」
つまりはこの世界で行動するには魔物をどうにかする手段が必要ってことになる。それからどうもわざとなのかはわからないけど、人類種のいないこの大陸を作った意図は教える気がないように感じた。
「他に聞きたいことはあるかしら?」
「すぐには思いつかないですね」
「そう? それならもういいかしらね」
なにか聞き忘れたことはないだろうか。
「あっ、そうでした。最初にこの白い空間に来た時にうまく聞き取れなかった事があって気になっていたことがあるのですけど」
「なにのことかしら?」
「確か倍がどうとかって聞いた気がするのですけど」
「倍? ああ、それは私がオトハに授けた能力のことですね」
「能力? このあちらとこちらを行き来する力じゃなくて?」
「ええそうよ。いわゆる異世界転生特典というやつね。他の転生者にもそれぞれに授けているわ」
「それで、私の倍って能力ってどういうものなの?」
「オトハに授けた能力は倍化よ」
「倍化ですか?」
「制限はあるけど、殆どのものを倍化にできるわ」
倍化? 物を増やせるってことだろうか? それとも身体能力を倍にできるということだろうか? というか、私は生きているので転生ではないのだけど、能力をもらって良かったのだろうか? と聞いた所、既に与えられた能力は取り出せないので問題ないらしい。
「能力に関してはこれ以上教えないことにしているわ。それはオトハだけではなく他の転生者の能力に関してもね」
「わかりました。私もこういう検証って好きなので調べてみます」
この倍化という能力。そしてあちらとこちらを行き来できる能力。どちらも調べて検証をするのは楽しそうだ。
「他に聞きたいことがなければ戻ってもらいますけど」
「もし他に聞きたいことができたら教えてもらえますか?」
「いえ、もうここにあなたを呼ぶことは出来ないわ。そうねあの子をオトハに付けるわ」
「あの子?」
「オトハを見つけた妖精の子よ。あの子は好奇心旺盛だからきっとあなたと気が合うはずよ」
「妖精と冒険っていうのも面白そうですね」
「オトハ、あなたがどうするかは好きに決めなさい。この世界の創世神としてあなたを見守っているわ」
アレクシア様のその言葉を最後に私の意識は白い空間から現実へと戻った。サワサワと風で揺れる草の音が聞こえる。
「戻ってきたようね」
「あなたは」
私の目の前にホバリングをすることも背中の羽を動かすこともなく妖精が浮いていた。
「わたしはシルフィーナよ。アレクシア様から話は聞いているわ。面白そうだからあなたについて行ってあげる」
そう言って妖精はニヒヒと楽しそうに笑いかけてきた。





