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46.薬師、帰還する

 オークの上位種を討伐した俺達は、町の中に死体を集めていく。

 外に放置しておいたら、血の匂いを嗅ぎつけて、違う魔物をさらに引き寄せてしまう。


「メディスン様、そんなに落ち込まないでください……」

「みんな無事だったからよかっただろ?」

「オークキングってめちゃくちゃ高く売れるんだろよな……」


 処理をするとしても、オークは豚肉と味が似ているため、せっかくなら食料にした方が良いと考えていた。

 それなのに謎の毒物を合成したことで、オークキングは何も残さず消えてしまった。

 オークキングはBランク相当の魔物で、魔石と睾丸単体でも数家族が一年間暮らせるだけのお金になるらしい。

 それを聞いた瞬間、もう少し方法があったのではないかと考えてしまう。


「少しでも復興支援金にしたかったな……」


 地面にはいくつも穴が開き、瓦礫が散らばっている。

 中には家も破壊されて、住めるような状況ではない建物もたくさんある。

 町の人達に被害がなく、死者が出なかったのは幸いだ。

 若手騎士や冒険者も同じことを口を揃えていうが、貧乏なこの領地に復興するお金はあるのだろうか。

 ルクシード辺境伯家の一員としては、先のことを考えて行動しないといけないことを知った。


「「メディスン様…………」」


 周囲はすっかり真っ暗なのに、両隣からキラキラとした視線が飛んでくる。



「一生メディスン教の一員として付いていきます」

「ああ、俺達冒険者も今日からメディスン教だ。なぁ、お前ら!」


 隣にはクレイディーとギルドマスターが歩いているが、なぜこいつらはこんなに明るいのだろうか。

 落ち込む俺とは正反対に、周囲もワイワイと楽しんでいる。


「メディスン様、誰かがこちらに向かってます」


 生き残りのオークがいたのかと思い、すぐに周囲の人達も警戒を強める。

 屋敷の方から勢いよく走ってくる人影が見えた。


「兄さんは僕が守る!」

「しゅてらだもん!」

「お二人とも今は屋敷に戻って帰ってくるのを待ちましょう」


 走ってきたのはノクスとステラ、それにラナだった。

 二人が屋敷から飛び出してきたのか、必死にラナが止めようとしている。

 屋敷に何か問題があったのだろうか。


「そんなに急いでどうしたんだ?」

「兄さん……」

「おにいしゃま……」

「メディスン様……」


 そんな三人に声をかけるが、俺の顔を見て立ち止まった。

 目を見開き、驚いた顔をしている。

 まさか俺が死んだと思ったのか?

 たしかに戦う力はないからな。



「兄さんがいぎでだよおおおお」

「だがらおにいじゃまはしゅごいの」


 ノクスとステラは突撃する勢いで抱きついてきた。

 この状況に困惑してしまう。

 ステラは自ら手を繋ぐことはあっても、抱きついてくることはあまりなかった。

 それはノクスも同じで、しっかりもののノクスが鼻水と涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。


「「うえええええん!」」


 泣き止む様子のない二人の頭をゆっくり撫でる。

 それだけ心配をかけたのだろう。


「メディスン様のバカ! もう、カッコつけないでください……」


 うん……ラナにはバレていたようだ。

 今思えばいつもの俺らしくない行動は、メディスンの気持ちに引っ張られていたのかもしれない。

 ただ、大事な人達を守りたい気持ちは俺も同じだ。


「そろそろ離れたらどうだ?」

「「いやだ!」」


 ノクスとステラは俺にくっついて離れようとしない。

 鼻水か涙かわからないが、ズボンはベタベタに濡れている。

 そんな二人を抱きかかえる。


「うっ……重い……」

「兄さん、それは失礼だよ」

「おにいしゃま、じょしぇいにきらわれりゅ」


 二人を持ち上げるだけの力は、鍛えたほうが良さそうだ

 俺の言葉に涙で赤く腫れた顔は、不思議と元に戻っていく。


「まぁ、俺には婚約者はいないからな」


 確か婚約者もいないし、モテた記憶もない。

 ゲームの中のメディスンも確か独身……だったよね?

 むしろ、独り身じゃないと王子の殺害をしようとしないだろう。

 そんなことしたら、家族揃って処刑になりそうだからな。


「メディスン様、せっかくなら魔物討伐のお祝いをしてみるのはどうですか? ちょうどすき焼きもできた頃合いですし」

「ああ、それは良い案かもしれないな。メディスン様の活躍にみんなで宴だ!」


 冒険者は単にお酒が飲みたいのだろう。

 若手騎士も嬉しそうに声を上げているが、俺にそんな体力は残ってない。

 オークを食べられるようにするには、抽出で魔物特有の魔力を抜かないといけないからな。


「今は魔力が――」

「兄さん、宴ってなにやるの?」

「おいちいもの、たべれりゅ?」


 キラキラした瞳でノクスとステラに見られたら、兄として頑張らないわけにはいかない。

 回復タブレットを口いっぱいに入れる。

 頭痛はするし、全身が倦怠感に襲われている。

 それでもオークキングがいた時と比べれば、町の中は安全だからな。

 宴くらいやっても問題はないだろう。


「お前らすぐに宴の準備を始めろ!」

「「「「「イエッサアアアアアアア!」」」」」


 すぐに声をかけると、若手騎士と冒険者はオークを集めて屋敷に運んでいく。

 どうやら宴は屋敷でやるらしい。 

「中々子育てって難しいよな」

「知らない間に子ども達は成長していきますからね」

「やっぱりかっこいい姿を見せるべきか? 最近、騎士達がこぞって鍛えているらしいからな」

「あなたが鍛えてどうするんですか?」

「そりゃー、子ども達に〝きゃー、父様かっこいいです〟〝俺も父様みたいになりたい〟って言われたいに決まっている」


 どうやら私の夫は想像以上に何か大事なものが抜け落ちているようだ。

 今も服を脱いで、鍛え抜かれた体をどうやって見せるべきなのか確認している。


「それなら★とブクマを集めてきた方が喜ぶわよ?」

「えっ……そうなのか? 今すぐに捕まえてくる!」


 それだけ言って、夫は服を着ずにどこかへ行ってしまった。


「★とブクマを持っている人はここにいる……あっ、みなさん背後には注意してくださいね」


 ぜひ、背後に危険を感じたら今すぐに★とブクマの準備をしよう。

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