五章:均衡
キミは私
俺は君
羽が二つあるように 弓と矢が両方必要なように……
でなきゃ生きていけないんだ
俺は
私は
共に過ごす永遠に近い時間。
不朽と不滅の長い永いトキ……
向き合い、重なる大きな翼……同じ色、同じ大きさ……まとうものも……類似……
異なるところは、ただ……個性。
「俺は……君を護りたい」
「私は守る側でいたい……」
不変に変化を求め……手を出したのは、私……
矢を、自分の胸に刺そうとしたんだ。弓は、キミが持っていたから……
心に、一点の黒……
それは不安なのか、キミの存在の大きさなのか……
求めたものは、キミと同じもの……
染まり堕した精神は、羽に現れる。
見つけたのは、キミ……
永遠とは悲しい……気がつかないうちに、自分の羽に黒い色がついているなんて。
ただ見守ることに、耐えられなくなっている自分にも気がつかずに……
キミは、私が自分に刺そうと向けた矢を取り上げた。
そして躊躇なく矢先のハートを折り、口に運ぶ。
キミの中で、以前から その考えがあったかのように……自然な流れ。
「止めて!!ルー……」
私が止めるのも聞かずに、キミは呑み込んだ。
「君は白いままでいて。俺が狂うから。君の黒を、俺が引き受けるから。だから、お願い。ミカ……」
悲しい瞳は黒に近い藍色……
黒に染まりきらないその色は……キミの強さ。
羽は光を受け、何にも染まらない完璧な暗黒。
優しすぎるルシフェル。私はキミ……。
白い君を守るためなら、俺が黒く墜ちてやる。
黒くなってしまったら、何にも染らない……
ただ、お前だけを見守ることが出来る。だからいいんだ……
ミカ。お願い、そんなに悲しい顔をしないで。
綺麗に笑って……君の微笑みを護れるなら。
永遠とは、なんて残酷なんだろう。
綺麗で無垢なミカエルを、黒く染めようとした。
白い羽に点が一つ。
その美しい黒……ありえない色は、俺だった。
俺たちは常に一緒。だから、わかる。
君の心が……脆く染まりやすい、その心が。
ミカ、君を護りたいんだ。
狂ってるのは俺……だから、堕ちるのは俺でいい。
「狂った俺を止めてよ? ミカ……。」
それだけで救われる。
君に見守っていて欲しいから……
ミカエル。君は俺……
均衡を崩した力……
出来た空間は、キミと私の存在に起因する。
どちらも必要……すべてを守るため……
歪は、時の狭間が生み出すもの……
キミは、役目を知っている……そして、その犠牲を選ぶんだ。
そう、彼らは……弓と矢……キミと私の犠牲……
過去と未来の歪……
耐えて、その未来を……過去を守って欲しい……
すべてを守るため……すべてを望み、希望する。
キミの望むもの……私も、本当は……
過去は未来を必要とする。
未来もまた、過去を必要として均衡を保つ。
一つの未来へと紡ぐ4つの存在が、今……そろう。
「リル!!」
懐かしい声がする……誰?
私に近づき、優しく抱きしめる……
【フワッ】
甘い香り……懐かしい。
大好きな時間……大好きなあめ玉……
触れる唇が、口に甘さを運ぶ。
【ズキッ】
急激な、冷たさを伴った痛み……
耐えられず、気を失った。
「消える?何が、消えるんだ……」
意識の遠く、愛しい人の声……手には、いつも感じていた力と温もり……
思考と感情の波が、揺れる。
「コがうまれたらね、ぜったいたべてもらうの!ワタシが、おかあさんにしてもらったように……ヤなことを、がんばれるように。いつも、みているよって!」
「ねぇ、それはボクとのコだよね??」
「うん!やくそく……だいすき、イズフィー」
天界花の蜜で出来たそれは、口の中で甘く優しく溶ける……




