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63.薬師、護衛騎士の気持ちを知る

「やはり僕のポーションは売り物にはなりませんよね?」

「いや、むしろ普通に売っているポーションよりは良さそうだったぞ」


 俺の予想ではルーカスが作るポーションの成分とお店で売っているポーションの成分は違うと思っていた。

 それに明らかに効能や持ち運びやすさもルーカスが作ったポーションに分配が上がるだろう。

 ゲームの世界でも、今みたいに何リットルも飲む物ではなかったからな。


 勇者パーティーに入れるだけの実力は、すでにこの時にはあったのだろう。

 ただ、本当にこのままルーカスが薬師ギルドに所属しても良いのかと考えさせられる。


「今のルーカス(・・・・)って社畜ぽくないもんな」

「社畜ってなんですか?」


 ゲームに出てくるルーカスはいかにも科学者っぽく、目の下には常にクマがあるのがデフォルトだ。

 めんどくさそうにくしゃくしゃになった髪を掻く気怠さと、妹に頼られたら必ず従うキャラクターだったはず。


 今はどちらかと言えば、そこら辺にいる普通の青少年って感じだ。

 きっと薬師ギルドに所属したら、奴隷のように働かされて、社畜になった結果がゲームの中の姿なんだろう。


「ポーションの作り方って見せてもらうことはできますか?」

「すみません。それはできないです」


 俺の言葉にルーカスは少し警戒心を強める。

 さすがに俺が何者かわからない段階だと難しいよな。


「それよりも名前って教えましたっけ?」

「いやー……あっ、さっき妹さんに聞きましたよ」


 俺はゲームをしていたから、ルーカスとリシアのことは知っている。

 言われるまでお互いに自己紹介をすることを忘れていた。

 だから警戒心が強かったのだろう。


「俺はメディスンです」

「えーっと、ルーカスと妹のリシアです」


 リシアは話に興味がないのか、まだ串焼きを頬張っている。

 しばらくは通って、関係を築いてから今後のことを考えよう。

 このまま薬師ギルドに所属した方が、ひょっとしたら二人のためになるかもしれないからね。


「では日を改めてまた来ますね」

「今日はご迷惑をおかけしました。お礼にこれを持っていってください」


 ルーカスは串焼きのお礼として、俺にポーションを一つ手渡してきた。

 ポーション専門店で見たものより効能が良いなら、きっと串焼きよりも高く売れるだろう。

 きっと町の人もそこまで、このポーションの価値をわかっていないはずだ。

 俺はそのままルーカスの家を後にした。


「メディスン様、あの者をどうするつもりですか?」

「んー、俺としては孤児にしておくのはもったいないなーって……」


 チラッと隣にいたクレイディーを見ると、目から滝のように涙がこぼれ落ちていた。

 汗かと思ったが、本当に目から流れ出ているようだ。


「メディスン様はやはり私達の神様です」

「また大袈裟な――」

「大袈裟ではありません! メディスン様がいなければ、私達若手騎士は騎士として戦うことも誇ることもできませんでした。ただの孤児として情けで居させられていた私達を、騎士としての道に導いてくださったのです!」


 まさかクレイディーがそんなことを思っているとは思いもしなかった。

 あの時クレイディーが俺を捕まえたのも、自分の価値を証明したい一心での行動だったのだろう。

 出会った頃の若手騎士達は鍛えていても、細身で剣を振るうのですらやっとな体をしていた。

 父が選んだ政略は、命を繋ぐための手段ではあったものの、若手騎士達にとっては、力もなくただ居場所を与えられ、無為に時間を過ごしているだけのように感じていたのだろう。


 俺が少しでも役に立ったと直接言われたら、自然と笑みが溢れてしまう。


「ぐへへへへ」

「やはりメディスン様はその顔が一番輝いております」


 笑うのを我慢していたが、クレイディーの前では笑っても良さそうだ。

 ただ、笑うたびにクレイディーが息を荒げて、瞳から熱が伝わってくる。

 俺の体のためにクレイディーの前で笑うのはやめておこう。


「クレイディー、お前に一つだけ王都にいる間の命令を与える」

「神託ですか?」


 神託……?

 まぁ、俺を神みたいなやつだと思っているなら、神託でも問題はないだろう。


「王都にいる孤児で救えそうなやつがいたら、助けてやってくれ。お金は勝手に使っていいぞ。あとはルーカスとシリアも守ってやれ」


 俺は金貨を袋ごと渡す。

 家を借りるために両親からお金を渡されたが、俺達はしばらくセリオスの家にお世話になるつもりだ。

 お金は少ながらず、回復タブレットで稼げる予定だしな。


「ありがたき神命、死ぬ気で全うします」


 俺の方でも一度ルーカス達だけでも、セリオスに保護してもらえないか確認してみることにした。

 クレイディーは頭を下げると、すぐに行動に移した。

 ただ、路地裏で一人にされると、どこか心細かった。

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