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83.薬師、関係性が気になる

「これで妻に怒られるずに済むな」

「ははは、私も妻に魔法はすごいのにそっちは無能ねって言われ続けたからな……」 


 宰相とエレンドラの父からは、どこか哀愁が漂っている。

 過去のことでも思い出しているのだろう。

 それにしても、娘の前で話す内容なんだろうか。

 ここはその辺の飲み屋ではなく、ちゃんとした謁見の間だぞ。


「ななな、急に何をするのよ!?」

「いや、さすがにかわいそう(・・・・・)じゃん!」


 俺はエレンドラに聞こえないように、耳を塞いでおいた。

 ノクスとステラにいつもしているが、これが一番効果的だし、聞いてはいけないものだと本人も判断できる。


「あわわわ……かわいい(・・・・)じゃんって……」


 ん?

 俺は〝可哀想〟って言ったつもりなのに、〝可愛い〟って聞こえたのか?

 エレンドラは真っ赤な顔をしているが、俺の背後にも真っ赤な顔をして、立っている人がいそうだ。


「己……私の娘に何てことを……」

「まぁまぁ、彼は貴族の男性達にとったら救世主……いや、全世界の男性に対しての救世主だ」


 父親世代の男性達が楽しそうにワイワイと話していたのに、普段の姿に戻ったようだ。

 まさかライフタブレットがここまで男性から評価を受けるとは思いもしなかった。

 さっきまで警戒心が強かった宰相すら、穏やかにニコニコと笑っている。

 きっと宰相も色々悩むところがあったのだろう。


「君達が作る回復薬がすごいことは理解した。だが、なぜ薬師ギルドを通さずに直接謁見をすることにしたのか聞いてもいいかね?」


 宰相は別の理由があると気づいていたようだ。

 気づいていないのは国王だけだろう。

 今もライフタブレットを興味深そうに見ている。


「陛下!」

「ああ、すまない」


 宰相に呼ばれてビクッとしている姿を見ると、思ったよりも国王は人間味がある人なんだろう。

 さっきまで感じていた威圧感もなく、ただのほんわかしたおじさんだ。


「それで我に会いに来た本当の要件を話しなさい」


 急にキリッとした表情に戻ると、俺に謁見を申し出た理由を尋ねてきた。

 ただ、チラチラと手元を見ては、口がムッとしているところを見ると、今もライフタブレットが気になるのだろう。


「薬師ギルド及び錬金術師ギルドの不正疑惑について説明に参りました」


 薬師ギルドや錬金術師ギルドの不正疑惑について話した途端、周囲が凍てつくほど空気がピリついた。

 普通に考えれば誰かわからないやつが、公爵家が管轄する有名なギルドの不正疑惑と言われたら、警戒されるのは俺の方だからな。


「ああ、そうか……なんどうぁって!?」


 国王はその場で立ち上がると、急いですぐに玉座に座る。

 どこかあたふたとしていた。

 宰相が見ていることに気づいたのだろう。

 この国って国王よりも宰相の方が、権力を握っていそうだな。


「その話は本当なのか? 君の戯言では――」

「信じたくなければ国が衰退するだけなので問題ないです」


 俺は持ってきた回復薬を鞄に入れて、帰る準備をする。

 あんなことを言って大丈夫なのかと、内心は心臓が飛び出そうなほどバクバクしている。

 ちなみにエレンドラからは、ギルドの不正疑惑について聞く意思がないと判断できたら、帰る素振りをしろと事前に言われていた。

 

「やっぱりそうなのか……」

「さすがあいつの息子って感じだな」


 宰相とエレンドラの父はお互いに顔を見合わせて笑っている。


「陛下も普段通りで大丈夫ですよ」

「ふぅー、そうかそうか。いやー、中々演じるのは大変だからな」


 国王は飛ぶように玉座から立ち上がると、嬉しそうにこっちに向かってきた。

 あれが本当の姿なんだろうか。

 本当に可愛らしいおじさんにしか見えない。


「お父さんは元気かな? あいつも王都に来ているのか?」

「父ですか?」


 俺の言葉に国王はペコペコと何度も頷いていた。

 まるで首振り人形のようだ。


「「はぁー」」


 宰相とエレンドラの父からため息が聞こえる。


「私達は学園時代の同級生なんだ」

「同級生ですか?」

「悪友というのか……」


 宰相はどうやって伝えれば良いのか考えているようだ。

 ここには国王、宰相、エレンドラの父、セリオスの父がいる。

 俺の父以外はかなり国の重鎮のはずだ。

 そんな人達と父は仲が良かったのだろうか。


「神さ――」


 国王が話そうとした瞬間、宰相は口を塞いだ。

 ギロリと睨む姿に、ほんわかした国王の額から大量の冷や汗が流れている。


「ととと、とりあえず、仲が良いってことだね。だから気にせず話してみなさい」


 父やここにいる人達とは何かあるようだ。

 ただ、そこまで問題があるような気もしないため、国王の言葉をそのまま信じて、ギルドの不正疑惑について話すことにした。

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