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⑧天使の楽園:シフリール編  作者: 邑 紫貴


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8/9

終章


「……ね、イズフィー?」

視線を向けると、イズフィーの視線は私の目線より下にある。

……?

首を傾げ、視線をたどるように落とした。

「ぎゃぁああぁ~~??」

胸元が肌蹴、白い肌……胸の谷間と赤い しるしが一つ。

一瞬なのに、そこまで見えた。

パニックで、訳が分からないまま両腕で隠し……両羽で覆う。

見えなくなったことに安心したのも、つかの間……両羽に何かが触れた。

【ぞくぞくぞくっ】

慌てて、両羽を定位置に戻すようにして、触れていたものを払いのけた。

見えたのは、少~し……真剣?怖い?眼の……イズフィー。

「あの、イズフィー??何を、したのかな……?」

少し、後ずさり……尋ねてみる。

【にっこり……】

ゆっくりと、微笑む口元。

眼差しは変わらず……

「ふむ。……リル?」

考える素振りで、羽を大きく広げた。

何だろう……記憶にある。何と言うか……まさか……ね?

イズフィーの羽は、赤みを帯びたオレンジ色。夕日のように染まっている。

「……なぁに??」

視線を逸らすことが出来ず、嫌な汗を感じつつ……返事をしてみる。

「……疲れただろ?ちょっと、休憩していかない?」

腰に片手を当て、片足に体重をかけて……

軽く……もう片方の手が、くいっと後ろを指さした。

……休憩……?

固まった私に、じりじり……近づいてくる。

「ふふっ。直球じゃないと、分からないかな?」

言ったと同時で、羽を羽ばたかせ私を抱えて飛んだ。

あの羽の敷き詰められた場所に、自分の身が沈む。

重みを受けて……

「ね?シフリール……任務に行くんだ。ね?……気づいているんだろ……?リル……愛している。コを作ろう?」

ぎゃぁ~~~~??やっぱり?!!?!

聞いたことがあった……大人な話……コを作る方法。

羽を重ねて……重ね……

「ぎゃぁ~~、いや……っ……触れないで。」

「どうして?触れたいと願ったのに……君は、俺じゃダメ?」

卑怯だ……駄目な訳がない。

でも、こんな学園で……外で……

「ね……シフリール?羽を俺に向けて?……はぁ……息が苦しいよ。ね?お願い……」

甘く囁き、見つめる視線に、羽が……

受け入れたいと願う。

羽が、少し開いていく。

あぁ……どうしょう?

でも……任務で離れちゃうし……


「こほんっ!!」

【ビクッ】【びっくぅ~~~!!!!】

過剰に驚いたのは、もちろん私だ……

そして、固まる二人に……清浄な風が、穏やかに包む。

温かな光の中なのに、寒く感じるのは……

どうしてでしょうぅ~~~~?!?!!??

イズフィーは羽を落として、私から離れた。

私も羽を落として、立ち上がる。

気まずく、ミカエル様の前に立つ二人……

「ふっ。時間は、ありますよ。未来を護ったのは、あなた方ではありませんか。」

ミカエル様は、穏やかに笑う。

「……っ……うっ……うぅ~~」

涙が零れ、声がつられてしまう。

こんな時に、泣くなんて……まだまだ弱い。未熟だわ……

「リル……頑張ったね。」

ふと、イズフィーの声に記憶が頭を過った。

「ね、イズフィー?あなた、サラカちゃんを……?!」

勢いで、ミカエル様の存在を無視し……いつもの調子。

イズフィーは、私の頭を撫でながら……

「ミカエル様、俺から話しても良いですか?」

「はい。私は、それを望みます。」

二人に隠された何か……

任務と関係があるのかな……それとも、彼……と関係が?

「リル……君の口に入った飴玉は、記憶にある?」

思考と感情に揺れた間……保つ力だった。

「うん。大好きな……天界花の蜜で出来た飴……もしかして、私??」

私の夢は、叶っていたんだ。

サラカちゃんに……力となっているんだ。

嬉しくて、また……涙が流れる。

「シフリール、イズフィール。過去のあなた方の夢は、未来を支え……未来へと導いた。その未来も、過去を護る。」

時間が、支え合う……お互いを必要として……

「イズフィー、その……胸に……ごにょごにょ……矢!矢は、どうやって抜いたの??資料館の記録にはなかったのに、どうして分かったの??」

胸の赤い跡……まさか……だよね??

「ん?キスしたんだよ♪そ・こ・に!!」

やっぱり、ですかぁ~~??

【かあぁあ~~~~】

ミ……ミカエル様の前で!!

て、訊いたのは私だけども!!!!

「リル、聞いて。俺の任務……あいつを追いかける。君は、会ったかな……黒い羽の……」

やっぱり……彼……なんだ。

【コクリ】

話を遮らないように、黙って頷いた。

「弓矢を盗んだのは、そいつ……そして、その時に俺にも矢を刺したんだ。」

え……?イズフィーにも……??

「ここにあるのは、君に刺さっていた矢。そして……」

ミカエル様の手には、もう一本の矢。

「これは、イズフィールの首元に刺さった矢です。」

「君の感じた冷たさを、俺も味わったんだ……」

ただ、ゆっくりと……二人を交互に見た。

「……抜き方は、イズフィーの記憶にあったんだね。」

イズフィーの首元に……ミカエル様のチュウ……ちゅう……

「シフリール。キスは、触れただけで……吸い付いたりは……」

【ボボッ】

顔が一気に熱を放出した。

は、恥ずかしいぃぃいぃ~~!!!!

うわぁ~~ん。イズフィーの所為なんだからね??

睨んだ私に、ニヤリ顔。

確かに、麗しいミカエル様が……キスって……

イズフィーの首元にって、思ったよ??想像したよ??

ちょっと、良いかも?なんて、考えたよ?

くやしぃ~~~~!!!!


「未来が過去を補うように……あなた方の手にある髪飾りが、過去を永遠へと導くでしょう。二人が、時を過ごすように……未来で、二人が時間を過ごすとき……その共通のものが均衡を保つのです。大切にしなさい……」

「「ありがとうございます。」」

ミカエル様は、羽を大きく広げた。

注がれている光の量も質も……比べものにならない祝福……

その幸福感の中……イズフィーに、私は寄り添う。

手には、あの髪飾り。

「それ、あいつの?」

「そう……大事そうに、いつも持っていた。愛しそうに触れていたわ……」

「けっ……サラカに、触れているかと思うとイライラするぜ?」

少し、すねたような表情……

そして、髪飾りに優しく触れながら……苦笑い。


「イズフィール。」

祝福の中、幸せに囚われるのを許さないかのような現実。

ミカエル様の表情は、穏やかではなく……

強い……今までに見たことのない眼。

「……はい。」

イズフィーの緊張が伝わる。

「汝、イズフィールを……我、ミカエルの付き人に任じる。因って……特殊な任務を遂行するように。」

「任務に、つき従い……全うすることを誓います。」

任務……私の元を去る。一時的なのか……どれくらいの年月なのか……

サラカちゃんの記憶にない時間。

「シフリール。あなたの羽は、存在意義……手に入れたでしょうか?」

「……はい。確かに、この手……私の想いと共にあります。」

「では、それを信じなさい。希望は、常に残り……永久の……鎖。」

……鎖?

ミカエル様の表情に、影が一瞬……

「イズフィール。彼を恨まないで……私の……」

「彼も、同じことを言いました。二つの不変……不滅性は、どうなったのですか?昔、天使長の祖父に訊きましたが答えは得られず……。」

「キューピッドに与えられた弓矢は、一組だったのです。」

……弓と矢が、一つずつ……?

「ここには、矢が二つ……」

ミカエル様の手から、二つが消えた……?!

「時が来ました……次の均衡を保つ者たち……イズフィール。彼らを護りなさい。それが、あなたの任務。一つの矢は、二人に触れて二つになった。二つの矢は、均衡を保つために4人に触れた……矢は……」

……4本に増えたってこと??

イズフィーの任務は……

「汝、イズフィールをネコの学園の理事長に任ずる。」


地上のどこかにあると言われる……ネコの学園。

そこでは、ネコが地上で、天使の補佐になるため……天界や地界の掟や役割を学ぶのだとか……

地使の役目……4匹のネコ。


「ミカエル様、ネコの世界に違和感がありませんか?」

「その学園や周りの居住区画は、強力な結界で覆われています。人型として、生活が出来るのです。」

言い終わったミカエル様は、更に強力な光の内に……溶けるかのように……消える。


『さ、時まで……幸せを……コをつくり、育てなさい。あなた方と、護られた未来に……神の祝福があるように……』






本編─end─

読んでくださり、ありがとうございます。

サラカ編は、イズフィールが未来に行ってサラカと出会う場面となっております。

ラファエルは過去に来たわけですが。本来の名前はラーファ。

未来は名前の形式が違う設定で、イズフィールは違和感がないようイズミと名乗っていました。

サラカとラーファとの曖昧な関係も書かれていたのですが。

コラボしたサイトがサ終になり、作品が消えてしまったのですよ(遠い目)

長い年月が経っておりましてね。連絡先の交換などは、ほら、サイト上ではできんやん?←

今なら、もっと方法があったのでしょうけどね。


話の流れとかはリンクしてるので、なんとなくお察しください♪

『サラカ編』書こうかと一瞬思ったのですが、それも違うなぁと。断念しました。

猫の楽園も書いてみたいと思いつつ(遠い目)

もう少し短編があるので、お楽しみください!


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