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90.薬師、両親が王都にやってきた

 すぐに屋敷の入り口に向かうと、柱の後ろに身を隠しているノクスとステラがいた。

 やはり父に会うのが怖いのだろう。

 俺の存在に気づき、すぐに隙間がなくなるくらいにべったりとくっついてきた。


「きっと優しいから大丈夫だよ」

「「ほんと?」」


 優しく二人の頭を撫でる。

 きっと精神魔法の影響で、普段よりも優しくて気持ち悪いと思うだろう。

 俺は安心させるために、ニコリと微笑むが二人はビクッとして、入り口に走って行ってしまった。

 今は父よりも俺の方が気持ち悪くて怖いと思われていそうだな……。


 入り口に到着する頃には、すでに何人かは両親を出迎えていた。

 その中にはゼクトの姿もあった。

 両親が来るタイミングに合わせて、屋敷に戻って来たのだろう。

 ただ、肝心の父は周囲をキョロキョロと見渡していた。


「わしの可愛い子ども達は……いた!」


 俺達に気づいたのだろう。

 父はその場でしゃがみ込み、手を広げて待っていた。

 ただ、ノクスとステラは警戒してその場で立ち止まっている。

 さっきまで俺には抱きついてきたのに、父の元に行くのは怖いのだろう。

 本当に二匹の猫を見ているようだ。


「ぐへ……」


 誰も来ないことに父の乾いた笑みが溢れた。

 その瞬間、皮膚に静電気が走ったような痛みが、全身を突き抜ける。


「あれが裏ボスの生みの親か」


 近くにいた聖女も全身を震わせていた。

 時折、俺のことを裏ボスって呼ぶが、俺には父のようにボス感はないはずだが……。

 あまりにも漂う哀愁感が可哀想に見えてくる。

 一応俺も立派な成人を経験してから、この体に転生しているからな。


「はぁー」


 そんな父の姿を見て、俺が弟妹の代わりに飛び込んでいく。

 さすがに精神魔法がかけられているからって、父が暴走でもしたら堪ったもんじゃない。

 少し周囲の視線が気になるが、俺が振り返りニヤリと笑えば視線を感じなくなった。


「父様、母様お久しぶりです」

「くくく、メディスン元気にやっていたか?」

「我が子に会えなくて寂しかったわ」


 優しい父に少し戸惑いを感じるが、よほど嬉しいのかニヤニヤしている。

 母も今日は機嫌が良さそうだ。


「ノクス、ステラ!」


 俺が弟妹の名前を呼ぶと、警戒心が解けたのかすぐに走ってきた。

 何かきっかけが欲しかったのだろう。


「元気でしたか?」

「しゅてらはげんきだよ!」


 抱きつくまでとは言わないが、ノクスとステラなりに頑張って手を繋いでいる。

 俺の両親って父は見た目からして怖いのはわかるが、怒らせたら不動明王に見える母が一番怖いからな。


「忘れられたかと思ったぞ?」

「パパは忘れてもいいけど、ママのことは覚えておいてね」


 やっぱり二人とも気にしていたのだろう。

 さっきからチクチクと言葉で攻撃してくる。

 このままだとずっと嫌味を言われそうだな。

 俺はノクスとステラを巻き込むように、両親に抱きつく。

 そうすれば、ノクスとステラも押しつぶされて抱きつかなければいけないからな。

 オークと戦った時よりも緊張して吐きそうだ。


「ぐへへへへ……」

「ふへへへへ……」


 両親二人とも嬉しいのか笑みを浮かべている。

 どうやら両親の機嫌は保てたようだ。


「ぐへへ、兄さん痛いよ」

「ぐへへ、たのしいね」


 ノクスとステラも、段々と楽しくなったのかニコニコとしている。

 どこか笑い方に違和感を覚えるが、両親の笑みに比べれば可愛いものだ。

 無事に解決したことに俺も安堵して強張っていた体から力が抜けてしまう。


「ぐへへへへ」


 つい笑ってしまった。


――ミシミシ!


 どこかで何かが軋む音が聞こえてくるが、家族全員揃ったことを祝福しているのだろうか。


「どう考えても裏ボス一家を相手にできるはずない。やっぱりぐうたらしているのが俺には合っている」


 聖女は俺達の邪魔をしないように、少しずつ遠ざかっていく。

 まだ俺を裏ボスと勘違いしてそうだな。

 メディスンはチュートリアルにもならない悪役モブキャラだからな。


「家族仲が良いのは羨ましいが、そろそろ中に入ったらどうだ?」


 そんな俺達にゼクトが声をかけてきた。

 長いことハグをしていたから、声をかけづらかっただろうな。

 よく見るとセリオスは息苦しそうだし、ルミナス公爵家で働く使用人達はその場で蹲っている。

 各々自分なりに家族の再会を邪魔しないようにしているのだろう。


「兄さん、競走しよう!」

「しゅてらも!」


 ノクスとステラは勢いよく駆け出した。

 いつもの元気な二人に戻ったようだ。

 そんな二人を俺は追いかける。

 ただ、楽しい空気も一瞬で禍々しいものに変わってしまう。


「おっ、わしも混ざろうか」

「なら私も競争するわ」


 背後からぞくりとするような気配を感じ、振り返ると――そこには鬼のような形相をした両親が走ってきていた。


「ぐへへへへ」


 父なんてずっと笑いながら走って近づいてくる。

 それと同時に屋敷の使用人はバタバタと倒れていく。

 まるで人の皮をかぶった天災とはこのことを言うのだろう。

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