3 店員たちは
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マリンソフィアが寝静まった頃、1階では、『青薔薇服飾店』に勤め始めて早10年、25歳と仕事一筋なあまり婚期を逃してしまったクラリッサが、妹のように可愛がっている店長が勘当されて意気揚々と店にやってきたことに、とても酷い頭痛を覚えていた。
「ん?クラリッサ、どないしたの?顔色が悪いよ?」
1階の掃除当番に一緒についていたクラリッサの愛らしい後輩が、クラリッサの顔を覗き込む。
「なんでもないわ。ほら、早く寝るわよ。おチビちゃんの成長に関わっちゃう」
「えぇー、うち、愛らしいけん、大きゅうならんくてもええと思うんやけど………」
「だーめ。ほら、寝るよ」
可愛い後輩の手を引っ張りながら、クラリッサはお店の中で唯一マリンソフィアの生家について知る者として、店長に心の底からお仕えし、お店をなおのこと繁盛させるために決意を新たにするのだった。
「抜けてる店長をしっかり支えなくちゃ」
「にゃははっ、お料理下手なクラリッサには無理やろ」
ーーーがこっ、
そこそこいい音が鳴った後輩の額をじっと眺めながら、クラリッサは痛がる後輩を引きずって寝室のある6階へと向かうのだった。
「暴力反対!!」
うるさい後輩の声は、お客さまの帰ったお店の中にこだました。
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