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野に咲くコスモスは色あせない~青白く燃える瞳  作者: こんぎつね
7章 野に咲くコスモスは色あせない
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使われないログハウス

【前話までのあらすじ】


 E-LAI研究室で回収した暗号文から―延命寺―を割り出した月人と中尾だった。月人は真心をその場所に連れていくべきかを悩んでいた。しかし、真心は生態AIの力を使い月人たちの行動を監視。すでにその場所を把握していた。月人は生態AIの力を使うことに慣れていく真心に不安を覚えるのだった。

◇◇◇


 牛久大仏の周辺には大仏を中心にいくつもの寺が建立されている。


 『延命寺』もそのひとつだ。 


 「あれ、中尾さん、おかしいよ。確かにこの場所のはずなのに『八坂..神社』って書いてあるよ」


 「月人あっちを見てみろ」


 中尾さんの指さす先には仏閣があった。


 「神仏習合といってな、昔は寺と神社が同じ敷地内に建てられていたんだ。お前、寺巡りしていたんだろ。気が付かなかったか」


 「う~ん.. そういえばそんな気も」


 「まぁ、お前らは観光していたわけじゃないから無理もないか。神仏習合をされている寺っていうのは比較的歴史のある寺に多い傾向がある。『延命寺』もそういう寺の一つだろう」


 寺の周りは鬱蒼とした林に囲まれていた。その林に沿って歩くと一軒のログハウスにたどり着いた。同じ敷地内に建てられた洋風のログハウスは、まるで和菓子コーナーに置かれたショートケーキのようだった。


 整地されていない駐車場には小さな物置があり、その向こう側にログハウスの屋根が見える。


 中尾さんは鍵がないをいいことに門を開けて中に入ろうとした。


 「ちょっと中尾さん、大丈夫かよ」


 「ん? 別に大丈夫だろ。敷地は草だらけだ。人の気配はなさそうじゃないか。お前はここに残るか?」


 真心が俺の裾を引いた。


 「いや、俺たちも行くよ」


 確かに駐車場は木の葉や雑草だらけだった。物置の中には砂埃をかぶった薪が重ねて置かれていた。


 確かに人が出入りしている気配はない。


 6段ほどの丸太の階段を上ると、白いテーブルが置かれ、剪定鋏と手袋が長い間放置されたままのようだった。その先の扉に大きな看板がかかっている。


 —ほそぎ造園管理 ―と書かれていた。


 「中を覗いてみるか?」


 「当然でしょ」


 ここまで来て覗かないわけにはいかない。


 デッキは回り込めるように作られていて、裏手の窓がある場所まで続いていた。


 大きな窓の割には部屋はうす暗い。伸び放題の林の枝が光の侵入を阻んでいるのだ。


 大きな机とそれを囲うように置かれた数個の椅子。広い部屋の割には寂しい様子だ。


 「月人、あそこに何か立てかけてあるな。お前、読めるか?」


 奥の壁に看板、いやデモなどに使うようなプラカードがいくつも置かれていた。


 「えっと.. ―行政の横暴を許すな― ―住民に..説明を― ―大反対!―」


 そういえば、この近辺で度々見かけた文字だ。


 「中尾さん、ここって何かの反対運動の拠点ですかね?」


 「そうかもな。ここが牛久大仏公園を管理している造園会社なら公園の取り壊しに反対していても不思議じゃないからな」


 中尾さんは背広の内ポケットから煙草を取り出そうとまさぐっている。しかし、俺は煙草を取り出しても吸うことはできないのを知っている。中尾さんのライターがガス切れを起こしているのを知っている。


 「公園の取り壊しってなんですか?」


 「ほら、あそこの丘を見てみろ。掘り起こされて地表が半分むき出しになってるだろ」


 「本当だ。何か建てるんですかね?」


 中尾さんは取り出したタバコを口にくわえると、火が付くことのないライターを何度も弾きながら答えを言った。


 「鉄塔さ」


 かつて東京は地下都市計画を進めていた。同時にその工事に供給する電力を確保するため東京の郊外には鉄塔が乱立された。電化生活を中心とする都民に使用制限まで設け、それでも電気が足りずに、近県から電気を購入したのだ。


 ―環境にやさしく電力を使おう!―


 都が自然保護を唱えて電化生活を推進したくせに、今では質の悪いブラックジョークだ。


 「月人、―NeoYURI―計画が再開されるぞ」


 「え? それってとっくに中止になったはずでしょ?」


 「いや、新都知事・福島陽子は15年前、緑川都知事の秘書をしていた人物だ。福島陽子は一度立ち消えた東京地下都市『NeoYURI』プロジェクトを復活させるつもりだ。気をつけろよ」


 そう言うと中尾さんは煙草とライターをポケットにしまった。


 「さて、月人、俺は中に入って探ってみようと思う。お前さんは隣の延命寺でこのログハウスを使用していた人物について調べてくれないか?」


 「ひとりで大丈夫かよ、中尾さん」


 「へへ。馬鹿野郎。これが俺の本職だろう」


 中尾さんは屈託のない笑顔を浮かべた。


 「そういえばそうだね。でも、気を付けて」


 そう言い残し真心の手を引いて、寺へと向かった。




◇◇◇

 次回

 7章 野に咲くコスモスは色あせない

 『無意味』


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