第25話 もうちょっとなんとかならなかったのかな?
「それにしてもモーモーもあれだけど。この巨大イノシシもすごいね」
「モーモーとブヒブヒはいつも戦っているよ」
「ブヒブヒって、まあいいんだけど」
映像は上空から撮られているようで全体がよく見渡せる。モーモーもブヒブヒも大きさは同じくらいで、群れの数もほぼ同数のようだ。両陣営ともただ単に正面からぶつかり合っているわけではなく、時には陣形を組み替えているように見える。
「私は何を見せられているのだろうか……」
動画のコメントを見てみると「こういうゲームやりたい」とか「これってツブヤイッターのやつだよな」とか「すげー迫力」など書かれていた。あたり前だけど誰もこれが現実のことだとは思っていないようだ。
「ちょっと思ったんだけど、こういうことってアレクシア様的にはどうなの?」
そもそも異世界とこちらの世界を行き来できる能力がつかえるのは多分私だけなので、仮に広まったとしても問題ないとも思える。だけど私の能力を使えばこちらの世界の人間を異世界に連れて行くことも出来てしまう。
それも含めてアレクシア様はどう思うのか気になった。シルフィーナには本当に身バレになりそうなことだけはやめてもらいたい。なんならすぐにでもツブヤイッタークロスやヨウツーブをやめてもらったほうが安全ではある。
まあ仮に私やシルフィーナたちの存在がバレた場合、その時はあちらの世界へ移住するのも悪くないかもしれない。問題は食料だろうか。どうやらシルフィーナとグランディーネの二人から祝福をもらっている私は、魔物の肉を食べても問題ないらしい。だからといって魔物を倒せるかというと無理だと思う。
モーモーやブヒブヒなんて接敵しただけで死ぬんじゃないかな? 仮に倒せる魔物がいたとしても生き物の解体なんかしたことは無い。そう考えると異世界生活はままならないという事がよく分かる。
だけど、本当に異世界に移住しなければいけなくなったときのことも考えておこうと思う。初めて異世界に降り立ったあの森の近くに拠点を構えてみようかな。スマホで軽く調べてみたところ、DIYで小屋を作れるなんてものもあった。
大型の頑丈なテントを買ってもいいけど、小屋暮らしもしくはログハウスみたいなものにも憧れる。ただログハウスを作るにはかなりお金がかかるようだった。逆にお金さえかければ作れるということでもある。まあ重機なんか使ったことがない私が一人で作れるかというと無理だろうけど。
家を建てて、その周りで畑を耕しスローライフというのも良さそうだ。倉庫の入口を使って異世界渡りをすることで大量の荷物をあちらの世界に持っていくこともできる。なんなら大型のトラクターをレンタルするのもいいかもしれない。中古のものを買えば畑を作ることも比較的簡単にできるかな? まあ中古でも数百万はするようだけど。
すぐにできることでもないので、今やっている旅を終えてから改めて考えてみよう。あの森の近く以外にもいい場所があるかもしれないからね。特に今目指している海の近くなら魚をとることができるかもしれない。
◆
地図作り。一応出来てはいる。といっても進んでいる方角と大体の距離しかわかっていない。それに目印となりそうなものがないので書きようがないともいう。
大きな紙に朝の出発地点と進んだ距離、お昼を食べた場所と夕方キャンプした場所に印をつける。あとはシルフィーナとグランディーネの意見を聞いてどこそこにこういう魔物がいたというのも書いている。
私自身は魔物を見ていないので、どういった姿なのかはわからない。だけど二人のネーミングセンスによるものか、本当にそういう名前なのかはわからないけど大体の姿は想像できる。
だってね、モーモーが牛でブヒブヒがイノシシな時点でわかっていただけると思う。とりあえず教えてもらった名前を網羅してみましょうか。
ニャオニャオ、ワオワオ、ウオーウオー、ギャオギャオ、グルグル、コケコケ、ガオガオ、チューチュ、メーメー、グワグワ、ウホウホ、キーキー、ヒヒーン、ピョンピョン、ゲコゲコ、てふてふ……などなど。ん? 変なのが混ざっている気がするが、まあいいか。
あなたたち鳴き声だけで名前決めているでしょとか、実際には違う呼び名があるでしょうとか言いたい。だけどよくよく考えればその名前を作りそうな人類種が、この大陸にはいないわけで仕方がないのかなとも思う。
だだっ広い草原だけど、多くの魔物が生息していることに驚いた。ただ名前で分かる通り一部を除いて地球にいる動物と変わりがないように思える。個人的にはニャオニャオやワオワオ辺りは見てみたい気がする。
ほら、ラノベの旅ものにつきもののもふもふ枠が今の私にはいない。シルフィーナもグランディーネもかわいいけど、もふもふではない。そんな風なことを考えてしまう今の私には癒やしが必要なのかもしれない。
「魔物を近寄らないようにしてるっていうけどどうやってるの?」
「んー、普通にお願いしてるよ」
「言葉が通じるってこと?」
「まあそうね。聞いてくれるかはその時々だけど。それにわたしの祝福を受けているオトハも会話できるはずよ」
「え、そうなの? 今の私って動物と会話できちゃうの?」
「動物はむりかな。魔核が抜かれた魔物とは会話できないから、魔核を持っている魔物だけだと思うよ」
一瞬、地球の動物と会話ができるのかと期待したけど、どうやら無理のようだ。たまに家の庭を通り抜けていくご近所の猫とは会話できていないからわかっていたけど。改めて言われると残念に思える。
「それじゃあ今度おとなしくてもふもふしている魔物を紹介してもらえない?」
「いいけど何をするの?」
「私には癒しが必要だと思うのよ」
「本音は?」
「もふもふしたい」
「まあ、うん、わかったよ。よさそうなのが近くにいたら話をしてみるよ」
近々私の仲間にもふもふが加わることになりそうです。





