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68.薬師、寸劇をする

 ルミナス公爵家にルーカスとリシアを連れて帰ると、ラナ達を中心に面倒を見てもらうことにした。

 ノクスやステラだと、リシアと年齢も近いから話やすいだろうと思った選択だ。

 その間に、俺はクレイディーから事情聴取をする。


「それで何があったんだ?」

「ああ……メディスン様……」


 ただ、ずっと俺に熱い視線を送るだけで話そうとしない。


「お前、大丈夫か?」

「ああ……なんて幸せ者なんだ……」


 一度強く頬を叩いてからずっとこの状態だ。

 屋敷に戻ってくる時も、上の空で全く俺の話が入っていない。

 まるで父のように、精神魔法にでもかかっているようだ。

 いや、クレイディーは昔から精神がおかしかったから、あまり変わりはしないか。


「メディスン様からの浄化の一撃があれば思い出せるかもしれないです」

「くっ、やはり精神魔法め!」


 きっと精神魔法の影響で意識が曖昧なんだろう。

 

「クレイディー、すまないな」


 俺は大きく振りかぶり、もう一度頬を強く叩いてみた。


「ああん! もっとです! あと少しで思い出せそうです!」

「あー、すまないな」


 まだまだ足りないようだ。

 俺はクレイディーに謝りながらも、手を止めることはない。


「ぐへへへへ」


 むしろ悪役らしさが出てきたのか、ちょっと楽しくなってきた。


「ビンタ一つでここまで心が浄化されるとは……メディスン様、私はまだまだ足りません!」

「吐け……早く吐くんだ!」


 何度も叩くと、次第にクレイディーの頬は赤く腫れていく。


「はぁ……はぁ……これで話す気になったか!」

「ああ、これほどまでに叩いてくださるなんて……私をこんなにも見てくださっているのですね!」


 いくら叩いても精神魔法は中々解けないようだ。

 そんな俺達を離れたところで、セリオスとエレンドラは事情聴取の様子を見ていた。


「何を見せられているんだ……? なぁ、本当にあいつを夫にするのか?」

「いや……少し私も考えた方が良いのかしら……」

「精神魔法の反応も感じるか?」 

「いや……全く……」


 どうやら物理的な距離だけではなく、心の距離も開いているようだ。


「ふふふ、これでメディスン様は私だけのものだ」

「まだ足りないのか?」


 俺は再びクレイディーの頬を叩く。


「かい……かん……」


 クレイディーは小さな声で呟いたあと、そのまま気絶するように倒れていく。


「おおお、おい!?」


 どうやら叩きすぎたようだ。

 俺は急いで中級ライフタブレットを製成して口の中に入れようとするが、中々口が開かない。


「おい、開けろよ!」

「グヌヌヌ」

 

 なぜか歯を食いしばっているような気がする。

 とりあえず、鼻を摘んでしばらく待ってみる。


「プハッ!?」


 苦しくなったのか口を大きく開いた。

 やっぱり起きていたようだ。

 護衛騎士がそんなにひ弱なはずがない。

 口を開けたタイミングで強制的に、回復タブレットを飲み込ませる。

 こういう時にポーションと違って、回復タブレットは飲ませづらいな。


「これで……光ってる!?」


 まるで美少女戦士が変身するような輝きだ。

 クレイディーの体が輝くと、すぐに頬の腫れも消えて、筋肉にハリが出ているような気がする。

 どうやら下級ライフタブレットを過剰摂取した時のような反応が、顕著に現れているのかもしれない。

 ただ、毎回こんなに光っていたら、目がチカチカして近所迷惑になるだろう。


「チッ……せっかくの浄化が……」

「クレイディー?」

「はぁ! メディスン様、助けていただきありがとうございます!」


 やっと精神魔法が解けたのだろう。

 片膝立ちで姿勢を整えた姿は、まるで本物の騎士のようだ。

 いや、クレイディーは元々本物の騎士だったのか。


「それで何があったんだ?」

「私が駆けつけた時には、集団でルーカス達の家を取り囲んでいました。隙をついて天井から忍び込んで、二人を救出しました」


 クレイディーって騎士じゃなくて忍者だったのか?

 天井から忍び込んで、二人を抱え込んで逃げたってことだよな。


「そこに薬師ギルドが関わっている可能性はあるのか?」

「そこまではわかりません。ただ、全体的に身なりが整っていたので、平民の中でも上層の者か、あるいは貴族が関与している可能性は高いかと思われます」


 何か直接的に情報が得られるものはないようだ。

 しばらくは同じことが起きないように、気をつけて行動しないといけない。


「それでメディスン様にお願いしたいことが……」

「どうした?」

「私にこの件の犯人を探させていただけませんか? 孤児を助けるためにも、貧民街へは頻繁に出入りをするつもりなので……」


 少しずつクレイディーの声は小さくなっていく。

 確かにセリオス達に孤児を助けようとしていることを聞かれるのは良くない。

 王都にいる人達を自身の領地に引き込もうとしているからな。


「それに伴って回復薬を作ってもらうことはできないでしょうか?」

「ん? 回復タブレットか?」


 俺は回復タブレットを大量に作って、袋に入れる。

 前に比べてマナの容量も増えて、大量生産が可能になってきた。

 クレイディーはそれを受け取ると、すぐにその場を後にした。

 しばらくはクレイディーに犯人を探らせておこう。

 ただ、また鼻の穴に回復薬を詰めていたけど、やっぱり効果があるのだろうか。


「あの回復薬ってあんなに簡単にできるの?」

「メディスンを保護しないといけない理由がわかっただろ?」

「まるで絶滅危惧種ね。それよりも私達は何を見せられたの?」

「ああ、あいつら変わっているからな」


 どうやら俺は絶滅危惧種の変わっているやつ認定をされているようだ。

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