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未開異世界ソロキャンプ ~旅とキャンプとのんびりスローライフ~  作者: 三毛猫みゃー


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第28話 カエルの歌が聞こえてくるよ

 トンネルを抜けるとそこは雪国だった。というわけではないけど、今渡しの目の前に広がっているのは銀世界だった。それもある地点から線を引いたように、雪が積もっている場所との境界が別れている。


「寒い」


 めちゃくちゃ寒い。服装は草原を走るので薄手のパーカーとトレッキングパンツで靴はトレッキングシューズを履いている。それでもかなり寒いのでこの先に進むには冬の装いが必要になりそうだ。


 ただ雪と氷の地、言いにくいので今後は北の大地と呼ぼうと思うけど、そこに入らなくても川は渡れそうなのが救いかもしれない。このまま北の大地を進むくらいなら、戻ることになろうとも南へ下っていったほうがマシかも知れない。


「それにしてもすごい景色だね」

「そういえばかき氷というのがあるってネットで見たよ」

「寒いのは苦手ですわ~」

「かき氷ね。ここの雪っておいしいのかな?」

「雪に味があるの?」

「どうだろ、たまに美味しい氷がどうとかって聞いたりするけど」


 試しに境界に近寄り雪を取って見る。さらさらの粉雪のようでふかふかしていて柔らかい。味は……まあしないよね。これにシロップをかけたら美味しいかもしれない。


「次に来たときにでもかき氷試してみよっか」

「わーい」


 そんなシルフィーナをよそにグランディーネは寒そうにしている。このままここにとどまっていても仕方がないので、川下に向かってマウンテンバイクで走る。


 川を渡れる場所は北の境界から一時間ほど川下になるのだけど、どうして境界のあたりまで来たのか。理由は大きな雪山が目に入ったからだ。そしてシルフィーナがそこに北の大地との境界があると言ったのを聞いて、それならちょいと見てみようと思ったわけですよ。


 寒かったけど、雪山はすごくデカかった。あれは登れないんじゃないかな? 登る必要があるのかと言われると全く無いのだけど。私はそこに山があるから系の人間じゃあありませんので。


「ここでいいのよね?」

「オーケーよ」

「はい〜。まかせてくださいですわ~」


 一番川幅が小さいところまでやってきた。水の流れは速くないけど、深さまではわからない。


「それでどうするのかな?」

「こうしますわ~」


 グランディーネがそういうとゴゴゴゴと音を鳴らしながら大地が持ち上がり、川の向こう岸まで橋がかかった。


「長くはもちませんわ~」


 私は急いでマウンテンバイクを漕いで土の橋を渡る。少し湿っていて走りにくい。なんとか渡りきったところで土の橋は崩れて川の中に沈んでいった。


「こういう事ができるならもっち下流でもよかったんじゃないかな?」

「いまのでぎりぎりですわ~」


 グランディーネが心底疲れたといった感じでそういうと、リアキャリアに乗せているバックパックの上に倒れ伏した。


「そうなんだ、グランディーネありがとうね」

「晩御飯の時にビールを所望しますわ~」

「オーケー。一本まるまる飲んでいいわよ」

「それは贅沢ですわ~」


 少し元気が戻ったようでグランディーナは再び空中に浮かんだ。


「やっと川を渡れたね。あと海までくれくらいかかるのかな」

「今の進み具合なら五日ほど走ればたどり着けるかな? 何もなければだけど」


 気がつけば既に日本は夏に入ろうとしている。若年健診も来週に控えている。健康診断で何も引っかからなければいいのだけど。まあ今年は入院したおかげで大病を患っているということはないと思う。


 体重に関してもほぼ毎日運動しているようなものなので大丈夫なはず。それ以外は……考えないようにしておこう。そろそろアルコールを控えるべきか。いや、数日アルコールを抜いたからといってなにかが変わることはない。


「川もしばらく見納めだろうから今日はここまでするかな」

「そうね。次に来たときはかき氷を食べたいから、北に近いところがいいわね」

「それがあったね。シロップを買いに行かないと」

「シロップ?」

「かき氷にかけるのよ」


 シロップ以外にも練乳ミルクと小豆も用意しておこうかな。


「冷たいのはにがてですわ~」

「確かかき氷にお酒をかけるというのもあった気がするけど」

「それなら食べてみたいですわ~」

「帰ったらレシピを確認してみるよ」

「たのしみにしておきますわ~」


 いつも通りテントを張っていると、どこからともなくゲコゲコとかゲロゲロという声が聞こえてきた。


「えっと、魔物が近くにいる?」

「あそこにいるよ」


 シルフィーナの指差す方向を見ると、グランディーナが作り渡ったあとに崩れた橋の残骸の上に見た目がカエルっぽい何かがいるのが見えた。


「あれがゲロゲロ?」

「あれはゲコゲコだよ。あっちがゲロゲロね」


 シルフィーナがまた別の場所を指さした。そちらを見るとゲロゲロと似たようなシルエットのカエルっぽい何かがいた。どこが違うのかというとゲコゲコは赤い色の体と額に一本の角のようなものがあって、もう一方のゲロゲロは青い色の体と額には二本の角がある。


 色違いで角の数が違うだけで、それ以外はカエルそのものだった。大きさを除いて……。この世界の生き物はどれもでかいと駄目なのだろうか? モーモーもブヒブヒもそうだったけど、ゲコゲコとゲロゲロも大きい。


 距離が離れているので正確な大きさまではわからないけど。流石にモーモーほどの大きさはないけど、私なら一飲みされるくらいの大きさをしている。そんな二匹だけど、なぜか後ろ足で立ち上がりお互いを睨んでいるように見える。


「このままここにいても大丈夫? こっちに来たりしない?」

「大丈夫よ。こっちに来そうになったらわたしとグランディーネでぶっとばすから」

「その時はお願いね。ダメそうならテントに走って逃げるから」

「わかりましたわ~」


 鉄砲水などが怖かったので水辺からはそこそこ離れたところにいるので、ゲロゲロとゲコゲコがこっちに来たとしても逃げるくらいはできると思う。念の為テントの側まで移動して二匹を見守る。


 ゲコゲコゲロゲロと何か会話しているように聞こえる。いえ、実際に会話をしている? なぜか私には『ゲコザブロウよ、ついに決着の時が来たでござるか』『今日こそ貴様を倒して見せようぞゲロザエモンよ』と聞こえたきがした。


「ねえシルフィーナ。私の耳がおかしくなったのかな? なんかあのゲコゲコとゲロゲロの言葉がわかる気がするんだけど」

「そりゃあわかるでしょ。だってオトハにはわたしが祝福をしているのだから」

「え? あれって他の種族の言葉がわかるってやつじゃ? 副次的に英語とかもわかるようになってたけど、魔物の言葉もわかっちゃうの?」

「そうよ。言ってなかったかな?」

「聞いてないよ」


 ということらしい。今もゲコゲコゲロゲロという鳴き声と重なるように、二匹の会話が翻訳されて聞こえて来る。侍っぽい口調でカエルが言葉の応酬を繰り広げている。


 暫くの間ゲコゲコゲロゲロと大合唱をしていたが、二匹は同時に『『いざ』』と言って飛び上がった。そしてお互いの体がぶつかり合い、そのまま抱きついたまま川へ落た。


 そんな二匹はゲコゲコゲロゲロと言いながら絡み合い、そのまま川下へと流れていった。私はいったい何を見せられているのだろうか?

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