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八譚 対決 岩男

「牙狼会の特攻突撃じゃぁ!」


 勢いよくアジトへと突っ込んでいく。

 そこにいた半分の敵は倒れているが半分は意気揚々に武器を手に取っている。

 牙狼会の連中は負けずと彼らと戦っていく。

 私達は彼らにここを任せ建物へと入っていった。

「げへへ。倒れてるところを狙えば簡単に(タマ)取れるなぁ」

 三下が倒れている偉を狙っている。

 さっきまで横にいた椎名がいない。いつの間にか、その三下の真後ろにいた。

「殺さないであげる。だけど、動かないでね。死ぬから」

 三下はその場に倒れた。

 牙狼会の連中が倒れたリスタの元へと駆け寄っていた。私達は倒れた偉の元へと駆け寄った。

「偉さんは無事だけど……戦闘には参加できなさそーだね」

 レイが彼の状況を確認した。

「偉さんのことは任せて先に行ってください」

 私達は偉のことをレイに一任し、二階に上がっていった。


 二階には硬岩組の輩が待ち伏せていた。

 半数近くの牙狼会メンバーが突撃していく。

「ここには硬岩組の元組長と元若頭がいます。その二人は強ぇから気ぃつけな」

 牙狼会と硬岩組の乱闘騒ぎ。

 殴り殴られ喧嘩騒動。

 その中でも壮絶なのが敵方の元組長だった。年老いた風貌の男は刀を素早く振り無駄なく切り裂いていく。一太刀振るごとに赤い血痕が増えていく。

 彼はまた刀を振り落とす。

 その先には椎名がいた。「危ないっ」と言っても間に合わない。

 振られる刀。

 小さなナイフが刀にぶつけられ、軌道を無理やり変えられる。

「元組長……ね。ヤクザと暗殺者どっちが強いかしらね」

 繰り出されるナイフが元組長を牽制していった。

 また、さっきまで牙狼会代表して話していた男が彼らの若頭と言われる男と激突した。

 私はこの階を彼らに任せて三階へと向かった。


 三階に辿り着いたのは、私と黒と謎の男ゼットだけだった。

 三階で待ち伏せていたのは人質と覆面男の二人だけだった。

「正義、の、味方。ケー・ロ・ゼット、様、登場」

 ゼットは蛙の被り物の口に手を入れた。四次元ポケットのような場所のようで口の中に手が入っていく。

 確実に体の腹部まで突っ込んだ後、四次元から金色の斧を取り出した。比較的暗めな建物の中に金のそれは激しく目立っていた。

「受ける、あなた、私、の、正義」

 人質がいるにも限らず突撃していくゼット。流石は警察のしがらみがない人間だ。

 斧が振られ、覆面男に当たる。

 覆面男の頭がかち割られる、ことはなく、斧の方が壊れ飛んでいった。

「硬い、おかしい、硬い」

「……………………。ムッ」

 単純な腹パン。それだけでゼットはその場にうずくまった。

 その場で縮こまる彼を容赦なく蹴り飛ばす。ゴロゴロと転がりながら彼はこの場に戻ってきていた。

「強い、攻撃、硬い」

 強敵だ。私にできることと言えば雨を降らすこと。そこで水溜まりが出来れば、スタンガンで感電させることができる。攻撃がバレればきっと失敗する。チャンスは一度きりだろう。

 そう言えば。

 ふと横を見ると黒がいなかった。彼はゼットに意識が集まる中、速やかに場所を移動していたのだ。

「私、屈す、ない。悪、に、が、負けない」

 蛙の男は立ち上がり果敢にも挑んでいく。

 蛙男が立ち上がり果敢に挑んでいく。

「…………………。ムル」

 呆気なく返り討ちにされ、地面の上で伸びてしまった。

 ただ、役に立たなかった訳ではなく、その間を縫って黒が被害者を救出し、素早く戻ってきた。

「紐を解いてくれ。それが終わったら、二人で逃げなさい。この女性(ひと)の人は外にいる警官に引渡しなさい」

 今度は黒が挑むようだ。

 懐から銃を取り出す。

()ウォン、四十四、無職。コロナが広まる前に日本に来た韓国人。情報によると、人間には到底できない所業ができる、つまりマスク所持者ということだろう」

 銃の安全ピンを外した。

 狙いが定められていく。

「民間からの情報をかき集めた結果、能力としては体を異常に硬くできる能力というところか。その硬さは鋼を壊す程の……な」

 人質だった女性に絡んでいた紐を解いた。

 私は彼女を連れてその場から離れるように二階へと降りた。


 上から銃の音がした。

 次に強い衝撃音。

 三階から二階へと、建物の床を破壊して降りてきた覆面の男。降りると否や、高圧的なオーラで周りの動きを止めた。

 彼は私達の方向向けて指を指す。

 たったそれだけで、さっきまで戦っていた相手を無視して私を狙って動き始めた。

 やるしかない。

 私は雨雲を作っていった。

「みんな逃げてっ!」

 そう言っても逃げないのは敵ということだ。

 雨で水溜まりができたところにスタンガンを当てると、電気は水を通し、水溜まり上の人間は感電する仕組みだ。私はスタンガンに手をかけた。

 その時、何かが起きたかのように彼らは動かなくなった。必死にもがいているような様子だった。彼らに何が起きたのだろうか。どこか苦しそうだ。

 水溜まりにできた水が独りでに動き、人間の輪郭を囲う。

 彼らは勝手に仲間割れし始めた。嫌々ながら仲間に攻撃していた。

「ゴボッ、ヤベ、ヤベベクベェ((やめてくれ))っ」

 水を飲みながら話していく彼はいち早く死んでしまった。原因は溺死だろうか。

 彼らのボスは不思議な力を発動し、自らに付着する水を吹き飛ばしていた。操られて攻撃しかけた彼らを片手間で気絶させていく。

「……………………ムム」

 その男だけは不思議な現象を受けず、そのまま向かってきた。私はスタンガンを手にとって水溜まりに当てた。強烈な電撃が広まり、水溜まりが黄色に染まった。

 さっきまで騒々しかったこの二階が急に静寂に包まれた。

 水溜まりの上で倒れる岩男。この勝負は決した。

 勝利の余韻は一瞬の空白と静寂後の勝利の歓声だった。

「物理的な攻撃にはとことん強かったが、感電という特殊的な攻撃は常人の域だったか。まあ、死んでないといいな」

 死にかけのゼットを抱えながら黒が降りてきていた。

「おい。無断で侵入したこと忘れるな。さっさとずらかるぞ」

 その一声で人々は我に戻った。

 敵は戦意を失い、それでも向かってくる敵は返り討ちにあう。

「鉄、紐、私、出せる」

 肩に乗せられてた彼が四次元から金色のチェーンを取り出した。

「これは……使えるな」

 敵をそれで縛りつけ、その場を完全に制圧した。

 牙狼会の人々は倒れた仲間を拾い集めながら急いで建物から出ていった。その集団が出ていくことで蜜だった部屋が広く空いた空間になっていった。


「良かった。椎名先輩……無事で」

 私は心配しているのに彼女はどこか不機嫌そうだ。

「無事に決まってるじゃん。あんな奴、椎名の敵じゃなかった」

 彼女はすぐさま一階に降り、牙狼会の尾に合流した。


「ありがとう。あなたの尽力で犯人らを捕縛することができたよ」

「当たり前、私、活躍……Did you see achievement? This crime-solving was possible simply because there was me. I gave the masked man of that rock large damage simply because there was ability to extract my metal and was useful for the next arrest. You may applaud it more」


 彼は駆け出し、そのまま後尾へと合流した。

 一階に降りるとそこはもぬけの殻だった。もうレイや偉は先に帰ったのだろう。

「すまないが、あなたはここで待っててくれ。警察で一時的に保護されるべきだからな」

 被害者の女性を置いていくことになった。また、黒は警察に事情を話すといってその場に留まることにした。

 私は二人を置いて、牙狼会の列に加わった。

 建物から離れると事件の一悶着の終わりを強く感じていき、ドッと疲労を感じていった。


 太陽がオレンジ色から黒色になりはじめる頃、私はホーレに戻っていた。疲れた体で誰もいない店の椅子に座る。

 いつの間にか私は夢の中へと入り込んでしまったようだ。

 深い深い無の世界の中。その世界から飛び出した頃には(うぐいす)の鳴る朝の日差しが気持ち良い時間帯となっていた。

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