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⑧天使の楽園:シフリール編  作者: 邑 紫貴


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第二章:思考

付き人の心得1。『追放……すなわち、何らかの該当する罪を負い……別の空間へと……その権利は、理事長ミカエルの命による。』

何度読んでも、理解が出来ない。

罰ではなく、追放……何らかの該当する罪……

何をしたの?イズフィー……

別の空間……

いつか、必ず……その為には、こんな羽ではいけない。

羽さえ、大きければ……きっと……きっと……


『リル、どうして小さいことを気にするの?』

『大きいイズフィーには、分からないのよ!』

『可愛いと、認めてあげて……かわいそうだよ……』

夢を見る……幼い時の記憶……

かわいそう?羽が?……それとも……私?

イズフィー……答えて……お願い……そばにいて。

息も出来ない……苦しくて……

ミカエル様の指示なら、訊いたら答えてくださるのだろうか?

何をしたのか……逢えるのか……


自由なイズフィー。何にも、縛られることなく……

知ってる……本当は、私より頭が良いの……

必死で追いかける私に、ゆっくり、少しずつ……距離を縮めたの……

追い抜いた私に、あなたは言った……

『良かったね』

望んでいたのは、そんな言葉ではなかったのに……

気がついたときには、すべてが遅くて……



いつもの時間に、学園へと向かう。いつもより、羽を忙しく動かして……

ミカエル様に、直接訊く!

頑張って良かった……付き人だから、ミカエル様に会える。


理事長室は、ドアが壊れている。

そこへの道程にある羽の認証の機械だけは、機能が復旧していた。

だから、誰にも聞こえないと思ったのだろう……

「では、知っていて!?」

ラファエルの声。

「はい。それが、あなたに来てもらった理由の一つ。これ以上は言えない。ラー……誰だ?」

「シフリールです。今の……会話は……イズフィール……のこと、ですか?」

ミカエル様は、ニッコリ笑って……

「何の会話でしたでしょうか。そうです、2人に捜して欲しいものが……」

ラファエルは、羽を一度広げて閉じた。

大きな羽……光に透けて透明感のある灰色……白に近いそれに嫉妬しそうだ……

「リル……今は、任務に集中して?」

気遣うように、私に優しく微笑む。

分かっている……私は、付き人。

ただの候補生だったシフリールでは、ミカエル様に会えない……

まして、何らかの罪を負ったイズフィー……

ラファエルは、真実を知っている。少しかもしれないけど……

それでも……私の希望を、彼が持っている。いつか、時が来たら……

私が、空間を移動できる可能性よりも確実に……情報は、手に入る。

待つのよ……シフリール……ほんの少しの我慢よ……

待てば、きっと……


「では、任務を与える。付き人、ラファエル・シフリールに告ぐ。行け、神器の行方を捜すのだ!」

神器……?大昔に、活躍したと言われる……

行方……?イズフィーが、持っているの?

「シフリール。任務に、集中するように!気を乱してはいけない……」

「……はい!」

「よろしい。……ラ……ファエル。」

ん?一瞬、変な発音??

「いえ、任せましたよ。」

ミカエル様は、私に何かを言いたそうにした。

その素振りだけで、満足しよう。

きっと、時ではない……ミカエル様は相応しい時期を、知っておられるのだろうから……

「ミカエル様、あの……いえ……私だけが、情報を得るのも……ただ、気にかけていただければ……」

「ラファエル、彼女は頑張っていますよ。心配は要りません……あなたの役目の上に、祝福を……」

「感謝いたします……」

彼女……か。ラファエルも、何かを我慢してるんだね。


理事長室を出て、階段を下り……ふと、ラファエルの表情を見る。

頬に、赤みがあり……口元が緩んでいる。

嬉しいのかな?

私の視線に、慌てて首を振った。

……??

気を引き締めるためだろうか……両頬に、両手でパシンッと……痛そうだ。

「ごめん……」

真面目だ……不器用なのかな?

「……ふっ……いいのよ。気にしないわ……」

今、穏やかでいられるのはラファエルのおかげね。

気持ちが落ち着く……冷静でいられる。この人が、希望を持っているから……

イズフィーと一緒にいるときとは、大違い……

冷静に、判断が出来る。待つことが出来る……大丈夫……頑張れるわ……


「……聴いたか?イズフィールの件!」

「しっ……皆 知っているけど、表向きは内密なんだ。追放だろ?」

「あの、イズフィーがねえ。追ほ……わわっ、やばい!行くぞ!!」

……私の姿に、生徒が数人……逃げた。

通学の時間帯に、数人のひそひそ話。

頑張れる……はず……

嘘だ……

イズフィー?嘘……よね?

視界がかすみ、熱い想いが……我慢……出来ない……

零れた涙に、声がつられる……

「……うぅっ……ぅ~~……」

大きな羽が、私を覆う……

「泣いていい……見えないよ。誰からも……大切なんだね。好き……なの?」

好き……??

「何で……今、そんな……っ…………うあぁ~~」

優しく抱き寄せ、頭をラファエルの手がふわりと撫でた。

でも、それが撫で続けることも……その後、頭に触れることもない。

抱き寄せる腕に力はなく、視線は優しいのに……どこか遠慮気味。

「……ぷっ……くすくすくす……」

「え?何で??さっきまで泣いてたよね??」

「ふくく……ダメ、可笑しい……止まらない……」

笑い続ける私に、小さく呟いた。

「あいつも、理解不能だけど……はぁ~。難しい……」

ため息で、天井を見上げるラファエルは、どこか拗ねているように見える。

彼女のことでも、思い出しているのかな……

逢えないんだね……ラファエルも。

「しっかりしなさい!そんな大きな羽を持っているのに!ため息は、ダメよ!!今度、ため息なんか吐いたら羽をもらうわよ?」

「え、何故??急に……」

「羽は、可能性を持っている。難しい事態に、立ち向かうもの!ため息なんて、似合わないわ。」

好き勝手、イズフィーと同じように言っちゃった……。

我に返って、顔が熱い。

そんな私に、最高の笑顔を返す。

「落ち着いたのなら、神器の話をしようか。ふっ……気分が、スッキリした。今、出来ることをしよう?」

「ええ!場所を変えて話しましょう。」

「……彼が、君のために……何かをしたかった理由も分かったよ……」

え?

聞き返そうとする私の前に、大きな羽を広げ……何度か動かした後、飛んだ。

ラファエル……イズフィーは、私のために何かを……?


ん?今……また、黒い何かが目の端に……

疲れているのかな……頑張らなきゃ!

羽を必死に動かして、ラファエルに追いついた。

「リル、キューピッドの矢について……どれほどの知識がある?」

「神器……天使の心得5の最終ページに、少し書いてある程度。」

「そう……教科書に、載っているんだ……」

この言葉の意味に、気がつくのは……随分後になる……






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