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10年前の記憶  作者: i
2/4

春: 始まりの季節

 桜が舞う季節になり、別れの歌そして出会いの歌が流れ始めると思い出す淡い気持ち。


どこかそわそわして、未来への期待、不安が入り混じっている気持ち。


 大人になった今でも春の匂いや新学期を迎えたであろう学生を見かけるとあの頃の記憶が蘇る。


 もう戻らない時代を少し寂しく思いながらもあの頃の自分に胸を張れる自分でいたくて




      今日もまた歩みを進める。




 宮くんとの出会いも春だった。

高校2年から希望者が学べるドイツ語講座で出会ったのが最初。



新学期ドキドキしながら同じドイツ語講座を受ける梨花と教室へ向かう。



「ほんとに梨花がいてくれてよかったよ、知り合い誰もいないかとめっちゃ不安だった、、」


「いや、西野は大丈夫でしょ。人見知りではないじゃん。」


「いやいや、私実は人見知りなんだよ?梨花の距離の詰め方がえぐすぎるだけなのよ」


 梨花は同じ弓道部に所属している友達でコミュニケーション能力が以上に高い。


 私も初対面のはずなのに初対面と感じさせないような近づき方で距離を縮められ、半ば梨花の強烈な誘いによって弓道部に入ったようなものだった。


 そんな軽口を叩きながら教室へ入ると梨花が1人の男の子に声をかけた。


「あれ?宮もドイツ語受けるんだー」


「おーーまあねー、木並も受講するんだ。」


「てか花粉症?くそつらそう笑」


 ポンポンと会話のキャッチボールをしている梨花の後ろを歩き、立ち止まっているのもなんなので盛り上がっている梨花と会話している彼の席の斜め前に座る。


 遅れて梨花も隣に座り、私がなんとなく2人のやり取りを眺めていたのに気づいたのか梨花はさっきまで会話をしていた相手を紹介してくれた。


「西野〜これ、宮。去年同じクラスだったんだわ。」


 私の隣に座りながら紹介され、私も挨拶をしなければと簡単に話しかける。


「おおそーなんだ、仲良いねー。初めまして、西野で

 す」


「お、どーも宮です。木並の友達?よろしくね」


 始まりはこんなそっけない、ただの友達の友達。



 それが私と宮くんの出会いだった。






         それなのに。






 気がつくと10年経っても色褪せない思い出の重要な1ピースとして輝いている。



 つくづく思う。人生何が起こるか分からないと。


 きっかけがなければ出会うことはなかった。


 出会っても深い関係になることはなかった


 あの時の選択、


 環境、


 タイミング、


 そして自分が選んだ道。


 どれかが欠けても同じ結果にはならない。



 そのことを深く心に刻み込む高校生活2年目の始まり。そして私を形作る大切な、大切な時代の記憶。


 

 柔らかい春の日差しとぽかぽかした陽気の春ならではの匂いの中、思い出に浸る。


 一仕事終えた私は春をもっと感じていたくて少し遠回りをしながら駐車場へ向かった。



 あの頃から10年経った今は新卒から働いている会社で新規事業を開拓するチームに抜擢された。


 周りに置いていかれないよう常に気を張りながら日々駆けずり回っている。


同じチームのメンバーは認めてくれているけれども、やはり私の異動を認めていないベテランは社内に一定数いて。


 自分でも周囲との差を感じて自信をなくす時もあるがそういう時決まって思い出すのが高校生の頃の記憶だった。


 あの頃のがむしゃらに突っ走って、かけがえのない仲間達と泣き笑った頃を思い出し、自分を奮い立たせる。





   まだできる。音を上げるのは今じゃない。





 今日もまた落ち込みそうになった自分を励ますために過去に浸りながら車の窓を開けて春の陽気を存分に吸い込んで運転をする。





  ティンティロティロティン ティロティン





 思い出や今日のタスクや案件の悩みが頭の中でグルグル回りながら次の目的地に到着した途端、上司からの電話が鳴った。




「はい。西野です。」


「おお、西野。よくやった。例の案件決まりそうだぞ!」


「本当ですか!嬉しいです。頑張った甲斐がありました。」


「これからが忙しくなるな。まあ嬉しい忙しさだな。詳しいことはメールする。」


「ありがとうございます。承知いたしました。」





まだドキドキしている心臓を落ち着かせながら電話を切る。




やった、嬉しい、努力が報われた、叫びたい、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!!!!!!!




 新規事業チームに配属されてから最初の案件。

ご飯が喉を通らないこともあった。悔しさで泣いた夜もあった。



 そんな時はあの頃の自分だったらどうしている?と問いかけながら一歩一歩進めてきた。



 嬉しさでいっぱいになった私は無意識にプライベート用のスマートフォンを操作する。




周囲に咲いている桜は満開で桜吹雪が風に舞っていた。


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