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episode.07



討伐への同伴は何度経験しても緊張する。何しろ怪獣がうようよいる場所にこちらから乗り込むわけなので、まさに危険と隣り合わせだ。


ベルティーナは自分の身を守る為に狙撃の訓練をうけているので、ど素人という訳では無いのだが、サーガン討伐隊程にレベルが高い人達に混ざると、赤子も同然だ。


それでもベルティーナの同伴を受け入れてくれたのは、そんな素人さえも守り抜けるという彼らの自信と、ベルティーナの家族が代々築き上げてきた信頼関係からだろう。


「よぉ嬢ちゃん。良く来たな」

「マウロ隊長!この度は受け入れて頂き感謝申し上げます」

「そんな固くなんなって。俺たちも嬢ちゃん達には世話になってるんだ。お互い様だろ?」

「今後もご贔屓に願います」

「もちろんさ。爺さんにもよろしく伝えておいてくれ」

「はい、伝えます」


サーガン討伐隊隊長、マウロ・クリオーネ。気前よく明るい性格で、たまに工房にやってくると師範と共に武具についてああでも無いこうでも無いと長時間語らっている。


アルミロとは何もかもが正反対で、思った事は真っ直ぐ素直に口にするタイプだ。ちなみに彼もゲームの中では攻略対象者の1人だった。


「そいつがイレイナの従獣になるのか」

「その予定です」

「こいつぁ…彼女にくれてやるには惜しいな」


ま、隊長もイレイナとは当たり前に知り合いですよね。そりゃそうだ。アルミロの大事な人だもんな。


ベルティーナは素直に自分が育てた従獣が誉められていると捉えて微笑んだ。


「そう言えば、アルミロ様は…」

「ああ。アルミロは今日は留守番なんだ」

「…?」

「昨日の夜から治験中でな。何かあるといけねぇから外出禁止だ」


おぉ…タイムリー………。


イレイナは新薬のデータを取る為に、討伐隊に治験を協力してもらう的な事を言っていた。恐らく、彼らは体を鍛えているから多少の副反応には耐えられるとかそんな魂胆だろう。


「アルミロ様は、大丈夫でしょうか?」

「けろっとしてたし、問題無さそうだったぜ。大事をとってってやつだ、心配ねぇよ」

「そうですか」


それなら良かったとベルティーナは胸を撫で下ろした。


「心配すんな、あいつがいなくても嬢ちゃんの事は守り抜いてやるさ」

「心強いです」

「万が一嬢ちゃんに何かあったら叱られるだけじゃ済まねぇだろうしな!ははっ!」


ベルティーナに何かあった時、一番に慌てふためくのはきっと師範だろうから、叱られると言うのもきっと師範にということだろう。


「足を引っ張らないように気をつけます」

「そこんところは気にすんな。ヤバいと思ったら無茶しないで逃げてくれ」

「はい」


ベルティーナはロップに薬草の匂いを嗅がせると、その背中に跨った。匂いを嗅いだ薬草を取ってくる訓練は既に済ませてあるので、あとは実地で出来るように訓練する。最終的には人の助けがなくても動けるようになるのが目標だ。


「よぉし!じゃあ行くか」

「「「おぉー」」」


ベルティーナは威勢のいい隊士達の後方に続く。


「ベル、久しぶり」

「グイド!」

「俺、今日はあなたの護衛につくから」

「ありがとう。迷惑をかけないようにするわ」


グイド・アンドレイニ。彼はサーガン討伐隊所属ではなく、宮廷所属の討伐隊士で、この国に数多ある討伐隊を転々としている。討伐隊同士の均衡を保ったり、若いけれど、彼らに指導をつけたりする立場だ。攻略対象者の中では唯一のショタキャラ。


言葉数が少ないのはアルミロに似ているけれど、いつもいろんな事を考えていて、一番の実力者ではないかとすら思う。


「あまり俺から離れないで」

「はい」


ちょっとドキッとする事を平気で言ってきたりする。弟のような存在だけどグイドがいると安心感が違う。


「今日はたまたまサーガンに?」

「うん。アルミロ副隊長が治験で動けないから、その代役で」

「そうなのね。ついこの間イレイナに治験の話を聞いたばかりだったの。グイドも治験に参加する事もあるの?」

「うん。俺は、宮廷に仕えてる、から、割と早い段階で試す」

「何か異常がおこったことは無い?ちょっと心配だわ」

「大丈夫。体、鍛えてるから」


グイドは体格も小柄で、口調もおっとりしているせいか、か弱く見えがちだ。でもいざ動き始めると、小柄な体を生かした俊敏な動きで、油断しているとその姿を見失ってしまう。


小柄と言ってもベルティーナよりは大きいけれど。


「今回の治験の事なら、もう認証直前のやつ、だから…たぶん大丈夫だよ」

「そんなに顔に出ていた?」

「少し」


グイドは様々な人との関わりが多いせいか、相手の顔色を伺うことに長けている。本人は無表情でいる事が多いけれど。


ベルティーナがアルミロの身を案じている事にもあっさりと気づかれてしまったらしい。


「心配なら、戻ったら挨拶しに行くといいよ」

「治験の邪魔にはならない?」

「それは心配ない」


グイドがそう言うなら大丈夫なのだろう。今日の事のお礼もしたいし、一目見れば不安も消えるに違いない。


「じゃあそうしようかしら」

「うん」


アルミロに会えると思うと、やはり心が沸き立つ。彼の顔を見る為にはまず自分が無事に帰らなければと、ベルティーナは気合を入れ直した。





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