第15話 二回目の異世界キャンプ
(思っていたよりも悪くはなっていないみたい)
私は今、先日引っ張り出してきたアーチェリー道具一式を点検している。本来ならちゃんとした所でメンテナンスをしてもらうべきなのだろう。そもそも道具一式が十年以上前のものなので新しい物を買ったほうがいいのかもしれない。
とはいえ使えるものは使わないともったいない。それに魔法があるのでメインとして使う機会があるのかも問題だったりする。威力としても私が使う矢を飛ばす系統の魔法と大差ないと思う。持ち歩こうと思ったのは念の為程度でしかない。
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「ということで、異世界キャンプ二回目をしようと思います」
「異世界キャンプ? キャンプってあのアニメで見たようなもの?」
「そうそう、あのアニメは何人もが一緒にやっていたけど、私がやるのはいわゆるソロキャンプってやつよ。まあシルフィーナと一緒だからソロといわれると微妙だけど」
「そう言えば、オトハと出会ったときもなにかしていたわね。どうしてキャンプをやろうと思ったの?」
「いやね、アニメをみたらわかると思うけど、この世界にはキャンプ場というのがあってね」
「確かそれぞれの所にルールがあって、色々と道具を貸してくれるのよね」
「そうそう。だけどねキャンプ場に行くのって結構手間なのよね。特にテントとか道具を一緒に持っていかないといけないでしょ? それを考えた時にふと異世界に行けることを思い出したのよ」
最初に異世界へ行ったときは夢かと思った。何度か試している内にあの草原でキャンプをするのもいいのではと思った。見渡す限りの草原、遠くには森があるのはわかったけど結構な距離がある。
もし危険な生物が迫ってきたとしても、距離があればテントに逃げ込んでこちらの世界に戻ってこられる。何と言っても荷物の持ち運びが不要というのが良かった。
「もともとキャンプには興味があったのよ。だけど仕事の関係でなかなかできなかったの。そうこうしている内にキャンプブームなんてものが始まってキャンプ場も人がいっぱいになちゃって更に行きにくくなったのよ」
「なんだか面白そうね。わたしもアニメのように焚き火をして美味しいものを食べて、のんびり過ごすのはいいとおもう」
「でしょ?」
クーラーボックスに食材や飲み物をいれる。念の為バックパックには着替えなどもいれている。使う予定はないけど寝袋も持っていく。これらの道具類はもともとは異世界で使う用途で買ったものではなく、こちらの世界でキャンプをするために揃えたものだ。
新しく買ったものといえば、庭に建てっぱなしのワンタッチテントくらいかな。実はもう一つ大きなテントも所持しているのだけど、一度も使わずにしまってある。
「それじゃあ異世界へしゅっぱーつ」
「おー」
荷物をテントの中に入れ終わると、私とシルフィーナはテントの中に入り入り口を閉める。そして異世界へ行きたいとイメージしながら入口を開ける。外に出ると見覚えのある森が近くにある魔法を練習したところだった。
テントの中から荷物を引っ張り出してキャンプの準備を始める。ローチェアとローテーブルに焚き火台を取り出す。焚き火台の下は習得したばかりの土の魔法を使って草を排除して平らにしている。
ほんと魔法ってイメージ次第なようで汎用性がすごくある。ただ一からこうこうこうなって、こうなるにはこうしてとイメージしないといけないので、ちゃんとそれらをまとめたイメージのショートカットを作っておかないと素早く使えないという欠点はある。
「シルフィーナ、この辺りに危険な魔物とかいないよね?」
「だいじょうぶかな」
「森の中に入っても大丈夫?」
「この辺りの森なら弱い魔物しかいないから大丈夫よ」
森の中に少し興味があったのでさっそく森の近くまで歩いていく。念のために家から持ってきたナタを腰から下げておく。攻撃用ではなくて邪魔な枝を払うのに使う用途として持ってきた。
森にはあたり前だけど道らしい道はない。ただ意外と木と木の間隔は空いているのと下草も伸びていないので歩くには問題なさそうだ。光が適度に差し込んでいて意外と明るい。イメージとしては富士の樹海で有名な青木ヶ原や屋久島の森林を思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれない。
「この森ってどれくらいの広さがあるのかわかる?」
「んーかなり広いわよ。この森は海の近くまで広がっているから飛んでいってもすっごく日数がかかるよ」
「そうなんだ。ちなみに海を目指すならどっちの方向へいったほうが安全とかある?」
「そうね。ここからなら東へ行くのがいいかな。ずっと草原が続いているから移動しやすい。だけど海まで行こうと思えばこの森を抜けるよりも遠いよ」
森はここより西にずっと広がっているとのことだった。そして東にはここと同じような草原がずっと続いていて、海までの距離は森を進むよりも長いらしい。
「ちなみに北と南には何があるのかな?」
「北は暫く行くと溶けることのない雪と氷の地域が広がっているわ」
北に行けば雪国ということは、やはりこの大陸は日本と同じような位置関係なのかもしれない。ただし陸地の大きさは比べようもないみたいだけど。
「南には絶えず噴火を続ける火山があるよ。火山灰が雲みたいになっていてずっと薄暗い場所よ」
シルフィーナの話を聞くと、なんだかゲームのような世界に思えてくる。地域地域で火や雪のフィールドがあるのなんてそう感じさせられる。そんな話をシルフィーナとしながら森の浅い部分を散歩する。
森に入るとまるで森林浴をしているようで気持ちがいい。そこかしこで鳥の鳴き声が聞こえてくる。苔むしている岩があるので湿気が多いのだろう。もしかすると近くに小川があったりするのかもしれないと思い、シルフィーナに聞いてみると案内を申し出てくれた。





