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106.薬師、嬉しい報告を聞く

 体の発光は翌日になれば収まっていた。

 動きにくい体も粗治療で、回復タブレットを爆食いしたら元に戻ってきた。

 ただ、【薬神】になった影響か、魔力が前よりもかなり多くなり、強引な回復薬の製成ができるようになった。


「これって……完全にエリクサーだよな……」


 無理やり作った回復薬の中で全ての状態異常を治し、死んだ人もすぐであれば生き返る回復薬ができてしまった。

 ゲームの中で出てくる体力全回復の蘇生薬のことだ。

 ただ、寿命による死はどうすることもできない仕様らしい。

 それができたら、完全に俺は人間ではなくなるのだろう。

 それでも、明らかに人間の道ではないところに足を突っ込んでいることを実感した。


「メディスン、準備はできたか?」

「あー、嫌だなー。もう絶対嫌な視線しかないよ」


 体調が良くなった俺は再び王城に呼ばれた。

 それも爵位授与式という理由だ。


「ははは、メディスンは立派な貴族となるんだ。しっかりするんだ」


 父は俺が叙爵するのが嬉しいのだろう。

 息子が立派な功績を残したってことだからな。

 まぁ、父が喜んでくれるなら良しとしよう。

 亡くなった元のメディスンも喜んでいるだろう。


 俺達は馬車に乗り込む。

 今回も家族全員で参加することになっている。

 聖女は屋敷でお留守番しているが、以前みたいな怠惰な姿は少し改善されていた。

 よほど聖国に帰りたくないのか、もしくは誰かに追い出すって言われたのだろうか。


「そういえば、みんなに発表しなきゃいけないことがあるのよ」

「ああ、そうだな」


 馬車の中で突然両親がニコニコしながら、話しかけてきた。

 普段のゾクゾクとした感じはなく、本当に嬉しそうに笑っている。


「何かあったの? 兄さん、また何かやらかした?」

「おにいしゃまは、ほんとにしゅてらがいないとだめね」


 ノクスとステラは何かあるごとに、俺が何か問題を起こすと思っているのだろうか。

 今まで問題に巻き込まれることはあっても、自ら問題を起こすことはなかったからな。

 きっと……たぶん!


「実はあなた達に弟か妹ができるの!」

「「……へっ!?」」


 ノクスとステラは同じような反応をして驚いていた。

 急に兄と姉になると言われたら、驚かないはずがない。


「あれ? メディスンは嬉しくないのか?」

「いや、嬉しいよ。ただ、何となく感じていたかな」


 正直なところ、倒れていた時に夢で見た少年のメディスンが生まれ変わったと思っている。

 最後には光になって、母のお腹の中に消えたからな。


「それに領地復興のために、回復タブレットをたくさん食べたでしょ?」

「ギクッ!?」


 あれだけ早く領地の復興ができたなら、それ相当の副作用が出ているはず。

 きっと二人しかいない間に、二人とも頑張ったのだろう。


「高齢出産になるんだから、ママもあまり動きすぎないようにね」

「あら、メディスン? 私を高齢者扱いするのね」


 母の後ろに真っ黒な炎が浮いているような気がする。

 さっきまで優しかったのに、女性の地雷はどこにあるのかわからない。

 それに高齢出産とは言ったが、高齢者の扱いをした記憶はない。

 俺はどうしようかとタジタジしていると、父は笑って俺を見ていた。


「あー、きっとママとパパの子だから、可愛いだろうね。さぁ、王城に着いたから降りるよ」


 ちょうど王城に着いた俺はすぐに馬車から降りた。

 普通は御者が扉を開けるが、そんなことは知ったこっちゃない。

 今は俺の命を守る方が先だからな。


「やっぱり兄さんがやらかしてるよね……」

「おにいしゃまは、おんなのきもちがわかりゃないのよ」

「それがメディスンの良いところでもあるからな」

「それとこれとは別よ」


 何を話しているのか気になるが、俺は振り向いてはいけないような気がした。

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