自殺少女
お昼休みのチャイムが学校中に鳴り響き、クラスのみんながお昼の用意をするために各々動き出した雑音でわたしは目を覚ました。
「、、、うるっさ、、」
そういって何となく時計をみて初めてお昼休憩なのだと認識した私は教室から出ていつもの場所に向かった。
廊下を誰にも目をあわせないようにしながら歩き、階段を駆け下り、校舎裏にある外付けの鉄骨でできた非常階段を駆け上がっていく。
そうしてたどり着く場所は学校とか言うクソみたいな場所で唯一一人になれる場所、のはずだった。
それなのに。
「、、、何してんだ?」
いつも誰も立ち入らないはずの屋上に今日は先客が一人いた。
「あ、えっと、、、」
髪を三つ編みにし、大きなメガネをかけた背の低い女子だった。
上履きの色が同じだったから同学年だろう。
「そんなところにいたらあぶねぇだろ。」
その女子はいま上履きを脱いでフェンスの外側に立っていた。
このままだと落ちてしまいそうだ。
すると少女は言った。
「ここから飛び降りようと思って。」
「は?」
「もう生きる理由なんて無くなったから。」
「なんで?」
「、、、あなたはここに何しにきたの?」
「ひとりになりにきたんだよ。」
「そう、、、邪魔しちゃったんだね。今飛び降りるから。」
「ちょいちょいちょいちょい待ってって」
「、、、なに?」
「いや確かに一人にはなりたいけどよ。だからって目の前で飛び降りられても困るんだよ。」
「どうして、一人になれるのに嬉しくないの?」
「目の前で死なれて嬉しいやつなんていねぇだろうが、いいからこっち来い。あぶねぇだろ。」
「え、でも。」
「いいから来い。」
「、、、はい。」
少女は意外にも素直に応じてくれた。
「で?なんでだ?」
「なにが?」
「だから、何で飛び降りようとしたんだ?それで死んじまったらどうするんだよ」
「いや、死ぬつもりだったから。」
「は?なんで。」
「、、、生きる理由が、、、」
「その生きる理由って何だったんだ?」
「、、、友達がいなくなっちゃったから。」
「、、、もう会えないのか。」
「うん、生きてる限り会えない。だから会いに行こうと思ったんだ。」
「そのだちのこと、そんなに大切だったのか。」
「うん、私の唯一の親友だったんだ。」
「そうか。」
私はそういって深いため息をついた。
「わかってくれた?もう私行くね。」
少女はそういってまたフェンスの方へ向かおうとした。
「だああああ待て待て待て。話はわかったが納得はしていない。」
「、、、どうしてあなたが納得する必要があるの?」
「あるに決まってるだろ?普通に目の前で死なれたらトラウマもんだぞ?お前は私にそんなトラウマを植え付けることに罪悪感とか覚えねぇのか?」
「、、、知らないよそんなこと、あの子以外のことなんてどうでもいい。」
「自己中にも程があるだろそれは、そもそも死んだって天国にいくか地獄に行くかもわかんねぇじゃねぇか。ていうか自殺しようとしてる時点で大体地獄行きだと思うぞ?お前の友達はきっといい奴だったんだろうから天国にいるんだろうな。そうしたらそれこそ一生どころか未来永劫会えなくなっちまうぞ?それでもいいのか?」
「、、、私天国とか地獄とか信じてない。」
「は?じゃあどこで会おうとしてたんだよ。」
「、、、さぁ?」
「無計画にも程があるだろ。そんな曖昧なんだったら尚更死なないほうがいい。」
「でももしかしたら来世で会えるかもしれないし。」
「、、、天国と地獄は信じてないのに転生の類は信じてるのか、変な奴だなー。でもそれなら尚更今死ぬべきじゃないだろうな。」
「どうして?」
「今死んじまったらきっと来世は人間になれないからだ。こう言うのは前世でどれだけいいことをしたかで転生できるものが変わってくるんだよ。人間だときっとマザーテレサでギリ人間になれるかってもんだろうな。それを今死んでみろ?きっとミジンコにもなれないぞ。」
「大丈夫。」
「、、、何が大丈夫なんだよ。」
「私、思ったよりいい子だから。」
「例えばどんなところがいい子なんだ?」
「今日。」
「おう、」
「数学の宿題やってきた。」
少女がそういった瞬間、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った。
「だああああ私その宿題やってなあああああい!!!!」
「確か同じクラスだったよね?見せてあげようか?」
「まじか!?私だちいねぇから助かるわ!!!てか何で自殺しようとしてるのにちゃんと宿題やってきてるんだよ。」
「真面目だから。」
「何だよそれ。」
「ねぇ。」
「なんだ?」
「あなたは不真面目だからきっと死んじゃったら地獄行きだね。」
「黙ってろ、さっさと行くぞ。」
昼飯は食べれなかった。