第10話 武器を考える
食器を洗いテレビのある部屋に戻るとシルフィーナは眠っていた。
「今日はもうお風呂はいいかな」
シャワーも浴びたし今から沸かすのも面倒だ。とりあえず洗濯機を回してさっさと寝てしまおうかな。シルフィーナに協力してもらった魔力を流す試みで疲れているというのもある。だけど目が冴えていてまだ眠れそうにない。
「ま、たまにはいいかな」
冷蔵庫からビールをもう一缶取り出してそのまま口をつける。
「はぁーおいしい」
なにかつまみになるものはなかったかな。冷蔵庫を開けてみたけどそれっぽいものはなかった。
「あっそうだ」
確かバックパックになにか入っていたはずだ。昨日持ち帰ってきて置いたままだったバックパックの中身を取り出していく。食器などももう一度洗うために取り出して台所に運ぶ。
「あったあった」
袋に入ったおつまみが多数出てきた。とりあえず片付けは後回しにしてスルメの袋を開ける。スルメとビールなんてベストマッチなのだろうか。引っ越しなどで結構ばたばたしていてゆっくりするために異世界でキャンプをしてみたのだけど、アレクシア様に呼び出されあまりゆっくりできなかった。
地球ではない場所でのキャンプ。近くに危険な動物などがいないことを何度か確認をしてから実施した。シルフィーナがいうにはあの草原にはモウモウという牛に似た魔物が生息しているとのことだった。
そのモウモウが草原をぐるぐる回って草を食べているので、草の丈が足首くらいまでしかなかった理由のようだ。魔物がいるということで、もし敵性の魔物に遭遇したときに自衛できる手段があったほうがいいのだろうか。
この家にある武器になりそうな物を思い浮かべる。包丁、枝切りバサミ、クワ、シャベル、草刈り機。この中で一番威力がありそうなのは草刈り機だけど、攻撃という意味では取り回しが難しい。
他になにかないだろうか。鉄パイプに包丁をくくりつけて槍みたいにするとかどうだろうか。いやそもそも接近して戦うなんて私にできるかどうか。そうなると遠距離攻撃ということになる。だとすると私にはあれしかない。
「どこになおしたかな?」
酔いが回ってきたからか、学生時代に使っていた道具をどこにしまっていたか思い出せない。気軽に捨てることができるものでもないので、どこかの押入れの中か庭にある蔵の中か。有力なのは蔵だと思う。
「ふぁー。眠くなってきた。もう明日でいいか」
ビールを二缶飲んだことで酔いが回ったのか眠たくなってきた。残ったスルメは封をしておく。台所で空き缶を処分して洗い場に置いたままの食器を洗う。もう一度シルフィーナの様子を確認するとさっきと変わらずに寝ている。
「シルフィーナおやすみ」
部屋の電気を消してから洗面所で歯を磨き顔を洗って、洗濯機を回していなかったことに気がついてスイッチを押した。干すのは明日でいい。
「よし寝よう」
電気ガスをチェックして寝室へ。押入れからお布団を引っ張り出して敷いて潜り込む。今日はいつも以上にぐっすり眠れそうだ。
◆
本日の朝食は、あんバタートーストにした。そろそろ食料の買い出しに行かないと食材が無くなりそうになっていた。
あんバタートーストの作り方は簡単。食パンを軽くチンとしたあとつぶあんとバターをのせて、もう一度チンと温めるだけ。お手軽で美味しいのでたまに作っている。そして相変わらず青野菜がない。今日は探しものが終わった後に買い物に行くことに決めた。
「さてとシルフィーナ隊員、ある捜し物に協力してほしい」
「捜し物?」
「これくらいの大きさの黒いバッグなんだけど、家の中か庭にある蔵のどこかにしまっていると思うんだよね」
「それを探せばいいのね。それでそれって何が入っているの?」
「弓よ。アーチェリー競技用のね」
私は高校でアーチェリー部に所属していた。その時に使っていたものがどこかにしまってあるはずなのだけど、もう十年以上前のことなのでどこにしまってあるのかわからない。
部活を引退してからは使う機会がなかったのでどうなっているのかもわからない。見つけた後に状態を確認してどうするか決めるつもりだ。まだ使えるならわかる限りメンテナンスをして使うし、ダメそうならいっそのこと新しいものを購入してもいいと思っている。
そもそも高校時代に使っていたものは本格的な競技用のものではなくビギナー用だったので、いっそのこと競技用のものを買ってもいいかもしれない。
私が使っていたものはリカーブボウというものだったけど、買い替えるならコンパウンドボウにしてもいいかもしれない。体力と相談して考えてみるつもりではある。さすがに高校生の頃よりも体力も筋力も落ちているだろうから。
「まずは家の中から探すわね」
「おー」
とはいえ押入れの数はそれほどでもない。まずは私が使っている寝室の押入れ。上段には布団をいれているので下段を見てみる。下段にはダンボールがあったので引っ張り出して開けてみる。中には教科書が入っていた。懐かしい。
「はっ! こんな事をしている場合じゃない」
懐かしいと思いながら色々引っ張り出してパラパラめくってしまっていた。急いでダンボールの中になおして押入れの中にいれる。
「オトハー、家の中にはなさそうよ」
「そ、そう? それなら庭の蔵に行ってみましょうか」
「あのおっきい建物ね。気になっていたのよね」
私はシルフィーナと連れ立って家を出て蔵へ向かう。





