終章
「……ね、イズフィー?」
視線を向けると、イズフィーの視線は私の目線より下にある。
……?
首を傾げ、視線をたどるように落とした。
「ぎゃぁああぁ~~??」
胸元が肌蹴、白い肌……胸の谷間と赤い しるしが一つ。
一瞬なのに、そこまで見えた。
パニックで、訳が分からないまま両腕で隠し……両羽で覆う。
見えなくなったことに安心したのも、つかの間……両羽に何かが触れた。
【ぞくぞくぞくっ】
慌てて、両羽を定位置に戻すようにして、触れていたものを払いのけた。
見えたのは、少~し……真剣?怖い?眼の……イズフィー。
「あの、イズフィー??何を、したのかな……?」
少し、後ずさり……尋ねてみる。
【にっこり……】
ゆっくりと、微笑む口元。
眼差しは変わらず……
「ふむ。……リル?」
考える素振りで、羽を大きく広げた。
何だろう……記憶にある。何と言うか……まさか……ね?
イズフィーの羽は、赤みを帯びたオレンジ色。夕日のように染まっている。
「……なぁに??」
視線を逸らすことが出来ず、嫌な汗を感じつつ……返事をしてみる。
「……疲れただろ?ちょっと、休憩していかない?」
腰に片手を当て、片足に体重をかけて……
軽く……もう片方の手が、くいっと後ろを指さした。
……休憩……?
固まった私に、じりじり……近づいてくる。
「ふふっ。直球じゃないと、分からないかな?」
言ったと同時で、羽を羽ばたかせ私を抱えて飛んだ。
あの羽の敷き詰められた場所に、自分の身が沈む。
重みを受けて……
「ね?シフリール……任務に行くんだ。ね?……気づいているんだろ……?リル……愛している。コを作ろう?」
ぎゃぁ~~~~??やっぱり?!!?!
聞いたことがあった……大人な話……コを作る方法。
羽を重ねて……重ね……
「ぎゃぁ~~、いや……っ……触れないで。」
「どうして?触れたいと願ったのに……君は、俺じゃダメ?」
卑怯だ……駄目な訳がない。
でも、こんな学園で……外で……
「ね……シフリール?羽を俺に向けて?……はぁ……息が苦しいよ。ね?お願い……」
甘く囁き、見つめる視線に、羽が……
受け入れたいと願う。
羽が、少し開いていく。
あぁ……どうしょう?
でも……任務で離れちゃうし……
「こほんっ!!」
【ビクッ】【びっくぅ~~~!!!!】
過剰に驚いたのは、もちろん私だ……
そして、固まる二人に……清浄な風が、穏やかに包む。
温かな光の中なのに、寒く感じるのは……
どうしてでしょうぅ~~~~?!?!!??
イズフィーは羽を落として、私から離れた。
私も羽を落として、立ち上がる。
気まずく、ミカエル様の前に立つ二人……
「ふっ。時間は、ありますよ。未来を護ったのは、あなた方ではありませんか。」
ミカエル様は、穏やかに笑う。
「……っ……うっ……うぅ~~」
涙が零れ、声がつられてしまう。
こんな時に、泣くなんて……まだまだ弱い。未熟だわ……
「リル……頑張ったね。」
ふと、イズフィーの声に記憶が頭を過った。
「ね、イズフィー?あなた、サラカちゃんを……?!」
勢いで、ミカエル様の存在を無視し……いつもの調子。
イズフィーは、私の頭を撫でながら……
「ミカエル様、俺から話しても良いですか?」
「はい。私は、それを望みます。」
二人に隠された何か……
任務と関係があるのかな……それとも、彼……と関係が?
「リル……君の口に入った飴玉は、記憶にある?」
思考と感情に揺れた間……保つ力だった。
「うん。大好きな……天界花の蜜で出来た飴……もしかして、私??」
私の夢は、叶っていたんだ。
サラカちゃんに……力となっているんだ。
嬉しくて、また……涙が流れる。
「シフリール、イズフィール。過去のあなた方の夢は、未来を支え……未来へと導いた。その未来も、過去を護る。」
時間が、支え合う……お互いを必要として……
「イズフィー、その……胸に……ごにょごにょ……矢!矢は、どうやって抜いたの??資料館の記録にはなかったのに、どうして分かったの??」
胸の赤い跡……まさか……だよね??
「ん?キスしたんだよ♪そ・こ・に!!」
やっぱり、ですかぁ~~??
【かあぁあ~~~~】
ミ……ミカエル様の前で!!
て、訊いたのは私だけども!!!!
「リル、聞いて。俺の任務……あいつを追いかける。君は、会ったかな……黒い羽の……」
やっぱり……彼……なんだ。
【コクリ】
話を遮らないように、黙って頷いた。
「弓矢を盗んだのは、そいつ……そして、その時に俺にも矢を刺したんだ。」
え……?イズフィーにも……??
「ここにあるのは、君に刺さっていた矢。そして……」
ミカエル様の手には、もう一本の矢。
「これは、イズフィールの首元に刺さった矢です。」
「君の感じた冷たさを、俺も味わったんだ……」
ただ、ゆっくりと……二人を交互に見た。
「……抜き方は、イズフィーの記憶にあったんだね。」
イズフィーの首元に……ミカエル様のチュウ……ちゅう……
「シフリール。キスは、触れただけで……吸い付いたりは……」
【ボボッ】
顔が一気に熱を放出した。
は、恥ずかしいぃぃいぃ~~!!!!
うわぁ~~ん。イズフィーの所為なんだからね??
睨んだ私に、ニヤリ顔。
確かに、麗しいミカエル様が……キスって……
イズフィーの首元にって、思ったよ??想像したよ??
ちょっと、良いかも?なんて、考えたよ?
くやしぃ~~~~!!!!
「未来が過去を補うように……あなた方の手にある髪飾りが、過去を永遠へと導くでしょう。二人が、時を過ごすように……未来で、二人が時間を過ごすとき……その共通のものが均衡を保つのです。大切にしなさい……」
「「ありがとうございます。」」
ミカエル様は、羽を大きく広げた。
注がれている光の量も質も……比べものにならない祝福……
その幸福感の中……イズフィーに、私は寄り添う。
手には、あの髪飾り。
「それ、あいつの?」
「そう……大事そうに、いつも持っていた。愛しそうに触れていたわ……」
「けっ……サラカに、触れているかと思うとイライラするぜ?」
少し、すねたような表情……
そして、髪飾りに優しく触れながら……苦笑い。
「イズフィール。」
祝福の中、幸せに囚われるのを許さないかのような現実。
ミカエル様の表情は、穏やかではなく……
強い……今までに見たことのない眼。
「……はい。」
イズフィーの緊張が伝わる。
「汝、イズフィールを……我、ミカエルの付き人に任じる。因って……特殊な任務を遂行するように。」
「任務に、つき従い……全うすることを誓います。」
任務……私の元を去る。一時的なのか……どれくらいの年月なのか……
サラカちゃんの記憶にない時間。
「シフリール。あなたの羽は、存在意義……手に入れたでしょうか?」
「……はい。確かに、この手……私の想いと共にあります。」
「では、それを信じなさい。希望は、常に残り……永久の……鎖。」
……鎖?
ミカエル様の表情に、影が一瞬……
「イズフィール。彼を恨まないで……私の……」
「彼も、同じことを言いました。二つの不変……不滅性は、どうなったのですか?昔、天使長の祖父に訊きましたが答えは得られず……。」
「キューピッドに与えられた弓矢は、一組だったのです。」
……弓と矢が、一つずつ……?
「ここには、矢が二つ……」
ミカエル様の手から、二つが消えた……?!
「時が来ました……次の均衡を保つ者たち……イズフィール。彼らを護りなさい。それが、あなたの任務。一つの矢は、二人に触れて二つになった。二つの矢は、均衡を保つために4人に触れた……矢は……」
……4本に増えたってこと??
イズフィーの任務は……
「汝、イズフィールをネコの学園の理事長に任ずる。」
地上のどこかにあると言われる……ネコの学園。
そこでは、ネコが地上で、天使の補佐になるため……天界や地界の掟や役割を学ぶのだとか……
地使の役目……4匹のネコ。
「ミカエル様、ネコの世界に違和感がありませんか?」
「その学園や周りの居住区画は、強力な結界で覆われています。人型として、生活が出来るのです。」
言い終わったミカエル様は、更に強力な光の内に……溶けるかのように……消える。
『さ、時まで……幸せを……コをつくり、育てなさい。あなた方と、護られた未来に……神の祝福があるように……』
本編─end─
読んでくださり、ありがとうございます。
サラカ編は、イズフィールが未来に行ってサラカと出会う場面となっております。
ラファエルは過去に来たわけですが。本来の名前はラーファ。
未来は名前の形式が違う設定で、イズフィールは違和感がないようイズミと名乗っていました。
サラカとラーファとの曖昧な関係も書かれていたのですが。
コラボしたサイトがサ終になり、作品が消えてしまったのですよ(遠い目)
長い年月が経っておりましてね。連絡先の交換などは、ほら、サイト上ではできんやん?←
今なら、もっと方法があったのでしょうけどね。
話の流れとかはリンクしてるので、なんとなくお察しください♪
『サラカ編』書こうかと一瞬思ったのですが、それも違うなぁと。断念しました。
猫の楽園も書いてみたいと思いつつ(遠い目)
もう少し短編があるので、お楽しみください!




