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51.薬師、王都に向かう

 俺達はセリオスが王都へ帰る時に、一緒に向かうことになった。


「オークの肉は全て魔力を抽出したし、回復タブレットはできるだけ準備したから問題ないよな」


 それまでにやり残したことを俺はただひたすらこなしていく。

 社畜かと感じるほど、寝ずに作業を続けた。

 気づいた時には、倉庫に溢れんばかりのオークの肉と回復タブレットで埋め尽くされている。

 たまに倉庫近くでセリオスを見かけたが、後日倉庫から回復タブレットを盗もうとしていたことが若手騎士にバレて怒られていた。

 何でもこれを飲めば無限に戦えると呟いていたらしい。

 ゲームの中でも物理特化なキャラクターだったが、実物はかなり戦闘狂のようだ。

 それにしても若手騎士も倉庫の前で何をしていたのだろうか。


「お前達ちゃんと荷物は持ったか? 辛くなったら帰ってくるんだぞ?」

「パパのことは忘れても、ママのことは忘れないでね」

「うぇ!?」


 学園に行く時は一度も見送りに来たことはなかった。

 今にも泣きそうな顔で俺達を送り出そうとする両親を見て、メディスンはどう思うのだろうか。

 今となっては父が精神魔法にかかって、良かったのかもしれない。


「じゃあ、みなさん行きますよ」

「くっ……最後の時間まで邪魔をするのか……」


 魔物討伐の協力に来てくれたセリオスに対して、そんな扱いをして良いのだろうか。

 今年は問題なく無事に終わったが、来年も暖かくなったら魔物はやってくる。

 誰も手伝いに来なくなったら大変だ。


「ラナ、みんなをよろしくね」

「奥様、行ってきます」


 そば付きとしてラナも一緒に行くことになっていた。

 俺だけではなく、ノクスやステラとも仲が良いため適任だろう。


 俺達は馬車に荷物を置き、中に乗り込んでいく。

 チラッと振り返ると、両親は必死に泣かないように我慢して見ていた。

 あの鬼のような顔はどこに行ったのだろうか。


「なあなあ、ノクスとステラ少しいいか?」

「兄さん、どうしたの?」

「にゃーに?」


 俺は二人の耳元にコソコソと話しかける。

 お互いに顔を見合わせると小さく頷く。


「発車いたします」


 御者が馬に指示を出すと、馬車は少しずつ進んでいく。


「いくぞ!」

「ちょっ、危ないですよ!」

「今だけは許してください」


 俺達は立ち上がり窓を開ける。


「「「パパ! ママ! 行ってきます!」」」


 これが三人で企んでいたことだ。

 母は怒らせるとめんどくさそうだから、ママと呼んでいたが、父を未だに誰も〝パパ〟とは呼んでいなかった。

 それを常に羨ましそうな顔でこっちを見ていたのを知っている。


「いってら……えっ、今パパって言ってなかったか?」

「ふふふ、そうね」

「……っ、あぁ……うぁぁ……っ……! うああああああん!」


 父はその場で崩れ落ちて泣いていた。

 やはり相当強い精神魔法をかけられているようだ。

 あれだけであんなに泣き叫ぶとは、思いもしなかった。


「「「ぐへへへへ」」」


 俺達はお互いに顔を見合わせて喜んだ。

 だが、馬車の中は突然大きく揺れだす。


「くっ……お前()悪魔か!」


 どうやら俺の顔を見てセリオスが驚いたようだ。

 ノクスやステラの顔を見て驚くわけがない。

 二人とも可愛いからな。


 馬車を走らせながら、町の中を通っていく。

 どこも建物はボロボロになっているが、領民はみんな笑顔で作業をしている。


「おっ、変態の兄ちゃん! いってらっしゃい!」

「今度戻ってきた時はちゃんと綺麗にしておくからな!」

「行ってきます!」

「またねー!」


 町の人達から声をかけられる度に、手を振りながら返事をしていく。

 それだけ俺が領民達と関わってきた証拠だ。

 隣でステラも楽しそうに手を振っているが、その光景にセリオスとノクスは驚いていた。


「変態と呼ばれてるんですね……」

「兄さん、変態だったんだ……」


 おいおい、やっぱりそこに意識が向いているじゃないか。

 あれだけ変態って言わないようにしていたのにな。

 ついに弟にもバレてしまった。


「メディスンさまああああああ!」


 どうしようか悩んでいると、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 再び窓から顔を覗かせると、よく知った人物が馬に乗って走ってきた。

 俺はすぐに御者に声をかけて馬車を止めた。


「クレイディーどうしたんだ?」

「私を置いていくなんて……ご褒美ですか!?」


 セリオスにも迷惑をかけて申し訳ないが、このままだとさらに勘違いされそうな気がする。


「ここまで見送ってくれたのか?」

「何をおしゃってるんですか? 私は常にメディスン様のお側にいます」

「いや、それは遠慮――」

「私はメディスン教の第一会員ですからね! さぁ、王都に行きますよ!」


 クレイディーが馬車を誘導するかのように、先頭を走り出す。


「当主から話は聞いていないのですか? これからはクレイディーが、皆さんの専属護衛として同行することになりましたよ」


 どうやらクレイディーは俺達の専属護衛として、常に側にいることになったらしい。

 俺は何も聞いていないが、ノクスとステラも知らないようだ。


「相変わらず言葉足らずですね……」


 俺達の反応を見て、ラナは何かボソボソと呟いていた。

 王都に行っても、頭の逝かれたやつが一緒についてくるようだ。

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