表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

21話 冒険者ギルドの酒場にて

ギルド長への報告を終え、古城跡で発生したアンデットの件について一通り説明を受けたあと、ラングたちは、合流したタナス一行とともにギルド内の酒場で夕食を取ることにした。

ゴンザレスたちはもう少しギルド長と話すことがあるらしく、「終わったらそっちへ行くから、先に食べていてくれ」とのことだった。



「酒を飲むのは、ずいぶん久しぶりな気がするな。コンテナの中だとつい安心して一杯ひっかけたくなるが……最初に決めたルールは守らんといかん。野営中に飲んだら、いざという時の反応が遅れるからな。気が緩みそうになるが、今後もきちんと守るとしよう」

と、ドグマが感慨深げに言う。


「そうですわよ? 私だってダーリンといちゃいちゃしたいのを我慢しているのですから。皆さんにもルールは守っていただかないと困りますわ」

と、ナタリンがジト目で言った。


「そうだったな。お前さんの場合、野営中は“いちゃいちゃ禁止&お触り禁止”だったか。……ってことは、今夜は野営じゃないから、いちゃいちゃし放題、触り放題というわけか?」

ドグマがニヤニヤと煽る。


「その通りですわ……どれほどこの日を待ちわびたことか。成人するまでは節度を守って……と自分に言い聞かせて我慢してきましたのに、成人直前に出発して、しかもこんな非情なルールまで作るなんて。ひどいと思いません? こんな仕打ち……いえ、お仕置きなんてされたら……わ、私……どうにかなってしまいそうですわ……」

ナタリンは意味もなく身悶えする。

※この世界の成人は15歳。


「ナタリンさんにとって“お預け”はご褒美なんだってラング君が言ってたんですけど……どういう意味なんですか?」

と、純真そのもののジョンジョン。


「ナタリンはね、Mっ気があるから感覚がちょっと違うんだよ。ジョンジョンには参考にならないから、あまり気にしなくていいよ」

と、ラングが苦笑混じりに説明する。


「ジョン様、アタイは“お預け”じゃ満足しやがりませんです。

好いたお殿様には行動で示してほしいでやがります」

敬語を練習中のブレイネが、決め顔で言う。


恐らくお殿様じゃなく殿()()と言いたかったのだろう。




「そうなんですか? お預けって、みんなが好きなわけじゃないんですね。行動で示すって……どうすればいいんだろう?」

ジョンジョンが素朴な疑問を口にする。


「ジョン様、そのたくましいお腕で、ぎゅ~っと抱きしめやがりまして……ぶちゅーっと口を吸っ……いや、口を“お吸いあそばせ”ば、よろしいのでやがりますぜ……」

願望全開で語るブレイネ。


(ちょ……ブレイネさんや。敬語はもう諦めたらどうだろうか? あと願望ダダ漏れしてるからね……)

ラングは内心ツッコミを入れつつも声に出すほど野暮ではなかった。



暴走寸前のブレイネも交えて楽しく会食していると、急に周囲が騒がしくなった。

今まで閑散としていたギルド酒場に、ぞろぞろと人が流れ込んできたのだ。

例のアンデット対応に駆り出されていた冒険者たちが戻ってきたのだろう。


みるみるうちに席が埋まり、先ほどまでの静けさが嘘のように賑やかな空気へと変わっていった。


おそらく連日働き詰めだったのだろう。

仕事終わりの一杯に、これでもかと酔いしれる冒険者たち。

荒っぽい連中が酒を飲めば “からみ酒” が出始めるのは世の常で――。



「よっ、そこの綺麗な姉ちゃん! そんなしみったれた席にいねぇで、俺たちのテーブル来いよ! 楽しいことしようぜ!」


そう言ってふらつきながら近づいてきた男は、そのままナタリンの肩をガシッと掴んだ。


「せっかくのお誘いですが、お断りいたしますわ。それと気安く触れるのは、ご遠慮くださらない?」

ナタリンはペシンと手を打ち払い、きっぱり拒絶する。


「おいおい、随分お高くとまってんなぁ。町のために体張ってる俺たちを労う気持ちもねぇのか?

魔物と戦って高ぶってる俺たちを慰めてくれてもいいじゃねぇかよ」


男はしつこく絡んでくるが、ナタリンは微動だにせず完全スルー。


しびれを切らした男が再び肩に手を伸ばした瞬間――。


「おい、その汚ぇ手ぇどかしやがれ! いきなり他所の席にちょっかい出すとは、いい度胸してんじゃねぇか。しかも見ず知らずの女性に触るなんて、どこの野蛮人だ?」


とっさに立ち上がったブレイネがその男の手を掴み上げる。

興奮して敬語を忘れているのはご愛敬という事で。


「おい、てめぇみてぇな 男女 と話してるんじゃねぇ! てめぇなんざ眼中にねぇんだよ! 大人しく引っ込んでろ!」

三下丸出しのセリフを吐く男。


だが、あまりの失礼さに、温和なジョンジョンもさすがに我慢できなかったらしい。


すっと立ち上がると、男の襟首を片手で掴み――そのまま軽々と持ち上げた。


「ナターシャさん、ブレイネさん、大丈夫ですか?

それにあなた……いきなり失礼すぎますよ。見知らぬ女性にその態度はありません!」


怒気を含んだ声で諭すジョンジョン。

男はプランプラン宙づりだ。


(あの気弱だったジョンジョンが……なんて立派に。

もう君は紳士、いや王子様だよ!)

ラングは感慨深くジョンジョンを見上げた。


「てめぇ何しやがんだ! 離せ、離せってんだ!」

「はい、わかりました」


手を放すと、男はドスンと鈍い音を立てて床へ転がった。

そして立ち上がるや、腰の短剣を抜くという暴挙に出た。


さすがにラングたちの表情にも緊張が走る。


ドグマは即座に立ち上がり、仲間を庇うように構えた。

ラングはすばやく間合いに入り、男の腕をひねり上げて床に叩き伏せる。


床に転がった短剣を手で弾いて遠ざけると、ドグマがその男の体をがっしりと押さえ込んだ。


「酔った勢いでちょっかいかけた挙句、刃物まで出すとはシャレにならないよ。

そもそもブレイネさんが言った通り、見知らぬ女性にむやみに触れるなんて失礼にも程がある。

……はい、お仲間さんも動かないでね。これ以上騒ぐと――もう後戻りできなくなるよ?」


啖呵を切るほどに、ラングの頭に血が上っていく。


抑えられた男を助けようと、その仲間らしき冒険者たちが次々と駆け寄ってきた。

……というか、多くない?


よく見れば、酒場にいた冒険者のほとんどが敵方に回っている。


「お前ら、俺たちの地元で好き勝手してくれたな。五体満足で帰れると思うなよ!」


その一声を合図に、大乱闘が始まってしまった。


■だが――この数年でラングのスキルは完成されていた。


効果≪奮≫ → ≪鼓舞≫ → ≪激励≫ 能力値100倍。

効果≪導≫ → ≪指導≫ → ≪指揮≫ 率いる一団の能力値100倍。


100 × 100 = 10,000倍。


仲間の能力は一万倍。

負けるはずがない。


ラング自身もチート従者のおかげでヤバいほど強くなっている。

勝負は火を見るより明らかだった


ただ、頭に血は登っても周囲が全く見えてないわけでもなく、ナタリンに【状態不変】を発動してもらって店をめちゃめちゃにしないよう配慮は怠らない。


という事でギッタンギッタンにしてやったのだった。


「まだやる? 奥にいる人たちも、さっきまでの威勢はどうしたのかなぁ。

俺たち、まだ全然本気出してないんだけど?

俺の仲間に暴言吐いて、うちの連れに手を出そうとした時点で――君らも同罪だよ?」


ラングは希に命じ、巨大化させて関係者全員を糸網で拘束させた。


そこへ、ようやくゴンザレスが駆け込んでくる。

その顔は心底びっくり。

ギルド長は……頭を抱えている。


「フン、知るもんか。売られた喧嘩を買っただけだ。

酒場内もご覧の通り、物ひとつ壊れてないからね。

さあ、どう落とし前をつける?」



☆ ☆ ☆



ふと横を見ると――

ブレイネがどさくさに紛れてジョンジョンに抱きついていた。


抱きしめてほしいと言っていたはずなのに……

どう見ても、たくましい腕で抱きしめているのはブレイネの方。


お願いだから、ジョンジョンが“行動で示す”まで待ってあげようよ。


だめ、だめ、お口吸っちゃ……だめ~~!


静まり返った酒場内に、

ジョンジョンの魂まで吸い込みそうなほどの吸引音が響き渡った――。

ご覧いただきありがとうございます。

ブックマークやリアクションを頂けるととても励みになります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ