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82.薬師、奥様を心配する

「本日は新たな回復薬の説明に参りました」


 俺は用意してある回復タブレットとルーカスが作っている回復ポーションを取り出す。

 回復薬は液体で量が多いのが常識なので、固形と小瓶に入った少量のポーションに視線がすぐに集まった。

 ただ、見たこともない回復薬にこの場にいる国王を含め、側近達は不思議そうな顔をしていた。


「これが回復薬なのか?」


 特にエレンドラの父であるウィズロー公爵家現当主が興味深そうに見ている。

 成分鑑定の実験をした時には、ウィズロー公爵家からたくさんのポーションを持ってきてもらったからな。


「それで今あるポーションと何が違うんだ?」

「はい。ここにあるポーションは今までの回復薬とは桁違いの効能を持っています」

「なに!?」


 国王を含めた側近達は顔を見合わせている。

 今まで流通しているポーションは、それだけ効能が低かったからな。


「それならなぜ、薬師ギルドを通してこなかったんだ?」


 宰相はやはりこの国の頭脳と言われているだけある。

 すぐに俺達が個別に来た理由が気になるようだ。


「まずは私が飲んでみてもよろしいですか?」


 魔法師であるエレンドラの父は今すぐにでもポーションが気になるのだろう。


「これはマナタブレットとマナポーションです」


 俺は回復薬を手渡した。

 色々な角度から、それが問題ないのか確かめている。


「味の問題もあるため、マナポーションを先に飲んだ方が良いと思います」

「わかった」


 マナポーションの蓋を開けると、あまりの匂いに顔を顰める。

 ただ草を潰したような匂いがするからな。

 エレンドラの父はゆっくり口に入れていく。


「うっ……」


 ルーカスが作るポーションは俺のタブレットと違って、薬の味が強く薬草感が残っている。

 ただ、その効能の高さに目を大きく見開いていた。


「ウィズロー公爵どうだ?」

「今までの回復薬より2倍……いや、3倍以上の回復力があると思います」

「ふむ……。それは薬師ギルドとともに我が国が発展していいではないか」


 この反応からして新しい回復薬は受け入れられそうだ。

 ただ、国王はいまだに薬師ギルド通さずに、俺達が直接謁見してきていることに何も思わないのだろう。

 宰相は何も話すことなく考え込んでいる。


「では、次にこちらの回復薬を食べてみてください」


 初めて見る形の回復タブレットを恐る恐る口に入れた。


「んっ……なんだこれ……」


 苦味がないため、ポーションとの味の違いに驚いているのだろう。

 エレンドラの父は俺のもとへ近づくと、肩に手を置いた。

 その手はなぜか震えている。


「どうかし――」

「ありがとう。君がいてくれたおかげで、娘の命が助かった」


 ポタポタと流れ出る涙に俺は戸惑いを隠せない。

 回復タブレットがあることで、エレンドラの命がなぜ助かるのか俺にはわからない。

 首を傾げていると、エレンドラの父は国王に向かって堂々と宣言した。


「陛下、この者が作る回復薬は数々の命を助けます。今食べた回復薬は魔力の器をわずかに広げます」


 その言葉に周囲はざわざわとする。

 マナタブレットはたしかに魔力の器を広げる効果がある。

 それは製成するときの説明にも書いてあるからな。


「それとエレンドラ……娘さんと何か関係あるんですか?」


 エレンドラの名前を呼ぼうとしたら、少し睨まれてしまった。

 思ったよりも娘思いの父のようだ。


「エレンドラのスキル【賢者】は魔法を使うたびに、体が若返っていくという副作用がある」


 エレンドラの父の言葉に、エレンドラは頷いていた。

 だからゲームに出てくるエレンドラと今の姿が異なり、ロリ巨乳と呼ばれていたのか。


「んっ……賢者って……」


 俺は身近にいた賢者の存在を忘れていた。

 たしか以前、ステラのスキルが賢者と聞いたことがある。

 ノクスからもステラを「救ってくれてありがとう」って言われたことがあったが、意味がわからなかった。

 とりあえず、可愛い弟妹を抱きしめた記憶が残っている。


「他にも何か回復薬はあるか?」

「あー、ライフポーションのタブレットもありますが、こちらの方が少し厄介でして……」


 俺はその場でライフタブレットを製成する。


「えっ……」

「あっ……やばっ!」


 俺とルーカスが事前に回復薬を準備をするのには理由があった。

 それは俺の回復タブレットの製成の仕方が特殊だったからだ。


「何もないところから出てくるのか!?」


 エレンドラの父は俺の肩を掴み揺さぶってくる。

 その目が少年のようにキラキラと光っていた。


「お父様、私のメディスンを乱暴に扱わないで」

()の……?」


 段々と肩が痛くなってきた。

 本当にこの人は魔法師なんだろうか。

 俺の肩はミシミシと言っているし、キラキラした目が今は獲物を捕らえようとする目に変わっている。


 なくなっていくHPを回復するために、ライフタブレットを口に入れる。


「それでそのライフタブレットってやつにはどんな効果があるんですか?」


 今度は話の続きが気になったのか宰相が近づいてきた。

 ただ、さすがにエレンドラがいる前では言いにくいのもある。


「少し耳を近づけてもらってもよろしいでしょうか?」


 宰相は俺の口元に耳を近づける。

 それに紛れるようにエレンドラの父が耳を傾けた。

 やはり気にはなってはいるようだ。


「元気になるんです……」

「ん? ライフポーションは元気になるもんだぞ」


 やはりこれだけでは伝わらないようだ。

 俺はエレンドラの方へ視線を移す。

 聞こえていないのか確認してから、今度は具体的に伝えることにした。


「あのー、一緒に夜の方も元気になるようで、我が領地の騎士団長が飲みすぎて、奥様を朝まで抱き潰した挙句、その日一日中動けなくするほど元気になるそうです」


 二人から息を呑む音が聞こえてきた。

 たしかにエレンドラのような娘がいたら、年齢的には元気がなくなる頃合いだろう。

 それに仕事のポジション的にはストレスが溜まって、体に異変を直接感じるはずだ。


「「今すぐに取引をしよう!」」


 二人は俺の手を強く握って嬉しそうに微笑んでいた。

 どうやら俺の回復タブレットは、本来とは異なるところに需要があるようだ。

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