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episode.20



夕方、本当に迎えにきてくれたアルミロと並んで歩いているベルティーナはふと思いついた。


もう店の場所知っているんだから、わざわざ迎えに来てもらって一緒に行かずとも良かったのではないか、と。


「そう言えば、お店の場所はもう分かっているので、現地集合にすれば良かったですね。お手を煩わせてしまいました」

「いや、気にしなくていい」

「き、気にしますよ…アルミロ様の隣を歩くのは」


どこで誰が見ていて、どんな噂をたてられるか分からないし…。あの後イレイナとはきちんと話は出来ているのか聞いても良いものか迷う。


「グイドとは並んで歩くのに、俺では不満か?」

「…え?」

「先日見かけたんだ。2人で荷物を抱えて歩いていただろう」

「ああ!あれは買いすぎた荷物をグイドが持ってくれてたんです。アルミロ様も近くにいらしたんですね」


声を掛けて欲しかったなんて言葉をベルティーナはすんでのところで飲み込んだ。


「仲が良いんだな」

「グイドは優しいのでたまたま助けてくれただけですよ」

「今日も楽しそうに話していただろう」


グイドにその気は無いのだろうが、あまりの距離の近さに嫉妬めいた事を言ってしまった程、2人が仲睦まじくしている姿をアルミロは何度も見ている。


グイドはさておき、ベルティーナの方はどうか分からないのがアルミロにとっての不安材料になっている。


対するベルティーナは、グイドはサーガン討伐隊にも出入りしているし、グイドの事を知りたがっているのかな、と今日の事を思い出しながらアルミロを見上げた。


「グイドは甘い物が好きなので、討伐終わりはよく食べるみたいです。ビアンカさんのお菓子も美味しいって言ってましたよ」

「……何の話だ?」

「え?グイドの好きなものの話…ですけど」


アルミロの表情を見るに、的外れな事を言ったらしい。じゃあ何が知りたいのだろうかと考えるベルティーナにアルミロは小さくため息をついた。


「グイドの話はよそう」

「そう、ですか…」


そもそもグイドの話を振ってきたのはアルミロの方だったはずだがよく分からないまま店に到着し、3度目のスマートなエスコートを受けた。


「アルミロ様は、いつもカウンター席の端に座るんですね」

「隊の連中と来る時はテーブルの時もあるが、まあそうだな。ここなら相手を独占できる」

「………独占、ですか」


ドキッとする事を突然言わないで欲しい。確かに1番端の席に座っているベルティーナはアルミロ以外の誰にも声を掛けられないけれど、独占とか言われるとその真意を考えずにはいられない。


話に集中したいとか、そういう?


「シシィの件、きちんと納得しているのか?」

「へ?」

「メイメイの代わりにシシィを立てると連絡が入ったが、シシィはお前が可愛がっている従獣だったはずだと思ったんだ」

「よく、ご存知で」

「…ああ」


お前の事はよく見ているからな、なんて事はアルミロには言えなかった。


アルミロの返事がなぜか少し遅れたような気がするがベルティーナは気にしない。知っていてくれたのは純粋に嬉しく思うが、そういえば熱を出しながら外で寝過ごしていた時、ベルティーナを残して一人で帰ったのはシシィだったし、そういう所を見られているから知っていたのだろう。


「大丈夫です、納得しています。サーガン討伐隊にお渡しする際にはメイメイにも劣らない状態に仕上げますので、もう少しお待ちいただければと」

「待つ分には構わない。それほど急ぎでもないしな」

「助かります」


本来、メイメイとナツは2匹同時に引き渡しの予定だったが、シシィは訓練が遅れている為、先にナツだけが渡される事になる。そういった事情も受け入れてくれたサーガン討伐隊には感謝しなければならない。


「それに、シシィの行き先がサーガン討伐隊で良かったと思ってるんです。アルミロ様やマウロ隊長がいる所なら安心して受け渡しが出来ます」

「シシィの事は俺が譲り受ける予定だ」

「2頭使いになるんですか!?」

「ああ。毎回では無いだろうがな」


従獣の多頭使いは珍しい話では無い。特にソロで活動する人は複数の従獣を駆使する事が多い。


「そう、でしたか。アルミロ様がシシィを…」

「実を言うと、本来はナツの予定だったんだが変わったんだ」

「……シシィの受け渡しが遅れるから、でしょうか。そこに関しては申し訳ないです」

「それも無いとは言わないが、従獣も繁殖させて未来に繋がなければならないし気にする事はない」

「はい、ありがとうございます」

「何より俺が、お前が育てたシシィを連れたいと思っているからな」


従獣とその使い手は時に互いに命を預け合う程、強力な信頼と絆で結ばれる。その育手を請け負っている従獣屋として、アルミロの期待には何が何でも応えなければいけない。


「ご期待に添えるよう、頑張ります」

「ああ。あまり気負わずいつも通りにしてくれれば十分だ。イレイナがロップの事を自慢して回っているらしいからな」


アルミロからイレイナの名前が出た事にドキッとしたベルティーナだが、何とか表情を繕って「それは何よりです」と微笑んだ。




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