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かくして道は開かれる  作者: 藤井 三打
五章
21/30

20話 最強のカラテカ登場

 生きる石像、リビングスタチューの身体がガラガラと崩れ落ちる。


『オス!』


 リビングスタチューの胸に、崩壊のきっかけとなるマエゲリを叩き込んだマスタツが一礼する。偉大なる戦士を模して作られた石像は、カラテのために作られたゴーレムの前に敗れ去った。

 マスタツが次の構えを取るより先に、唸り声をあげてドラゴンがドヒョウに侵入してきた。土俵に入ったドラゴンは、鎌首をもたげマスタツめがけ炎を吐きかける。


「炎はちょっと、スモウ的にどうなのかな……」


「アレぐらいなら平気さ。平気な以上、反則を取るまでもない」


 外野で見守るヴィルマが思わず苦情の声をあげるが、隣りにいるアギーハはドラゴンの炎を認めた。大丈夫だからアリという問題でもないのだが。

 マスタツは炎を苦とせず巨大なドラゴンの懐に潜り込むと、その胸にセイケンヅキを叩き込んだ。ドラゴンは絶叫とともに炎を天高く吐き出すと、横にどうと崩れ落ち動かなくなる。頑強な鱗で覆われた胸が、ベコリと凹んでいた。


「厳密にスモウのルールを適用するなら、拳を握り込んで殴るのも、反則だろうしな……ここは、お互い様ということで」


「まあ、もしこの場にライデンが居ても、良し悪しの判断は即座にできなかったと思うけどね」


 アギーハの正々堂々のルール破りに頭を抱えるヴィルマであったが、解決策は思いつかなかった。

 そもそも、ドラゴンは炎を吐く以前に四足歩行。手をついたら負けのスモウのルールから逸脱している。対するマスタツもドヒョウから出ない、足の裏以外を地面につかないと、最低限のスモウのルールには乗ってるが、それ以外はカラテのままだ。

 これはスモウではなく、ドヒョウが舞台の、スモウによく似た異種格闘技戦だ。

 少なくともヴィルマは、そう判断した。

 スモウには、このような混沌たる状況を厳格に裁ける第三者、以前ライデンが必要としていたギョウジが必要なのだ。ヴィルマの気づきは正しかったが、今はその正しさを適用できる状況ではなかった。

 広場に作られた大小様々なドヒョウの中で、もっとも大きなドヒョウ。

 その大きさは、巨竜や巨人用の特大サイズであり、マスタツの巨体をもってしても、のびのびと動ける広さがある。

 そのドヒョウの中央に立つのはマスタツ。

 ドヒョウの外に積もるのは、マスタツに敗れた力自慢の魔物たち。

 結局、誰もマスタツをドヒョウの外から出し、手をつかせることは出来なかった。


「ブルルル……」


 鳴き声なのか、それとも身体が震える音なのか。この状況を見守っていたスライム・レギオンが、ユカタまがいのボロ布を脱ぎ捨てついに立つ。

 ぼよんぼよんと体中を揺らしてドヒョウに向かうスライム・レギオン。

 目も鼻も毛も無い身体であるものの、人型かつマワシを巻いていることもあり、その姿は実にリキシらしかった。

 ドヒョウに上る直前、スライム・レギオンはドヒョウに半身を残したまま倒れているドラゴンを両腕で掴む。なんとスライム・レギオンは、ドラゴンの巨体をそのまま頭上高く持ち上げてしまった。腕力の強さだけでなく、全身の力強さとバランス感覚がなければできない芸当だ。


「オマエハ、スゴイガ。オレモスゴイ」


 ドラゴンを投げ捨て、自らの力を誇示するスライム・レギオン。

 デモンストレーションとしては十分である。


「スライムには本来、会話するだけの知能はないのだが……スライム・レギオンと呼ばれる集合種には、喋るだけの知能と、口も無いのに話す能力がある。いったい、どの段階で知能を得て、どこから声を出しているのか! 確かにスゴイな!」


「そこを自慢してはいないと思うんだけど」


 脳がぶっ飛んでる天才と、ドラゴンを片腕で投げそうなオーガを知るエルフ。

 スライム・レギオンのアピールは、不発に終わった。


『私はリキシではありませんが、そのような己を誇示する行為は、スモウに不要なことぐらいは知ってます』


 アピールが効かないのは、冷静沈着なゴーレムであるマスタツも同様だった。

 至近距離でスライム・レギオンとマスタツが向かい合う。

 若干、スライム・レギオンの方が大きいものの、両者の体格はほぼ互角である。

 距離にして両者の大股で十数歩、若干ドヒョウが広すぎるが、対峙しているこの状況で水は差せまい。


「ハッキヨイ!」


 唐突に大声で叫ぶヴィルマ。

 突然の叫び声は、睨み合っていたマスタツとスライム・レギオンを突き動かす。

 スライム・レギオンの伸びた腕が、マスタツの喉にまとわりついた。


「なんなんだ、それは?」


 いきなり何をと驚くアギーハに、ヴィルマは堂々と言い返す。


「これは、スモウを始める前の掛け声。いまここでおこなわれているのが、スモウによく似た何かだったとしても、ドヒョウの上でやっている以上、せめてこれくらいはさせてもらうよ」


 ライデンがことあるごとに発していたハッキヨイ。

 意味はわからずとも、スモウに必要な呪文である。

 ヴィルマはそう信じ、腹の底から大声を出していた。

 まるで、ヴィルマの声が応援になったかのごとく、マスタツとスライム・レギオンの戦いは急激に熱を帯びていた。

 マスタツは自身の首を締めるスライム・レギオンの腕を無理やり剥がすと、そのまま何度もコブシをスライム・レギオンに叩き込む。先程のドラゴン同様、スライム・レギンの身体に次々と凹みができるものの、スライム・レギオンの両足はしっかり地面に立ったままだった。


「これは、マズいな……」


 戦況を見守っているアギーハが、渋い顔をする。

 ヴィルマがそんなアギーハに話しかける。


「マスタツの方が、押しているように見えるけど」


「確かに攻撃を仕掛けているのはマスタツだ。だがアレは、無駄な努力だ。スライム・レギオンめ。アイツはある意味、ライデンよりもスモウに向いた性質かもしれん」


 ライデン以上にスモウに向いている。

 流石にそこまではとヴィルマは思うものの、アギーハにそこまで言わしめたスライム・レギオンの本質が、ついにドヒョウで発揮され始めた。


『これは、いったい』


 戦っていたマスタツも、スライム・レギオンの変化に気がつく。

 突き出したコブシが、どんどん重くなっていく。

 マスタツのコブシがスライム・レギオンを打つ度に、そのコブシにねっとりとしたスライムレギオンの身体が貼り付いていた。


「スライムヲ、アナドッテイタナ」


 スライム・レギオンの言葉を皮切りに、その体がマスタツめがけ圧しつけられる。

 押すのではなく、圧す。

 スライム・レギオンが圧力をかけるたびに、マスタツの全身がスライム・レギオンに覆われていく。


「打撃はほぼ効かず、組めばああして呑み込んでしまう。動く泥沼と戦うようなものだ。スモウという競技において、ああも厄介な生物はそういないだろう。呼吸を必要としないゴーレムのマスタツだからまだ耐えられるが、並の生物ならあの段階で溺れ死んでいるだろうな」


 両者の戦いをじっと見守っているアギーハの見解は正しい。

 だが、そうなると……ヴィルマは気づいたその点について、アギーハにたずねる。


「それだと、スモウだけじゃなくてカラテでもアイツに勝てないんじゃないの?」


 打撃を主とするのがカラテである以上、打撃がほぼ効かないスライム・レギオンとカラテの相性は最悪なのでは。現に、マスタツはああして呑み込まれてしまった。


「ふむ。マスタツでは勝てないだろうな」


 アギーハの見解は、実にあっさりしたものだった。

 アギーハは解説を続ける。


「マスタツの実直なカラテでは、スライム・レギオンには敵うまい。溺れ死なないとはいえ、スライムは直接獲物を取り込み、身体から発する消化液で溶かし摂食する。スライム・レギオンもおそらく同じ性質を持っているはずだ」


 見れば、マスタツが着ているカラテギと当人の岩肌がじわじわと崩れ始めている。溶ける速度も岩を溶かす力も、やはりスライムとは比べ物にならない。


「マスタツは負ける。だが……」


 アギーハはまだ付けていた革製の首輪と手錠を指の力だけで引きちぎると、懐から髪留めを取り出し、自身の髪に装着する。

 生物の眼球に似た宝石を蔦を模した装飾で巻いた髪留めは、可愛らしくもどこか不気味さがあった。


「カラテは負けない。わたしたちは、決して負けない」


 アギーハはそう言うと、何やら聞いたことのない呪文を唱え始める。

 ヴィルマは思わず、耳をふさぐ。

 あまりに細かく、あまりに小さく、あまりに早く、あまりに未知。

 禁忌の匂いが、自然とそうさせた。

 髪留めの宝石が輝いたかと思うと、突如アギーハの身体が、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。ヴィルマは慌ててアギーハの身体を抱きとめる。


「大丈夫!?」


「ありがとうございます。無事、成功したようです」


 慌てて話しかけるヴィルマに対するアギーハの返答は、今までの彼女のイメージからは考えられないくらい、事務的だった。

 アギーハはヴィルマから離れると、規律正しく立ち、衣服や佇まいを整え直す。

 雑に羽織っていた緑のローブも、ぴしっと襟を立たせる。


 「本来ならば、もう少し後で披露する予定の秘策だったのですが。予定を狂わせてしまったことは、ひとえに私の力不足。慚愧に堪えません」


 あまりの様変わり、まるで中身ごと入れ替わったようなアギーハの佇まい。

 導き出される答えは簡単で、あまりにふざけていた。


「まさか……マスタツ?」


「ええ。今、主の身体を預かっているのは、私こと、マスタツです」


 ヴィルマの馬鹿げた質問に対し、誠実に答えるアギーハ。

 いや、アギーハの身体を借りたマスタツ。

 ならば、今、マスタツの身体に入っているのは……


『ハーッハッハ!』


 ドヒョウ上、未だスライム・レギオンに捕らわれているマスタツが、彼に似合わぬ楽しそうな笑い声を上げる。

 突如ジャンプしたマスタツが、空中で何度も前宙する。

 ゴーレムどころか、軽業師のような動きを見せたマスタツ。

 空中での高速回転はスライム・レギオンを引き剥がし、見ていたヴィルマの口をあんぐりと開けさせた。

 ドヒョウに着地したマスタツは心の底より叫ぶ。


『馴染む、実に馴染むぞお! カラテの奇跡、ここに顕現!』


 ピッピッピッと、キレの良い演舞を見せるマスタツ。

 その動きは、今までのマスタツの動きと比べ数段複雑かつ、遊びと柔らかさのある動き。アギーハが見せる演舞そのものである。

 もはや答えは、一目瞭然だ。

 ヴィルマは、隣りにいるアギーハに答えをぶつける。


「ちょっと待って、ひょっとして入れ替わってる? あそこにいるの、アギーハ?」


「はい。私の身体の中には、主であるアギーハ様の魂が入っており、主の身体には、従者たる私、マスタツの魂が入っております。この髪留めの宝石と、私の目に使われている宝石。この二つの宝石を繋がりとし、互いの魂を入れ替えたのです」


 言われてみれば、マスタツの単眼とアギーハが取り出した髪留めの宝石はそっくりであった。サイズはマスタツの単眼の方が遥かに大きいが、色も形も加工も、2つの意思はまったく同じである。


「これが、錬金術師たる主が編み出した、最大の秘奥。魂魄入れ替えの魔術です」


 声は変わらぬものの、口調や態度はまったく違う。

 今、アギーハの身体の中にいるのはマスタツであった。いわば、マスタツの名とアギーハの頭文字のAをとって、マスタツAといったところか。

 ヴィルマはマスタツAという事実を、なんとか受け入れつつ話す。


「秘奥って言っても、限度があるよ。そんな術聞いたことがないし、こうもあっさり入れ替わるんじゃ、魔王憑きよりも上じゃない」


 対象に取り憑きじっくりと魂と身体を奪っていく魔王憑きが、緩慢に見えるほどに迅速な魂の入れ替え。これはもう、奇跡と呼んでいい術だ。しかるべき機関に提出すれば、アギーハの名は間違いなく魔術史に残るだろう。


「言っているでしょう。主は天才だと。限界を超えた修練を積んでも、超えられない壁がある。一撃しか打てない自分でも、一撃必殺なら叶えられる。だが、一撃では物足りない。もっと、自由にカラテを振るいたい。そう考えた主は、限界を越えるための身体と、その身体を使うための手段。さらに、抜け殻となった自身の身体を守る魂を作り出しました。それが、私ことマスタツなのです。私の魂も身体も、主のためにある」


 ゴーレムであるマスタツは、単なる従者ではなくアギーハがカラテを極めるためのボディであった。

 アギーハが秘めていたカラテのとっておきとはとは、これだったのだ。

 カラテを深く知る自身の魂を、理想の体に入れる。

 知恵とカラテを極めたものならではの荒業だ。

 アギーハは自身の才能と魂を、魔術ではなく、カラテに捧げた。

 それだけの話だったのだ


「天才は決して魔王に劣る称号ではない、私はそう信じてます」


 そう言うと、マスタツAはじっと自身の体を捧げた主を見つめる。なんというか、今まで生き生きとしすぎていたアギーハに比べ、冷静なマスタツの魂が入ったマスタツAの雰囲気は、元より美人に見えた。喋らなければ美人の典型例を見せつけられている。


『さあ、来い。スライムの王者。カラテの奥義を教えてやろう』



 ドヒョウ上のマスタツ、いやアギーハの魂が入ったマスタツ、アギーハMはちょいちょいと人差し指を曲げ、体勢を立て直したスライム・レギオンを挑発する。それは今までのマスタツにはない仕草であった。


「オマエ、カワッタカ?」

 スライム・レギオンは直感で目の前のゴーレムの変化を察していた。

 むしろ、このような頓珍漢な出来事を前にしては、頭脳より直感だよりのほうがいいのかもしれない。


『変わったと言えば変わった。そうだな、試しにもう一度、殴り合おうか』


「オマエノコウゲキハ、ドウセキカナイ。オマエハアホニナッタ」


『うんうん。アホ呼ばわりなんて、何年ぶりか。よし、加減はなしだ!』


 スライム・レギオンの右腕が伸び、アギーハMを襲う。

 アギーハMは左腕でスライム・レギオンの腕を払おうとする。スライム・レギオンの軟体を打撃でいなそうとすれば、その手足は呑み込まれてしまう。これまで散々マスタツが苦戦してきた攻防と、何も変わらないように見えた。

 バチン! と何かが弾ける音がする。

 この鮮烈な音は、今までの攻防に無い音であった。


「?」


 スライム・レギオンが、自身の右腕を不思議そうに見ている。

 スライム・レギオンの右腕が消失していた。


「ナンデ?」


 きっと表情があったら、きょとんとした顔をしているのだろう。スライム・レギオンは、自身の右腕が吹き飛んだのが、信じられない様子だった。


『お前の攻撃なんて、どうせ効かない? おい、怪物。カラテを甘く見たな』


 アギーハMのセイケンヅキがスライム・レギオンの胸に突き刺さる。

 瞬間、スライム・レギオンの巨体が爆散した。

 四方八方にゼリー状の物体が飛び散るその様は、怪物の終わりを直感させた。


『一撃必殺。いや、最初の一発を入れれば、二撃必殺だな。カラテのキワミは、この身体でも遠い』


 身体についたスライム・レギオンの飛沫を払いつつ、理想を口にするアギーハM。

 不思議なことに、直接殴ったはずの手には、まったくスライム・レギオンの残骸がついていなかった。


「……なんで?」


 きょとんとした顔で、隣のマスタツAに話しかけるヴィルマ。

 先程までマスタツの攻撃は通っていなかったのに、なぜアギーハMの攻撃はスライム・レギオンにあっさり通ったのか。

 スライム・レギオンの巨体を、なぜ一撃で吹き飛ばせたのか。

 なぜ殴った手にスライム・レギオンが一片たりともくっついていないのか。

 戦いの経験を積み、カラテを多少習ったヴィルマですら理解できぬ無法なまでの強さであった。

 そんなヴィルマの質問に、カラテを知るマスタツAが答える。 


「あれは、回転です」


「回転……腕が回ってるってこと?」


「大雑把に言えばそうです。攻撃の際、手足を捻ることにより、打ち出す攻撃に回転を加える。回転を心得た主の放つ攻撃は、まさに竜巻そのもの。粘りついてくるスライム・レギオンの身体を弾くことなど、容易でしょう」


 くるくると手を回しながら説明するマスタツA。

 拳を捻りつつ、一撃を加える。

 一直線に対象を吹き飛ばすのがスモウのツッパリならば、回転を加えることで対象を貫くのがカラテの一撃である。アギーハがマスタツの身体を使うことで、力任せのツッパリに似たマスタツのセイケンヅキは、相手を打ち貫くカラテ本来のセイケンヅキへと昇華された。

 だが、説明できるくらいにわかっているなら、自分もやればよかったのに。そう疑うヴィルマの視線に気づいたのか、マスタツAは更に説明を付け加えた。


「カラテの技を知っていて、回転させるだけの関節の柔らかさがあったとしても、私はそれを実行に移せません。知識と発想があっても、実行にたどり着けない」


 マスタツには心に足りないところがある。

 材料があるのに、自分の中で組み立てられない。

 アギーハの言っていたマスタツに足りないところとは、おそらくこれだろう。

 これだけ会話もできて、思考も達者なゴーレムでも人の心に完全に追いついたわけではないのだ。

 人としての心とカラテの技を持つアギーハが、怪力と柔軟性を持つマスタツの肉体に入ることで、最強のカラテカがドヒョウ上に顕現した。

 マスタツAはさらに言葉を重ねる。


「主に強靭な身体を譲った結果、今の私は主そのものの脆弱さかつ応用力にも欠けると、どうしょうもない出がらしなわけですが」


「なんで自嘲まで出来るのに、肝心な応用力は足りないの?」


「もっとも、私も身を守るための最低限の技は覚えていますし、天才性にかまけて無茶をする主とは違い、ダメな時はちゃんと逃げます」


「なんだろう。応用力が足りないとか、そういう問題じゃない気がしてきた……」


 十分、感情面は発達しているのに、なんでカラテの応用だけはできないのか。

 マスタツAと会話するヴィルマは思わず頭を抱えた。

 スウッと、何やら生気が抜ける感触に襲われたのは、そんな時であった。

 ヴィルマとマスタツAは思わず身構え、カラテに負けた魔物たちは畏れ縮こまる。


『来るか』


 気負いすぎず、恐れることもせず。

 これから現れる存在を悠然と待ち構えているのは、アギーハMだけであった。


「ふむ」


 城から悠然と出てきたシュンシュウは、広場の様子を見て興味深そうな声を上げる。


「どうやら我が城に、招かれざる客が」


「「『マワシ巻いたまま!?』」」


 上半身は仰々しく重装甲、下半身はライデンが履いてたマワシのまま。

 そんなシュンシュウが重々しく言おうとした台詞を、二人と一体の驚きが遮った。

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