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episode.08



結果から言うと、今回の同伴はまずまずと言ったところだ。小型の怪獣には何度か遭遇したものの、ロップは取り乱す事は無かったし、目的の薬草も手に入ったし、初日にしてはなかなか良い具合だった。


あとはもっと大きな怪獣を前にしても落ち着いていられるか、最終的には人を乗せずに半単独行動が出来るか、少しずつ慣らしていく事になる。


「大丈夫だったか?嬢ちゃん」

「はい、ありがとうございました。グイドもいたので、私はこれに一度も触れる事なく帰ってきちゃいました」


背中に背負っていた猟銃を掲げる。弾の数は出発時のまま綺麗に残っている。


「そりゃあ良かった。嬢ちゃんの場合、それは使わないに越した事はねえからな。グイドも、助かったぜ」

「女性を1人守るくらい、大した事ない」

「ははっ!物足りなかったか?」

「そうは、言ってない…」


グイドは何かを気にするようにチラリとこちらを見た。マウロ隊長とグイドは全然似てないけれど、こんな風に話しているのを見るとお互いに信頼しあっていて良い関係なんだと思う。


マウロはグイドがまだ年若いからと言って無碍に扱う事はない。実力主義のサーガン討伐隊のリーダーに相応しく、人の判断基準は年齢や性別ではなく、実力なのだ。


とにかく無事に帰って来れたという事で、ベルティーナはさっそくマウロに依頼する。


「マウロ隊長、アルミロ様にお礼を言っておきたいのですが、面会は可能でしょうか」

「ああ、問題ねぇよ。ビアンカが軽食に何か作ってるはずだ。ついでにゆっくりしていくといい」

「ありがとうございます」


納品の為に何度か入った事のあるサーガン討伐隊のお屋敷はかなり広い。住み込みの隊士達もいる為、家政婦のビアンカが屋敷中の掃除や彼らの食事を請け負っている。


アルミロは自室にいるだろうと言う事だったので、ベルティーナは微かな記憶を頼りに、ここだったよな?とたどり着いた一室の扉を緊張しながらノックした。


「誰だ?」


中から聞こえてきたアルミロの声に安堵したものの、途端に緊張してきた。アルミロの自室を一人で訪ねるなんて初めてだった。


「あ、あの…ベルティーナです。今戻ったので、ご挨拶に、と…思いまして……」


「………」


あ、あれ…?返事が……ない…?もしかして迷惑だった?


手に汗握るとはまさにこの事。


だが少しして開けられた扉の向こうにいたアルミロは、普段と変わらない様子で…いや、顔色は普段とは変わらないのだけれど、今日はオフだからか普段よりも薄着でドキッとした。


胸元のボタンは2つも開けているし、髪も普段よりは整えられていなくて、手櫛で解いた程度ですと言わんばかりだ。


朝起きる所から休日を共に過ごす恋人にこの姿を見せるならまだしも、ただお礼を言いに来た町娘Aにこれは…心臓に悪いな………。


それともどこか具合悪いのか!?


「体調は、いかがですか?治験をなされたと」

「マウロに聞いたのか。特に問題はない」


さいですか。


それは良かった…んだよね?この姿をベルティーナに晒すのは、むしろ街娘Aのために着替えるのが無駄だって言う、そう言う事だよね?


無駄に高鳴る心臓を鎮めようとベルティーナが必死になっていると、アルミロに入室を促され、結局ベルティーナの心臓は高鳴ったままだった。


「同伴の件、話をつけていただいてありがとうございました」

「大丈夫だったか?」

「はい。本日分は滞りなく」

「そうか。何よりだ」


現状にドギマギしているのはベルティーナだけのようで、アルミロは至って普段通りだ。治験の影響は本当に大丈夫らしい。


自分の心臓の為にも長居するわけにはいかないと、ベルティーナは口を開いた。


「まだ何度かお世話になると思いますが、その時はよろしくお願いします」

「ああ。こちらから依頼したようなものだ。これくらいはさせてもらう」

「はい」


イレイナの依頼はアルミロの依頼ってか。アルミロの依頼はサーガンの依頼ってか。はー、こりゃまたイレイナはすんごいヒロインだ事…。


ベルティーナは苦笑いを浮かべるしか無かった。自暴自棄になって癇癪を起こさなかっただけ偉い。


「では、私はこれで…」

「帰るのか?」

「ビアンカに挨拶をしてから帰ります」


別れ際は「ああ」とか「また」とか極めて手短な事が多いアルミロにしては、帰るのかと尋ねてくるのは珍しいなと思いながらもベルティーナは微笑みながらドアノブに手を掛けたその時だった。


後方からガチャガタと聞き慣れない音がして、振り向くとアルミロが苦しげに執務机に手をついて何とか体を支えていた。


さっきの音はアルミロが手をついた時に机に置いてあった筆や判子がたてた音のようだ。


ベルティーナは驚きのあまり目玉が転げ落ちるかと思うほど目を見開いた。


「ア、アルミロ様!?」


ベルティーナが慌てて駆け寄ると、アルミロは何かに必死に耐えるように荒く呼吸を繰り返していた。





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