地下室
何やら物音がする。布が擦れる音……誰かが服を着替えている?
目を開けると火の灯火でうっすらと照らされた部屋の天井が目に入る。
目が覚めた?
この声は、確か気を失う前聞こえた少女の声。僕はベッドで横になっているのか。体の痛みが少し和らいでるように感じる。変な事を言っていた気がするが実は味方で介抱してくれたのかな。
ありが……
声を発しようとしたが体がピクリとも動かない。
おかしい。なんで動けないんだ?傷のせいにしてはあまりにも体が言うことを聞かない。まるで金縛りにあったみたいだ。もしかしてこの子のせいか?
その魔法よく効くでしょ。私がかけたの。
そんな都合よく味方に出会える訳もないか。この子も俺の敵だったんだ。
ごめんね、早く治るようにかけたんだけど怖がらせちゃったね。
首から上だけ自由になり少女の方を向くとそこにはキャミソールと下着姿の少女が立っていた。
君は……?
私は魔法使いよ。でもこの館の主に捕まってここに閉じ込められてるの。あなた迷人でしょ。
ああ、うん。つい先日この館の近くの迷いの森?ってとこに気づいたらいて、メイドの女に半殺しにされてここに連れてこられて奴隷生活を送ってる。
やっぱりね。あなた凄く弱そうなんだもん。すぐ分かっちゃった。
……僕今逃げてるんだ。メイド女と主から。この館から逃げ出したいんだけど何か良い方法はないかな?
うーん、なくはないけど。
どうしたらいい?
私の条件聞いてくれたら助けてあげてもいいよ。
また嫌な予感がするな。
その条件ってのは一体なんなの?
私ここにずっと一人で閉じ込められててすっごく退屈してたの。だから……
私とおままごと大人バージョンをして欲しいの!
……見た目11歳くらいの女の子が言ってることだ。たぶんよく分からずに言ってるんだな。
ああ、いいよ。それで僕は動けないけど何をしたらいいのかな?
迷人はそこで横になっててくれるだけでいいよ。私が……動くから。
部屋の明かりがどんどんと暗くなり始める。
この世界の子は進んでいるね。介抱してくれた上に脱走の協力もしてくれるんだ。この世界の文化に従おう。
魔法使いは薄暗い部屋の中服を脱ぎ始める。
恥ずかしいからあんまりこっち、見ないでね……
もうどうにでもなれ。感を表面上出しているが心の中で膨らむ期待を抑えきれない。
じゃ、乗るね……
体が動かなくて気づかなかったが自分は既に裸だった。
ああ、介抱の時脱がされてたのか。スイッチ入っちゃったんだね。
上に乗られるその瞬間鍵のかかった扉を開けようとする音が聞こえる。
ここにいるのは分かっていますわ。
メイド女の声だ。
魔法使いさん。そこにいる迷人をお譲りいただけますか?
はあ、興醒め。せっかくこれから楽しくなる所だったのに。
迷人!私が隙を作るわ。その間に逃げて!
分かった。お前はどうするんだ?
この部屋には封印魔法がかかっていて私がこの部屋から出るには少し時間が必要なの。後から行くから先に行って!
メイドが扉から顔を覗かせる。それと同時に魔法使いは手から衝撃波を繰り出しメイドを吹き飛ばした。
今よ!
ありがとう。この恩は絶対に忘れない。
迷人はそう言い残し裸のまま部屋を後にした。
……
一目散に階段を駆け上り館の出口を目指して迷人は走った。しかし治癒魔法はまだ途中で体のダメージは完全には癒えていない。
あまり強く力は加えられないな。でもせっかくあいつが作ってくれたチャンスを無駄にはできない。
窓から月が差し込む暗い廊下はどこまでも続いていそうで不気味な雰囲気が漂う。迷人はその廊下を走り抜けロビーに差し掛かろうとしていた。