オマケ:甘楽園(あまパラ)
視点:イズフィール。
ミカエル様から任務を受けた。
心配そうなリルに微笑んでみせる。
「リル、家に戻ろう?ごめん……焦った。まだ俺達には時間がある。大切にしたい……君が育てるサラカ。幼い時……俺の記憶がない程の時に、任務に向かうのだろう。天使には、卒業しないとなれないから。」
向けた視線は真っ直ぐ、未来を信じて語る。
「ええ。地上……イズフィーのおじいちゃんに、会えるかな?」
天使長のじいちゃんは地上の任務を受け、戻らない。
『任務で、お前に出逢えるのはいつになるだろう?』
じいちゃんも知っていたのかもしれない……
“開かずの記憶”を俺に語った。ミカエル様とルシフェルの過去。
とにかく弓矢の情報が足りない。
ミカエル様は、俺に任務を与えた……期間をも……
その意味は。
「リル……地上より、この天界で……今は時間を大切に用いよう?この学園で学ぶのは、知識じゃない……感情の伴う成長。俺……あれがしてみたいんだ。」
「ふふ。あれって?」
羽を広げ、リルに手を差し伸べる。
リルも美しいピンク色の羽を広げ、俺の手をとる。
共に飛びながら……
「ルシフェルの技術……」
少しの風で、出来ると聞いただけの技術……
「イズフィー、こんな話を聞いたことがあるわ。知識・技術・感情……三位一体。」
「俺たちに足りないのは、技術……。シフリールは、知る努力を惜しまない。好きだよ……尊敬する。」
俺の言葉にリルは頬を染め、微笑んだ。
懐かしい……幼いころの純粋な微笑。
俺だけの……
【グイッ】
つないだ手を引き寄せ、抱きしめる。
「君の笑顔は、俺だけのものだ!」
視点:シフリール。
朝の身支度を済ませ、ドアを開けた。
「おはよう?」
そこには準備万端のイズフィー。
私の反応を理解したような、疑問形で挨拶。
悔しぃ~~~~!!!!
いつも遅刻ギリギリだったのは……
「ふふ。リルとの朝の時間が、大切だったんだよ?」
満足そうな笑顔で抱き着いてくるイズフィーを押し退け、顔を逸らす。
「機嫌を直して?」
ずるいぃ~~~~
頬を膨らませ、無視し続けた。
「ね、可愛い。羽に触れても良い?キスをしても……」
「うわぁ~~ん!!ダメ!風紀問題ですぅ~~……ぅ?」
抵抗しながら、イズフィーの身なりに目が留まる。
胸元は、きちんとボタンが止まりネクタイもピシリ。着崩しのない……
くっはあぁ~~??
「ん?何、惚れ直した?」
「……駄目……今まで以上に、イズフィーを好きになる……」
「嬉しい♪」
また懲りずに抱き着こうとするイズフィーを、更に押し退ける。
「私もだけど、違うくて……その……」
他の候補生が群がったら、少ない時間は……
更に奪われるのではないかと不安になる。
「ふふ……くすす。シフリール……俺のコを産むのは君だよ?嫉妬なの?……かな。へへっ。嬉し過ぎるよ。」
「はっ!!遅刻する!」
私は、イズフィーの手を取って羽を広げた。
イズフィーも羽を広げる。
微かに触れた羽は、熱を伝え……ドキドキした。
身体が熱い……試練の時とは違う熱……
「はぁ~。もっとイチャイチャしたい……」
小さな呟きが、更に私を苦しくさせる。
必死で、誤魔化すように羽を動かした。
羽は小さなころと違い、スピードを調節できる。
動かす回数より、スピードは遅くて……
伝わるかな?
心は急かすようにドキドキしていて……
共にいたい時間は、出来るだけ多くを望む。
「……シフリール……愛しいね。くすす……我慢できなくなるよ?」
優位に立ったようなセリフが、心地よく感じるなんて……
「ふ、風紀を乱すのはダメだからね?ミカエル様に怒られちゃうんだから!!」
可愛げのない言葉……
私は忘れていた。試練で、色々な事を……
イズフィーの人気は、姿や羽ではなかったこと……
取り巻く状況は二人の時間を赦さない。
もっと、時間を味わいたい……
削られるのは、時間なの?
心も比例する……嫉妬や自分の存在意義に……
また闇を落とす。
ミカエル様は、それも……知っていた。
『あなたの羽は、存在意義……手に入れたでしょうか?』
学園に到着。
すると、そこにいたすべての候補生が群がって来て質問攻めだった。
「イズフィール!追放ではなく、任務って?凄いじゃないか!!」
「信じていたよ!」
そう……イズフィールには、追放のうわさがあった。
多分この状況もミカエル様の加護。
すべての候補生への伝達……
私は遠巻きに、イズフィーを見守る。
孤独……今まで味わっていたモノ……
縮まったと思った距離は……広がる……
私の羽に注目はない。変わった変化に、周りは興味を示さない……
それでもいい。イズフィーが私を必要としてくれるなら……
対……だよね?手に入れたんだよね?
任務で、離れる時が来ても……コがいるなら、頑張れる……
コが欲しい。サラカ……私のコ。イズフィーとのコ。
幸せな時間は、どれほどある?
サラカの小さな羽……原因は……
「……ルッ!」
声に、反応して視線を移す。
「シフリール!授業中だ。珍しい……羽の大きさに、現を抜かしては卒業できないぞ。付き人として……~~」
延々と続く講師の嫌味……
天使のくせに長い。気が遠くなる……
自分の手に入れたモノは……永遠だろうか?
不変にも耐えられない想いがある。私は……
講師に注意を受け、更に罰掃除……
資料館は大きく、自分の望む本が舞い降りる。
私の疑問への答えは、沢山の本を誘導するが……私の上で戸惑うように飛び交う。
「リル……迷っているの?」
【びくっ】
低い声が、私を抱きしめた耳元で囁かれる。
気配がなかった??それとも、集中していて気が付かなかった?
「イズフィー……もう、いいの?先に帰る?」
抱きしめた手を、力を入れ押し退けようとした。
【サワッ】
「ひゃっ!?」
背中に、うずめる顔……触れる羽に、舌の感覚??
「やだ……舐めてるの?H!!やぁっ……駄目だって!」
腕は、身体を締め付ける強さはないのに、びくともしない。
イズフィーの息の熱さが、羽にかかる。
「ね、リル?君は、この時間を無駄だと思う?」
卑怯だ……そんな質問。
「無駄じゃない。欲しい……願うほどだよ?だけど、駄目……お願い。止めて……イズフィー……っ……」
自然と頬を伝う涙。
涙もろくなった感情の不安定さ。自分に嫌気がする。
「泣かないで。ごめん……意地悪な事を言った。シフリール……分かっているんだよ。でも、俺……我慢が出来ないんだ。どんなに願ったか知って……この、大きな羽に触れることを……」
大きな羽に……?
「嫌っ!!」
頭がグルグル……思考がまとまらない。
「……リル?」
「……イズフィー……追い詰めるのは、いつも……」
言ってはいけない言葉が出そうになる。
「俺だ。リル……俺の中には、君だけ。君の心に、どんな形でも俺がいれば良い……貪欲な醜さ。追い詰めた?知っている……苦しみながら、君を解放しないんだ。知りつつ、俺だけで染める。すべてが欲しい……」
イズフィーの熱が、私に伝わるかのように身体が熱い……
「イズフィー……イズフィール。私は……」
【ゴッ】
イズフィーの頭に、分厚い本が落ちた。
「……痛い。」
痛みでゆるんだ腕から、逃げる。
落ちた本を拾い、距離をとった。
「イズフィー……言葉が出ない。この想いの正体を……この本が教えてくれる。思考が私を促す……ごめんね?」
感情も落ち着かない……思考も混濁……
羽が大きくなっても、学ぶことは多く……愛情は、常に一定ではない。
永遠の中で変化し続ける。
変わることのない対象への愛は、愛情を増し加え……
増えるコは、更にコを増やす……連鎖……
未来が見えるのに、ほんの一寸先も見えないの。
苦しい……私たちの愛情は、まだ……
いつか、続きが掲載されるはず(遠い目)




