知らんバンドのレビュー記事
レンタルで済ます?
ノンノン、そんなのモッタイないぜ!
今すぐCD専門店へ行って、店員さんにこう言うんだ!
「すみません、ノーズイズコミュニケーションってバンドの、エロティックモンスターワールドってアルバムありますか?」
「Nose is Communication」は、今年一番の売れ行きを誇る、スター・アーティストだ。
さて、彼らが今月の頭に発売したアルバム「エロティック・モンスターワールド」であるが、これはまさに改作といえよう。
一時期は抗うつ剤に依存していたボーカルのアレン・ドボン氏だが、その声にはファーストの艶が戻っている。
それに呼応するように、後ろのドラムや横のベース、さらに横のキーボードも、踊るようなサウンドを鳴らしているではないか。
というわけで、今回はこちらのアルバムをレビューしていきたいと思う。
先に言っておくが、今作は必聴である。
――M1:Music Nano Death
和訳で「音楽ナノデス」。
アルバム随一の4拍子を誇る、5拍子の曲である。
アレンの後半からの追い上げるようなシャウトは、大気揺らすようだ。
イントロとして相応しい一曲であろう。
歌詞の一部に、抗うつ剤についての言及がある。
“My loves it overdose. But flowers cute.”
「僕は愛でオーバードーズした。だけど花は可愛かった」と歌うフレーズで、いきなりベースが鬼のような爆音を鳴らす構成。
そして、このフレーズが叫ばれると同時に、曲は4拍子へと回帰するのである。
この曲は5拍子なのに、すごい。
――M2:Great Name
直訳すると「すごい名前」。
軽快な前曲から一転、いきなり重々しいスネアの一発から始まる。
小節の頭ごとに、延々と鳴らされるこのスネアは、まさに鬼の金棒が地面に打ち付けられるようだ。
なんとシンバルは一度も叩かれない。ドラムセットから抜いたのであろうか。
普段は小粋なドラマーであるバナナ・スター氏だが、この曲では凶暴でナイーヴな一面を見せている。
そこに乗っかるアレンのシャウトは、神懸り的な美しさを湛えている。
必聴の一曲。
――M3:Dark Bomb
“frame is answer death!”
上述のシャウトから、いきなりギターが壊れる名曲。
ジミヘンもビックリの超絶ギター破壊曲。
どうやって音を出しているのか調べるため、試しに筆者もギターを壊してみたが、同じ音が鳴った。
アンプも通さずに壊す豪胆さは、スター・ギタリストであるモブ・ディラソの真骨頂である。
曲としては、やはりアレンのシャウトを特筆すべきであろう。
最高だ。
――M4:Angel Wing
某ランドセルのcmを彷彿とさせる、とても神々しい一曲。
前回のアルバムに《Devil Wing》が収録されているが、その対極に位置する曲か。
歌詞の内容には、とくに共通点は見られない。
しかし、ここでアルバムのテンションは絶頂に達した。
――M5:Cool cool cool. This album to new soon.
タイトルの通り、“cool cool”と連呼する内容。
絶頂に達していたテンションは、このローテンポの曲によって叩きつけられる。
絶望的な曲順であるにも関わらず、ベースのスティンゴのプレイは冴えていた。
曲の一部に、童謡「うさぎとかめ」のオマージュが見受けられる。
ギターのフレーズはもちろん、アレンのシャウトにも“rabbit is run. Running out!!”という一言が。
アキレスと亀は、アキレスがどれだけ速く走っても亀には追い付けないという逸話である。
つまり、アキレスをウサギと見たてた場合、そういう解釈ができるかもしれない。
要するに、ウサギは絶対に亀には勝てない運命なのだ。
どれだけ歌い狂ったとしても、どれだけ繰り返しても、曲の内容は変わらない。
いうなれば、これはアレン流の皮肉とも言えよう。
最高だ。
――M6:Death
直訳すると「死ぬ」。
物騒なタイトルのわりに、カントリー調の優しい曲調である。
アレン流の皮肉だろうか。
と思ったら、曲の途中でいきなりドラムが爆発する。
スネアを起爆装置として、ドン!!
すると、それに呼応したベースが破裂。
ギターもシャウトも音圧が凄まじい。
かき鳴らされるサウンドは、いつぞやのビートルズを彷彿とさせる。
初期から後期にかけての、ライブをやったりやらなかったりしていた頃の、中期に近い彼らを。
フォーセールからアビイロードあたりの、一筋縄ではいかないグルーヴ。
そこに現代音楽のエッセンスを取り入れて、神の域に昇華させている。
さらにいえば、ジミヘンのようなフレーズがそこかしこに仕込まれている。
チュローン、というサウンドは、どことなくパープルヘイズを想起させる。
ちなみに、パープルヘイズからはジョジョを想起してしまう。
最高である。
――M7:THE END
ここでアルバムは終わりを目指し、緩やかな演奏に戻った。
アレンのシャウトはゆったりとしたシャウトとなり、バナナもスネアを叩かない。
アレン流の皮肉が炸裂しているといえよう。
曲としては平凡だが、後ろで鳴らされるベースが面白い。
ギターのフレーズと完全に同じように弾いている。
その結果、もはやベースはなくても良いレベルまで昇華されているのだ。
むしろ、ギターのほうを無くしても良いかもしれない。
いや、ここはどちらも無くすべきだろう。
特筆すべきは、アレンのシャウトである。
至高としか言えない。
――M8:This is GRAPE?
「これはブドウ?」と問うタイトルからは、想像もできないほど激しい一曲。
M5と曲順を入れ替えてほしい……そんな感想が出るほど、爽快なナンバーである。
最後に持ってくるには、ちと重たすぎるか。
ここにきて、アレンのボーカルは掠れ始めた。
しかし、それがまた、ベースみたいな声でカッコいい。
逆にベースはギターのような音作りになっていて、今回ばかりはスティンゴの独壇場だ。
となると、ギターはもちろんボーカルチックな音作りとなっている。
ドラムはといえば、今回はもうスネアもシンバルも放棄して、バスドラムだけで頑張っているようだ。
そして、ここにきて登場するのがキーボード。
スケールアウトすら辞さない流麗なフレーズを、永遠に鳴らし続ける。
これによって、現代音楽のごときシュールな音像が実現されていると言えるだろう。
キーボーディストのミッキー・ホムンクルスの真骨頂だ。
ここまですべての曲に不参加だっただけあって、スティンゴを喰う活躍を見せているではないか。
素晴らしい、最高だ。
――――――
以上、アルバム「エロティック・モンスターワールド」のレビューであった。
解散の噂が後を絶たないバンドであるが、アレンの喉が潰れない限りは、杞憂に終わるだろう。
私もこれから、一ファンとして彼らを応援し続けたい。
近々、彼らは日本武道館に来日するそうだ。
わざわざ遠いエンカルナシオンから、よくやってきてくれた。
公演時間は10分だそうだが、ぜひぶっちぎりのパフォーマンスを見せて欲しいものである。
もう一度だけ言う、必聴だ。
下のリンクをクリックして、ぜひアルバムを入手してほしい。
amasom.oc.lq "erothic monster world"
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店員さんはきっと、笑顔でこう返してくれるはずだぜ。
「承知いたしました、少々お待ちください」ってな!
そのまま帰ってこなくなっても、諦めちゃいけない!
何時間でも待って、粘って、閉店までしつこく――いや、閉店しても居座れ!!
それこそがロックな生き様だ!! 迷惑上等!!