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20話 サウスポルトニアに今起こっている危機

蟻の魔物の暴走から逃げて来た冒険者パーテイー『嘆きの咆哮』のリーダーゴンザレスは冒険者ギルドの受付カウンターの内側に身を乗り出し大声を張り上げた。



「おーい、誰かいないか~?いたら出て来てくれ~。依頼についての報告があるんだ!おーい誰か~?」

「は~い、今行きま~す!」


カウンターの奥から呼びかけに答える声が聞こえてくる。

そうしてカツカツ足音を鳴らしながら黒髪に肩までのボブ、前髪を眉毛くらいまで垂らした女性が現れた。身長は160cm前後、愛想の良い美人さんだ。



「あっゴンザレスさん!お待たせいたしました。ご報告という事ですね」

「お~ハンナちゃんか、今夜も夜通し勤務かい?」


「そうなんですよ。ここ最近アンデット達の動きが活発化していて、夜間はもちろんですが、ここ最近は日中でも動き回ってますからね。私達職員も昼夜問わず対応できるよう、交代で務めを果たしてます。そろそろ解決してくれないと身が持ちませんよ……」

「そうかい、そりゃお気の毒さま。それじゃ彼氏ともよろしくできないだろうよ。 大丈夫なのかい?」

「そうなんですよね。最近喧嘩が絶えなくて……。って!今はそんな事はどうでもいいんですっ! 報告って事は……例の件ですよね?」

「そうそうそれ。 早いとこ話そうと思ってよ、戻って来て早々ここに足を運んだってわけさ。で、ギルマスはいるかい?」

「そろそろ戻って来る頃かと……。あっ、噂をすれば何とやら、ギルド長が戻られたみたいです!」


受付嬢のハンナの視線の先に現れた人影。

見ればスキンヘッドの強面がのそっと姿を現す。

ここ以外ですれ違ったならば思わず身を隠したくなるようないかつい容貌であった。


「誰かと思えばゴンザレスじゃねぇか。って事は例の件の報告だな。よし早速聞かせてもらおう。で、一緒にいるそいつらは何者だ?ま、それも合わせ聞こうじゃねーか。とりあえず俺についてきな」

ギルド長と思しき男はそう言うとすたすたと歩き出す。

その後ろに慌ててついていくゴンザレス。

ラングとアイファもなりゆきに任せ後を追った。


そこは長机を四角く並べただけの飾り気のない部屋だった。

中は少しひんやりとしていて、今日はまだ使われてなかった雰囲気だ。

こうして人が集まった時だけ使用する会議室と言ったところか。

ラングは部屋に入ると促されるまま窓際の席に腰を下ろした。

入り口ドアに近い場所には例のいかつい顔のギルマスが腰を下ろし、警戒をにじませた死線を飛ばしてくる。

そうして、その真正面に座ったゴンザレスがスタンピードの発生とそれに至る経緯の説明を始めた。



「そうかそりゃ災難だったな。この馬鹿どもが迷惑かけちまったようで済まなかった。ったく次から次へと問題ばかり持ち上がる。補償の代わりと言っちゃなんだが持ち込んだ素材の買取価格に色を付けさせもらうって事でなんとか勘弁してもらいたい。」

「私はそれでかまわないのだが、実質的にはほぼラング殿達の手柄だ。私としては彼らの決定に従うまで。我らの依頼主も同意見であろう」

「俺達も問題ありません。仲間達も昆虫系の素材には興味ないみたいなので、高く買い取ってくれるなら逆に有難いくらいです」


「スタンピードについてはこれでいいな。ではその蟻達の対応について話をしたい。実を言うと我が冒険者ギルドは他の事に手を取られていてだな、蟻にまで手が回らんのだ。今聞いた話だとお前さん方はかなりの手練れとお見受けする。どうだろう、手を貸してくれないか?」

「つまり蟻の討伐を私達暁に眠るダイヤ、そしてラング殿達や、ゴンザレス殿達に依頼したいという事だな?」

「そう言う事だ。俺もクソババァと一緒に同行するから戦力的にはなんとかなるだろう。ゴンザレス達の汚名返上に協力してやってくれ。ぶっちゃけた話、今すぐ動ける人数は他に全くいねぇんだ。恐らく蟻達は既に巣に戻ってるだろうから、手っ取り早いのは巣ごと丸焼きにする事だな」

「おっ!おっさん達が来てくれるなら100人力だ。それならこの少人数でも事足りる」



ゴンザレスによればギルド長は元Sランクの冒険者で、腕前は相当なようだ。

クソババァと言うのは獄炎の魔女と恐れられる彼の元パーティーメンバーなんだそうで、たった二人でも戦力の上積みはかなりのものと考えられる。



「フム、我らは護衛としての任務が優先となるが、蟻達が街道にまで姿を現しているとなれば話は別だ。無理に先に進んで万一大群にでも襲われたら今度こそどうなるか分かったものではない。ならば速やかに蟻退治をした方が結果的には時間の短縮に繋がるだろう。だが、依頼主の承諾は不可欠となるため、一旦保留させてもらおう」

アイファはタナスに相談の上結論を出すことになった。

ラング達は別に急ぎの旅をしてるわけではなし、協力する方向で仲間の了解を得る事にした。

仲間達も異存は無いはずだ。


こうしてアイファは一旦席を離れ、その間ラング達一行はこの町に起きている別の案件とやらの話を聞く事になった。



☆  ☆  ☆



かつてこの一帯を治める一族があった。アインラッド王国が統一を果たすまでの群雄割拠の時代、この地に根を張り居城を構えた。

その者は名君と謳われた先代王に見出され、数多あまたの戦で武功を上げ、後に武神と称えられる。

領民から慕われ、いつまでもこの地を守ってくれると誰もが信じて疑わなかった。

その将軍の名はオウウン。



街に今も残る彼の彫像はそれだけこの地で尊敬を集めてきた証だ。

だが、非業の死を遂げた彼が今この時代にアンデットとして猛威を振るっているのだという。

一族が滅亡する事となった戦いで共に散った部下達の亡骸を蘇らせたのは何故か?

どうして100年以上も経った今突如として暴れ始めたのか。


理由は定かではないが、裏で暗躍している組織があるという。

まだ確証は得られていないが関与を疑わせる情報の幾つかをサウスポルトニア冒険者ギルドは入手していた。


邪神を信奉する狂信者達の集団「闇呪あんじゅの導き」がいつの頃かこのサウスポルトニアにアジトを構えた。

気付けば得体のしれない連中が集まり、日夜怪しい儀式を行っている。

そしてそこに出入りする連中が今は廃城となっているかつての一族の居城に盛んに出入りする姿た何度も目撃されている。



が暗躍しているようで、アンデット達がうごめく廃城跡に出入りする姿が何度か目撃されているという。サウスポルトニアの町にも隠れアジトがあるようで、慎重に調べが進められているそうだ。


狩り出された人達は廃城跡を抜け出し周囲を徘徊するアンデットの討伐にあてられている。アンデットの数が膨大なため対処に苦慮しているのだ。

1万にも及ぶアンデットを討伐するにしてもそれなりの戦力が求められる。

各方面に援軍を要請するもなかなか応じてもらえず、ここにきてやっと港町ポルテアで討伐隊が編成される運びとなったのだ。


その援軍が到着するまでの間はどうにか今いる人数で対応しなければならないというかなり切羽詰まった状況のようだった。



闇呪あんじゅの導きという聞きなれない組織とはこの後も様々な場面で関りを持つこととなる。因縁の開始を告げるあいつらとの邂逅が音もなく迫っていた。

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