アヴィド
異世界アヴィド。それは滅びが定められた小世界の名称。
滅びが定められた時。一人の巫女が門を通して異世界に繋がる救いのゲートを開いた。
そのゲートを潜るならば、アヴィドの人々は救われることになっていた。
しかし、中には滅びに抗おうとする者たちが出てきた。
彼らは武勇と魔術に優れていた。自信を持っていたのである。
彼らに希望を託す者たちもいた。彼らがアヴィドの滅びを免れることができれば、それで良いと思っていたのである。
しかし、結果は残酷なものとなった。
武勇に魔術に優れていた彼らは、滅びの根源。すなわち魔王の元へと行くことはできた。
しかし、魔王に一太刀も浴びせることもなく、魔王の一撃によって亡くなってしまったのである。
魔王にはアヴィドに存在した剣も斧も弓矢も魔術も通用することはできなかったのである。
それを知ったアヴィドの住民たちは絶望の最中ゲートを潜ったのである。
好きだった世界に別れを告げる。それは辛いものである。後ろ髪が引かれる思いだとしても。去らなければならない。
やがてアヴィドの住民が、少年と少女の二人だけになった時のこと。
巫女である彼女は少年の説得になかなか応じなかった。
ゲートを通り抜けたら、もう二度とアヴィドへ戻ってくることはできないと信じていたから。
少年は少女と共にゲートを潜り抜けたかった。もうアヴィドには誰もいなかったのだから。
少年と少女の押し問答の後、痺れを切らしたかのように、何者かが少年と少女の二人をまとめて蹴り押した。
そして、二人はゲートを潜ったのであった。
痺れを切らし二人を蹴り押した何者か。
それはアヴィドの滅びの理由を知る者である。
アヴィドの滅び。それはただのステージでしか無い。
二人の魔王の戦いのためにだけ、それだけのためにアヴィドは滅びることになったのである。
そして、二人の魔王は対峙するだろう。どちらかが倒れる時まで。
罪の権化と偽神の初子。彼らの戦いの火蓋はどこで切り落とされることになっているのか。
それはまだ誰も知ることはできないのであるーー。