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野に咲くコスモスは色あせない~青白く燃える瞳  作者: こんぎつね
7章 野に咲くコスモスは色あせない
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最終話 誓いの果て


月人、真心、斎木博士が乗った飛行機は自由の地へ向かい大空に消えていった。


 ―イギリスか.. 遠いな..  月人、幸せになってくれよ


 「しかし、斎木博士、あなたがあんな変わり果てた姿になっているなんてな。でも、これで約束は果たしましたね」


 11年前、犯罪組織にテロ対チームの本部が爆破された時、赤根隊長は自分の命と引き換えに俺を救った。あの一瞬、自分が逃げればいいのに、部下の俺なんかを窓から突き落とした。おかげで俺は九死に一生を得たんだ。


 しかし、俺の怪我も生半可なものではなかった..


 記録上では脚の複雑骨折だが実際はもっと深刻な状態だった。3階から落とされた俺は背中から腰にかけて鉄柵に激しく打ち付けた。骨盤は粉砕し修復不能となり、腰から下はかろうじて身体にぶら下がっているだけの状態だった。


 ショックを起こして、いつ死んでもおかしくない俺は集中治療室で人工呼吸器をつけられていた。


 『 ―死にたくない.. 俺はまだ死にたくない.. 』


 そんな俺の瞼を誰かが指でかき開く。


 『―誰だ.. 俺はまだ生きている.. 死んではいないぞ..』 


 いよいよ医者が瞳孔を確認しに来たのかと思った。


 冷たい液体がぬるりと俺の眼球を包み込み、それは俺の瞳に浸透していく。


 『私の娘を守れ。約束すれば、守る想いが君の体を再生する。誓うのだ。プログラムは発動され君の人生も再起動する 』


 ―なんだ..? 夢か? それとも神様の声か? 俺の体を再生..再起動? 何のことだかわからないが..俺の人生を取り戻せるなら..



 ああ、誓うよ。約束でも何でもする。 ..だから助けてくれ



 『間もなく君の体は再生される 』


 目が覚めると俺の瞳には斎木博士の姿が映っていた。


 「やぁ、目覚めたね、警視庁テロ隊の中尾君」


 「助かったのか.. あなたが私を助けてくれたのですか?」


 「君は骨盤の怪我のショックから多臓器不全を起こし、命の蝋燭は消える寸前だった。だから、私が再び火を灯した」


 「え.. でも―」


 俺は博士の言葉を信じることができなかった。なぜなら、俺の骨盤から下は動いているからだ。


 「そう、君の腰から下は再生されたのだよ。プログラムによって。しかし、君は脚をひきずって生きる必要がある。君は過酷なリハビリによって歩けるようになった。君はそういう演技をして生きるのだ」


 「..どうして」


 「君は私に誓いを立てただろう。そのために必要なことだ」


 「誓い..」


 「そうだ、誓いだ。赤根隊長の息子月人君を見張るのだ」


 「隊長の息子..被験者の月人君を」


 「そうだ、君は足が不自由なのだ。だから危険人物である月人君の見張り役を志願するのだ」


 「赤根隊長.. わかったよ。命の恩人である隊長の息子を守れというなら、この命を懸けて守る」


 「中尾君、そうではないのだよ。君が守るのは私の娘・真心だ。もしも、赤根月人が娘に近づき、危険を運ぶ存在となったとしたら、君が彼を射殺するのだ」


 「な、何だって! 俺に命の恩人である隊長の息子を殺せというのか!」


 「そうだ、君は誓ったのだろ? ..しかしだ。もしも月人君がそうでない場合は、君には、その行き着く先を見守ってほしい。そして、そちらが私の願いだ。君には私の願いを叶える力を与えた。その力を存分に使ってくれ。わかったね、中尾君」


 ・・

 ・・・・・・

 ―今や、遠い記憶だ。


 月人、おまえは斎木博士にとっても想定外の恐ろしい存在だった。


 特別プログラムなしに、生態AIを自ら適合させた真の適合者はお前だったのだ。


 そして真の適合者は全ての生態AIを統括しうる力を持っているんだ。


 だから博士は俺に見極めをさせたんだ。


 月人、お前は今でも接触したのは真心だと思っているのだろう。


 そうじゃない。


 接触し始めたのは、おまえなんだ。


 真心を見守っていた『燐炎』は接触してきたお前を警戒した。


 2つに分散された生態AIが互いの力を欲するのは自然な成り行き。


 もしもお前の欲望が力を欲する時は、『燐炎』は制御プログラムを発動させるつもりだった。


 その発動させる合図が恋人岬の鐘の音だった。


 あの鐘が4つ鳴ったならお前の生態AIはただのチップになっていただろう。


 しかし、真心の中の『燐炎』は最後に鐘を鳴らすことを躊躇した。


 月人、『燐炎』もお前を見極めたくなったんだ。お前が真心にとってどういう人物になり得るかを。


 真理愛の想い出を巡る旅の中でな..

 

 そして『燐炎』は、お前の中に真心を守る想いが生じることを期待したのだろう。


 最終的に燐炎は、真心を守るため自分自身を初期化した。そうすることで、月人と真心の2つの生態AIを同期させたんだ。医療生態AIの能力を上回る力で真心の銃創を治して見せたんだ。


 それは真莉愛の記憶を持つアンドロイドAI、マリア=燐炎にとっては、痛ましくも避けられぬ決断だったに違いない..


 ・・・・・

 ・・


 さて、これから俺は、衛星兵器が使われた記録や警視庁の記録データを改ざんしなければならない。それから、旅の全ての記録と省庁内のデータもな..


 いろいろとやらなければならないことがあって大変だな―だって?


 そうかい、心配ありがとう。


 しかしな、俺はこう思うだけでいい。


 『 2人を守るため改ざんしろ 』


 そう思えば、俺の両目は青白く燃えるのさ..


     【野に咲くコスモスは色あせない~青白く燃える瞳~ 完】




◇◇◇

最後まで物語に寄り添ってくださり、ありがとうございました。

もし心に何かが残ったなら、そっと高評価やコメントで伝えていただけると嬉しいです。

そのひとことが、また新しい物語の灯になります。

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