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55.薬師、信者にビビる

 目の前の火の玉にどうしようか迷っていると、スッと誰かが目の前に現れた。

 さすがセリオ――。


「メディスン様にこんなしょぼくれた光では足りません」

「お前かよ!」


 突然現れたのはクレイディーだった。

 さすがにセリオスでも俺を守ることはしないか。

 クレイディーは大きく剣を振り下ろした。

 そのまま形を保てなかったのか、火の玉は真っ二つになり消滅していく。

 よし、身の安全も守られないなら、今すぐに屋敷を出るべきだな。

 命懸けで屋敷に滞在する理由もない。


「えっ……」

「ふぇ!?」


 セリオスとエレンドラは驚いて口を大きく開けたまま固まっていた。

 まさか魔法が剣で切れるとは思わなかったのだろう。

 大丈夫、俺も同じ気持ちだ。


「メディスン様にはもっと神々しい光がお似合いです。例えば最上級魔法のメテオレインが――」

「さすがにそんなのが近くにあったら俺が死ぬぞ」


 メテオレインってクリア後の裏ステージで遊んでいると、賢者がレベル70ぐらいで覚える魔法だ。

 

「その時は私が全力でお守りします」


 クレイディーなら本当に守ってくれそうだな。

 それにしても、クレイディーの成長に驚くばかりだ。

 俺と会うまでは、ただの細マッチョだったのにな……。


「それよりも俺と婚約ってどういうことですか?」

「しょうよ! しゅてらが、にいしゃまのおよめしゃんになるもん!」

「一番近くにいる騎士は僕だけどね」


 なぜかノクスとステラも張り合うように言い合いをしている。

 その姿に兄としては嬉しくなる。


「ぐへへへへ」

「「うわっ……」」


 ノクスやステラすらその場から遠ざかってしまった。

 まさかこんなところでニヤけてしまうとは思わなかった。

 ただ、エレンドラだけは違った。


「それで婚約はどうするのよ!」


 伊達に俺に対して、婚約者になれっていうだけのことはある。

 んっ……?

 これって状態異常系のスキルだったりするのか?

 今のところクレイディーとエレンドラは、俺の微笑みに耐性があるようだ。


「いや……俺には婚約を申し込まれた記憶がないんだが……」


 メディスンが学園に通っていた時の記憶はほとんど戻りつつある。

 それでもエレンドラに関する記憶はない。


「あれだけ部屋に行って、婚約を申し込んだじゃないの!」


 走馬灯の勢いで記憶が戻った時に、部屋で実験をしているところを映像のように見ている。

 ただ、そこにはエレンドラの姿はなかった気がする。


「なのにあんたは無視し続けたじゃないの!」

「兄さん、無視はダメだよ?」

「メッ!」


 可愛い弟妹に言われたら、謝らないといけない気がする。

 だけど、本当に記憶がないんだよな。

 きっとあの時のメディスンは自分のことが精一杯で、周りの声が聞こえていなかったのだろう。

 ずっと部屋にこもって実験をしていたからな。


「私がどれだけ婚約を申し込んだと思ってるのよ! 全部で1220回……いや、今ので1221回よ!」


 あれ……ひょっとしてクレイディーより危ないやつが、目の前に現れた気がするぞ。

 学園に通うのはおよそ5年間で、その間にも長期休暇が夏休みと冬休みのように2回ある。

 単純計算でも毎日1日1回は婚約を申し込んでいることになる。


「卒業パーティーも私との約束を破って、エスコートされることなく一人で行ったのよ……」

「兄さん、さすがに謝ろうよ……」

「あやまれりゅ、おにいしゃまがしゅき」


 ここは土下座ぐらいした方が良さそうだ。

 俺にプライドなんてないし、今は死なないようにするのに精一杯だ。


「メディスン様、お辞めください」


 だが、クレイディーに止められた。

 さすがに土下座はまずかったか?


「メディスン様へのお気持ちは回数や態度でどうにかなるわけではありません。単純にあの方の信仰心が足りないのです」


 あー、うちのクレイディーもエレンドラに負けていなかった。

 すぐに土下座をするべきだろう。

 俺は急いで床に座り頭を下げる。


「そうなのね。私は信仰心が足りなかったのね」

「へっ……?」

「そうです。一緒にメディスン教として祈りを捧げましょう」


 まさかクレイディーとエレンドラが意気投合するとは思いもしなかった。

 さっきまでバチバチしていたはずなのに、今では楽しそうに話している。


「「ははー!」」


 俺を超える勢いで、二人は頭を下げてきた。

 俺が額を地面につけているのに対し、二人とも完全に頬が地面についている。

 もはやそれは土下座を超えているような気がする。


「メディスン教の祈りはこの方法なんです」

「はい!」


 どうしたら良いのかわからず、セリオスの顔を見るがそっぽ向いて視線を合わせようとしない。

 ノクスやステラすら、何もなかったかのようにスープを飲んでいる。

 ああ、弟妹達は将来有望な大人になるだろう。


「俺は信者も婚約者もいらないからな!」


 怖くなった俺はすぐに大広間から逃げることにした。

 後ろを振り返ってはいけない。

 気づいたらやつらはいるからな。


「メディスン様、どちらにいか……」

「ぎぃやああああああああ!」


 俺の声はしばらく屋敷に響いていた。

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