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73.薬師、新しいエッセンスを見つける

「なぜ、お前がいる?」

「メディスン様がいるところにクレイディーありって言いますよ」


 俺を守るように現れたのはクレイディーだった。

 どこにいたのかはわからないが、ピンチになったら、駆けつけてくれる。

 さすが俺の護衛騎士だ。


「いや、そんなことわざみたいなこと知らねーよ!」

「はぁ!? メディスン様のツッコミ……最高です!」

「おおおおい! 急に倒れてくるなよ!」


 どこかで頭をぶつけたのか、鼻血を垂らして俺の上に倒れてくる。

 すぐに脈拍を測るが、特に問題はなさそうだ。


「そういえば、聖女は?」


 俺の言葉にクレイディーは深刻な顔をしている。

 教会が崩れる時には俺と聖女は真ん中にいた。

 逃げ切る……いや、俺が巻き込んでしまった。


「メディスン様に触れていた忌々しいやつは、あそこに放り投げました」


 クレイディーが指をさしていた方に目を向けると、遠くの方で聖女は倒れていた。

 ただ、どこか様子がおかしい。


「この欲望の塊め! 教会を作り替えたばかりなのに、また壊したのか!」


 聖女も気絶しているのか、教会に入ってきたお婆さんに往復ビンタをされていた。

 教会の人達は回復魔法が使えるため、多少の怪我は問題ないという認識のようだ。


「メディスン大丈夫か?」

「まさか教会が手抜き工事をしているなんてね」

「手抜き工事?」

「ああ、聖国の元聖女が現聖女に改装を任せたら、こうなっていたらしい」


 今聖女に往復ビンタをしているのは、元聖女らしい。

 今回王都に来ている目的は、各地の教会がちゃんと機能しているかの確認のようだ。

 まさか俺の笑った時と欠陥工事で脆くなった教会の崩れる時が重なるとは、誰も思わなかっただろう。


「兄さん、怪我していない?」

「だいじょーぶ?」


 ノクスとステラも心配しているようだ。

 ただ、さっき逃げられた時の心の傷は癒えていないぞ。


「兄貴、早くこの変態騎士から離れた方がいいですよ」

「おい、ただの薬師の分際で何を言うんだ」

「変態なのは変わりないですよね? メディスン様をずっと監視していたくせに!」

「監視? ふん、何を言っている。視姦だ!」


 どうやらクレイディーとルーカスは仲が良いようだ。

 ルーカスを助けたのもクレイディーだから、二人にしか分かち合えない友情があるのだろう。


「今日はポーションの材料だけ買って帰ろうか」

「串焼きも買う?」

「ああ、ついでに買って行こうか」


 特に教会ですることもなかった俺達は帰ることにした。

 普段と変わらないリシアの串焼き愛が、どこかほっと安心させてくれる。

 聖女に関わると碌なことがなかったからな。


「それでポーションを作るのに、何がいるのか知ってる?」

「ポーションの材料? 材料はその辺の雑草で大丈夫だよ?」

「へっ?」


 リシアの言葉に驚きを隠せなかった。

 ポーションを作るには、決まったエッセンスや魔力水が必要だったはず。

 成分鑑定をして、それが明確になったはずだ。

 エッセンスは薬草から手に入りそうだが、ルーカスが作るポーションは根本的に作り方が違うのだろうか。


「ここに雑草があるからこれでいいよ!」 


 リシアは雑草を手に取ると、スキルを発動させた。


「はい! これがポーションの素だよ!」


 手渡されたのは粉末になった雑草だった。

 一瞬で葉を乾燥させて、砕いたのだろうか。

 渡された粉末が何かはわからないが、とりあえず袋に保存しておいた。


「はやく串焼きを買いにいこ!」


 リシアに連れられ、串焼きを買うことになった。

 道中も雑草から作るポーションのことで、頭の中がいっぱいになっていた。

 あの雑草を使って、どうやってポーションを作るのだろうか。

 リシアのスキル【錬金術】が関わっているのは確かだ。


「おっちゃん! 串焼き30本!」

「あっ、リシアか! サンキューな!」


 以前露店で串焼きを買ったおじさんのところで買うことになった。

 リシアはここの串焼きが一番好きなんだろう。

 気づいた時には大量に串焼きを買わされている自分がいた。


「雑草と薬草が同じ成分ってことか? ってことは錬金術のスキルの中に抽出が――」

「兄さん、食べないの?」

「ああ、すまない」


 ずっと考えごとをしていたら、ノクスに心配されてしまった。

 それだけ回復薬の実験を繰り返している俺にとって、ルーカス達が作るポーションが不思議だった。


「毎日串焼きばかりで飽きないか?」

「串焼きはいつでも美味しいよ?」


 噴水の前で並んで串焼きを頬張る。

 ちなみにクレイディーは、またどこかに姿を消していた。

 あいつは本当に護衛騎士なんだろうか。


「私は毎日メディスンを見てても飽きないわよ?」

「それとこれとは話が違うんじゃないのか?」

「それにこういうのも新鮮でいいわね」

「子どもの時以来だな……」


 貴族が平民街で串焼きを食べることは基本しない。

 セリオスやエレンドラにとったら、平民街で何かするのは馴染みがないのだろう。


「それでメディスンはずっと何を考えていたんだ?」

「どうやって雑草からポーションを作っているのか気になってな……。ポーションを作るにはエッセンスが必要だけど、雑草にはエッセンスが含まれていないはず」


 試しに雑草から抽出をしてみたが、どちらのエッセンスも出てこなかった。

 俺はリシアがくれた雑草の粉末を抽出することにした。


【抽出結果】


 雑草の粉末(アルカナダスト)→エリクサーエッセンス(微量)


 エリクサーエッセンスという、明らかに万能薬の材料になりそうな成分が抽出された。

 ちなみにエリクサーエッセンスからは、さらに抽出を繰り返すと、ライフエッセンスとマナエッセンスが出てきた。


「錬金術が違う成分に変えているってことか……」

「なら今までポーションが出回っていなかったのは――」


 俺達は息を呑んだ。

 雑草にエッセンスが含まれているなら、ポーションは大量生産できていたはず。

 それに薬師ギルドと錬金術師ギルドが、同じ公爵家が管轄しているとなれば、その事実を知らないはずがない。

 益々どちらのギルドも怪しさを感じる。


「こんなところでルミナス公爵家の嫡子とウィズロー公爵家の令嬢が密会か?」

「「カイン!?」」


 声がした方へ目を向けると、キリッとしたシャープな目に顔があっさりとした男性が立っていた。

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