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84.薬師、実験教室をする

「まずは不正疑惑に発覚に気づいた原因は、この回復薬です」


 俺は鞄からルーカスが作った回復薬を取り出す。

 

「回復薬の材料は何か知ってますか?」

「主に薬草と魔聖水が一般的だよな?」


 エレンドラの父の言葉に他の人達も頷く。

 一般的に薬師ギルドしか、正式なポーションの作成方法と材料を知らない。

 だから、メディスンは作ることもできなかったし、エッセンスと魔力水の存在すら知らなかった。


「そもそも材料自体が違うんです」


 俺は鞄から材料を取り出す。


「それは……?」

「その辺に生えている雑草とただの水です」

「「「「雑草と水!?」」」」


 驚くのも仕方ない。

 成分を知っている俺ですら、元の材料を聞いてびっくりしたぐらいだからな。


「ポーションを作るには薬師と錬金術の力が必要なんです」


 俺は雑草をリシアに、水をルーカスに渡す。

 二人が魔力を込めると、雑草の粉末と魔力水に変化する。


「おお、ポーションはこうやって作ってるのか!」


 国王は実験を間近で見る子どものような反応をしていた。

 そもそも魔聖水というものは存在していないし、薬草がただの雑草だとは思わないだろう。

 何も知らない状態で、いくらポーションを作ろうと思ってもできないだろう。

 ルーカスとリシアが、ポーションを作れたのは本当に奇跡に近い結果だ。


「あとはこれを混ぜるだけです」


 俺はリシアとルーカスから材料を受け取ると、国王に渡す。

 国王も含めて実験をすれば、興味も湧いて……。


()は何をすればいいんだ?」


 すでに国王はキラキラした瞳で俺を見つめていた。

 わざわざ気にかけなくても良さそうだ。

 それに一人称が僕だとは思わなかった。

 やっぱりただの可愛いおじさんにしか見えない。


「その瓶に粉末を入れて、よく混ぜ合わせてください」


 瓶に粉末を入れて蓋をすると、国王は大きく瓶を振る。

 キラキラと輝きを放つ魔力水と薬草の粉末が反応し、次第に色が青に変わっていく。


「うおおおおおお! 僕もこれで薬師になれるね!」

「「「なわけないだろ!」」」


 国王は悪友に突っ込まれてシュンとしていた。

 きっと昔からこんな感じで仲が良いのだろう。

 今ではほんわかしている国王を支えているぐらいだからな。


「何ができるかは雑草の種類で異なりますが、これで今売られているポーションよりも高性能のポーションが完成します」

「それだと不正疑惑というよりは、ただ新しいポーションの作り方を開発しただけではないか?」

「はぁ!?」


 宰相の言葉に国王は驚いていた。

 視線が国王に向くと、そっぽ向きだした。


「ぼっ……僕は気づいていたぞ!」


 本当にこの国は宰相がいたことで、成り立っていたのだろう。


「では売られているポーションとこのポーションの違いはなんなのか」

「色が違うぞ!」

「その通りです。中に不純物が入っているかどうかで変わってきます」


 拗ねている国王を褒めると、嬉しそうにドヤ顔していた。


「さすがあいつの息子だな……」

「陛下の扱い方をよくわかってるな」


 きっと俺の父も国王を煽てながら、接していたのだろう。

 俺は鞄からもう一つ水が入った瓶を取り出す。


「ここにさっきのポーションを数滴入れてもらってもいいですか?」


 俺の実験教室はまだ終わらない。

 水が入った瓶に、さっき作ったばかりのポーションを入れてもらう。


「あとは軽く振ってみてください」


 俺の言葉に国王は水の入った瓶を振っていく。

 少しずつ水の色がポーションと混ざることで、ほのかに青みがかった輝きを放つ。


「わぁー、すごいね!」

「これが一般的なポーションです。飲んでみてもらってもいいですか?」

「では、私が毒味します」

「ムッ……」


 国王から奪い取るようにエレンドラの父はポーションを手に取る。

 自ら毒かもしれないポーションを飲む方が危険なのに、国王はポーションを取られて再び拗ねているようだ。


「味もマナの回復量も薬師ギルドが売っているものと変わらないですね」

「そういうことか……」


 エレンドラの父と宰相はお互いに目を合わせて頷いている。

 俺が不正疑惑と言っていた意味が伝わったのだろう。


「えっ、どういうことなんだ?」


 だが、一人だけまだわかっていない者もおり、俺は続けて説明を加える。


「高性能のポーションを作るのに必要なのは、スキル【薬師】と【錬金術師】だけです。ただ、現在売られているのは、この水で薄めたポーションだけです」

「そうだな……」

「二つのギルドを同じ公爵家が管載しているのに、制造方法を知らないとでも思いますか?」


 国王はようやくその意図に気付いたのだろう。

 大きく目を見開いていた。


「意図的に、効能の低いポーションしか出回らないよう管理しているのか」

「そうです。それによって利益を悪くしないようにできるだけでなく、自分たちを脅かす存在も排除できますからね」

「つまり……」

「その排除される可能性がある俺とルーカス、リシアを保護してもらうことが本当の目的です」


 俺達の目的は新しいポーションを発表することではない。

 一番の目的は自分たちの身を守ることだ。

 俺達は国王に向かい頭を下げる。

 国王の一言によって、俺達の今後の運命が決まるだろう。


「いいよー! 守る守る!」

「「「陛下!」」」


 返ってきたのは、どこか気の抜けた返事だった。

 呆気ない国王の返事に俺の気が抜けてしまう。

 あまり話さないセリオスの父すら、国王に物申すぐらいだ。


「そもそもエルネストの息子の頼みだ。僕が断るはずないじゃないか! エルネストは僕にとってヒーロー……いや、神様みたいな人だよ。その息子ってもはや神様と同じだろ」


 俺の父の名前はエルネスト・ルクシードだ。

 国王にとって父はヒーローのような存在なのか?

 それにしても、どこか国王が俺の近場にいるやつと似たような香りが漂っている。


「国王様もお分かりになりますか! メディスン様はまさに神のように神々しいお方です!」

「おお、そなたもルクシード家に魅了された一人か」

「はい! これからお互いの神についてともに讃え合いましょう!」

「おお、それは――」

「「落ち着けよ!」」


 俺はルーカスを宰相が国王を止めた。

 宰相の顔に苦労の色が滲み出ている。

 この場に父がいなくて本当に良かったと思う。


「話の内容はわかった。後日、薬師ギルドと錬金術師ギルドからも聴取して、君達に手を出せないように方法を考えよう」

「ありがとうございます」


 俺達の目的は無事に終えることができた。

 ああ、これで処刑ルートから一歩遠ざかるかと思うと、自然に笑みが溢れてしまう。


「ぐへへへへ」


 すぐに気付いて口元を押さえたが、時すでに遅かった。


「うおおおおおお! エルネストと同じく、なんと神々しい!」

「ああ、メディスン様!」


 国王とルーカスは俺の目の前で跪き、祈り始めた。

 本当にこの人は国王なんだろうか……。


「やっぱり、親子そろって不気味だな……」

「あいつが娘婿とか、絶対に嫌だ……」

「気持ち悪い……」


 そして、父の笑顔に見慣れていそうな悪友たちにまで距離を置かれてしまった。

 それにしても、普段あまり話さないセリオスの父の一言が、一番強烈で大ダメージを受けた。

 今すぐにルミナス公爵家の屋敷から出ていった方が良さそうだな。

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