星からの伝言
【前話までのあらすじ】
旅館「五平荘」に到着した月人と真心。月人は五暁寺の澄徳に連絡をして、近況の報告、そして新たなヴィジョンの詳細を知らせる。そして、澄徳からその場所が、奈良井宿「大鳳寺」であることを教えてもらうのであった
◇◇◇
「真心、わかったぞ、この五平荘と斎木博士の関係が!」
部屋に帰ると主人から得た情報、そして澄徳さんから得た情報を真心に話した。
――20年ほど前、斎木博士は、人の思考どおりに稼動する義足の研究をしていた。そのモニタリング対象者が、この五平荘の娘さんだった。
ある日、研究所の仲間で旅行をする計画が出たとき、娘さんの勧めで五平荘に宿泊したのだ。
「娘さんは、その研究で作り上げた義足をもらい受け、今では健常者と変わらない生活をしているらしい。主人は今でも斎木博士やそのほかの研究員に感謝していると言っていた」
「真心お姉ちゃんのお父さんってすごいや! 娘さん、本当によかったね」
太郎の言葉に、真心は誇らしげな顔をしていた。
「さて、ここからが本題だ。斎木博士がここを利用したのは計3回だ。最初に利用したのが20年ほど前だ。研究員数名が宿泊したらしい。次がその翌年だ。その時は友人と2人で利用した」
「あっ、ちょっと待って」
太郎は鞄の中からメモ帳とペンを取り出し、時系列ごとにメモをしていた。
[1回目 20年前(2021年) 研究員数名で宿泊]
[2回目 翌年(2022年) 友人と2人で宿泊]
「そして最後の利用が2030年3月3日に利用した。その時は一人だったらしい」
[3回目 2029年3月3日 一人で宿泊]
「ひとり旅だったのかな?」
太郎はメモ帳にペン先を―トントンと落としながらつぶやいた。
「そうかもな.. しかし問題はこの年月日だ。真心、わかるだろ」
「うん。この2029年、今から13年前だね」
「ああ、3月3日は、俺への臨床実験が行われ、真心を連れて斎木博士が失踪する数日前のことだ」
「うん」
「そんな切羽詰まったとき、なぜ斎木博士はわざわざ西伊豆に来たんだ? 俺は何か理由があったんじゃないかと思う。そして、これは俺の想像だが、俺たちをこの西伊豆に導いたのは斎木博士のような気がするんだ」
「え? なんのため?」
「わからない。ただ、何か仕組まれているような..」
―シュパパ パンッ
その時、砂浜であげられた花火が俺の話を遮った。
「そういえば、月人さん、達磨寺でみたヴィジョンのことは、お父さん(澄徳)に聞いて、何かわかったことあった?」
「ああ、俺たちの次に行くべき場所がわかったよ。明日、俺たちは木曽路、つまり長野県に行く。そこに斎木博士と深い関係のある寺があった」
「え? 月人さん、明日もう長野県に行っちゃうの? さっきさ、お姉ちゃんと話してたんだけど、明日さ、海に行かない?」
「ごめんな、太郎君。俺たちに遊んでいる暇はないんだ」
「え、お姉ちゃん、海に行ったことがないんだってさ。すごく楽しみにしていたんだよ。ねぇ、行こうよ」
「だめだ! 俺たちは急ぐんだ」
「なんだよ。ちょっとぐらい、いいじゃないか! わからず屋!!」
太郎は俺から顔をそむけると、腕を組んで花火の上がる夜空をにらんだ。
「た、太郎君、いいんだよ。月人さんは私のために行くの」
「お姉ちゃん.. もういいや。俺、もう寝るよ」
太郎はふてくされて布団にもぐった。
俺は、なぜか居心地が悪く、窓からバルコニーにでた。
俺には「居心地が悪い理由」がわかっていた。
真心は『私のため』と言ったんだ。
―真心のため.. そのために真心が楽しみにしていた海を奪うのか。それって澄徳さんが真心のためにと言い、13年もの間、寺の中に閉じ込めていたことと同じじゃないか..
空を見上げると、数えきれないほどの星々が小さいながらも力強く輝いていた。
―あれは星の群生か..すごいな.. 綺麗だ。
俺はこの星を真心に見せてあげたいと思った。同時に、明日の答えが見つかった。
・・・・・・
・・
部屋に戻ると真心も布団の中にいた。
―俺も眠るとするか..
灯りを落とし布団の中に入ると、隣から真心がささやいた。
「月人さん、すごく綺麗な星空だったね。それに、いつもありがとう..」
「 ..」
―真心にも見えたんだな..
かすかに聞こえる波音。そして、花火の音と楽しそうな声。
それが夜の静寂を一層際立たせていた。
◇◇◇
次回
3章 海に響く鐘
『水着選び』
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