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六譚 立てこもり事件

 覆面男による誘拐事件は警察上層部を苦しめた。

 覆面男は女性を無事解放する代わりに魔力石を用意しろと要求してきた。

 拉致された女性を見捨てることはできない。しかし、魔力石は用意できない。

 魔力石は各国要人のトップシークレット。世の中に出回ってはいけない極秘情報。日本、米国、英国、中国。この四カ国が四つの魔力石をそれぞれ封印し続けている。

 魔力石の存在が世にしれ渡れば愉快犯が魔力石を狙いにくる。

 もし魔力石が奪われ、破壊されれば世界は混沌に包まれる。

 魔力石とは秘密であるべき危険物質なのだ。

「人質が取られている以上、警察ではどうにもできない。そっちで何とかできるか、ケー。いや、何とかしろ。そのための私警察だ」

 私警察。それは許されざる存在。けれども、警察は一つだけその存在を認めている。いや、その存在を作り出した。

 警察というしがらみに邪魔されず、ただ任務を遂行するのみ。もし彼らが人質を無事に救い出せなくても警察の尊厳は失われない。

『もちろん善処する。しかし、魔力石の件は非常に不安だ。各国が秘密裏にことを進めているため、状況が分からないが一つだけ分かることがある。……魔力石は、一つは、壊されている』

「ああ。由々しき事態だ。これ以上、魔力石が破壊されれば、異能使いが増え収拾がつかなくなる。そうなれば日本の社会は混乱するだろう。すぐに混沌の時代がくる。それだけは避けなければならない」

『任せろ。人質は必ず助け出す。魔力石の件も何とかする』

「心してかかれよ。魔力石のことを知っている。ただもんじゃないからな」

 建物の中から眺める外景色。

 騒々しい空気が彼らの周りに広がっている。





 背伸びしながら昼光を浴びて歩く。

 ホーレへと続く道を歩き、目的地に着いた。しかし、開店中のはずなのにホーレの扉にはクローズと書かれた立札がぶら下がっていた。

 近くの看板には、急遽、今日は店を閉めると書かれてある。

 思わず首を捻った。

 休んでいいという連絡もないためバイトはあるのだろう。

 私は店の中へと入ろうとしたが、鍵がしてあり入れない。今日のバイトは無くなったのかなと思い帰ろうとしたところ、鍵が外され扉が開く。マスターが顔を出した。

「奈路か。すまない。大事な要が舞い込んでな。とりあえず、入りなさい」

 店の中はヒリついた雰囲気が漂っていた。一つの机を囲んで先輩達がその上にある紙を睨んでいた。

 鍵をかける。この空間はホーレのメンバーのみ。

「今日は裏の仕事だ。気を引き締めろよ」

 その一言で私は気を張った。

 偉は真剣に紙から目を離さない。椎奈はブツブツと呟いている。レイはとめどない自由さを醸し出しているいつもの姿と違い真剣な態度をしていた。

 私も席に座り紙を見た。

 見取り図だった。赤い線が結ばれている。その経路で目的地へと進むのだろう。


「マスクを持つ男が女性を拉致した。その取引条件を政府へと通告しているものの、政府からの取引条件の開示は今のところない。その秘密を知ろうとマスコミの動きは活発化し、警察は救出に力を避けなくなっている」

「そこで、我々ホーレの出番だ。警察じゃない俺らならそんな面倒なこと考えなくていい。それに、こちらにはマスク所持者が二人もいる」

「いや、一人だ。今回の件は……危険すぎる」


 偉は鋭い瞳で外を見つめた。


「この事件は"牙獣"の件とは比べ物にならないぐらい危険だ」


 ひとまずマスターは私に情報を与えた。

 警察は彼が立てこもる周りで待機しているが状況は変化しない。また、建物の中では少なくとも何十名の人間が彷徨いているとのことで、組織での犯行であると分かっている。

 首謀者と思われる覆面男は人間離れした力を持ち、マスク所持者だと考えられる。それも警察を立ち止まらせる原因となっている。

 私達ホーレは下水道を通り、彼らの建物付近のマンホールから出て建物の中へと直行する。その後、力でねじ伏せ女性を保護しつつ覆面男を倒しマスクを強奪する。

 倒し終えれば、速やかにその場を離れ、後は警察に任せる。

 字面上の作戦をその通りにできるかどうかは分からない。


「直感だが今回はシャレにならないと思う。だから俺一人で行かせて欲しい」


 危険なのは分かった。だからって、置いていかれるのには納得できない。


「奈路も連れてって。能力が使えるからきっと役立てると思うんです」

「いや、今回は俺だけで行く。アンタらは店番しててくれ」


 一人先に外へと出ていった。敵のいる建物へと向かったのだろう。

 取り残された私達はただなんとも言えない気持ちで空を眺めるしかできなかった。

 本当にこのままここにいていいのだろうか。

 自責の念が襲う。私はこの活動を通して終わらない償いをすると決めたのではないのか。

「私も行きます」

 無意識的にそんなことを言っていた。

 他の三人もそれに頷いている。

「偉さんだけに任せられないからね」

「ちょっと暴れよっかなー」

 先輩二人はやる気だった。

「仕方ないよな。俺に着いてこい。もし危険を感じたらすぐにでも逃げること。前線に行き過ぎないこと。この二点が条件だがな」

 私達は一斉に頷いた。

 黒を先頭に目的地へと向かった。


 マンホールを開き、その中へと入る黒。私達もそれに続く。

 薄暗い下水道の中をひたすら走っていく。

 真っ暗闇の中を唯一照らすランプ。ランプを持つ黒からはぐれないように慎重に走る。

 マンホールを開けると眩い光が入ってきた。

 そこから出ると何人もの男達が待っていた。


「待ってたぜ。ホーレ諸君」


 敵だろうか。私達は戦闘態勢をとるとそれを制しするような態度をとってきた。


「俺らは敵じゃねぇ。協力させて欲しいんだ」

「どういうことだ。意味が分からないな」

「誘拐事件を起こしたのは硬岩組の奴らだ。奴らは霊丸組から硬岩組に名を変えてから何かがおかしくなった。組長や若頭と全く関わりのない赤の他人が奴らのボスになったり、犯罪行為を大体的にやったりと得体の知れない行動をし始めたんだ。元より新たなボスは得体の知れない奴だがな」

 彼らは一丸となって私達の味方になろうとしている。

「俺ら牙狼会は昔一度だけ硬岩組に借りを作っちまった。最近になって、急に奴ら借りを返せと言いよってきてな。それが、この立てこもりの際のガードマンとして何人か寄越せということだった。俺らのボスは奴らに妥協させ、ボスが用心棒として参加することで全て丸く収まった」

 つまり、彼らのボスは敵として参加しているということだ。

「それで、お前らはなぜ俺らに協力を頼み込む?」

「俺らはボスを助けられればなんでもいい。イカれた集団にいちゃボスが危険だ。だから、俺らで硬岩組を潰してボスを連れ戻す」

「本当だな?」

「ああ。牙狼会は裏切るような束じゃない。正々堂々とした正統派だ。お前らが拒否しようと俺らは協力するぞ」

「まあいい。勝手にしろ」

 戦力が増強した。

 ホーレと牙狼会は敵のいる建物に向かって進んでいく。


 あと少しで着くというところ、変人が目の前に立ち塞がった。

 ガタイのいい男性だ。上半身裸で黒いボディがキラキラと輝いている。頭には蛙の被り物をしている。

「待つ、あなた、私、連れる」

 片言で話していく謎の男。

「私、の、名前、ケー・ロ・ゼット。自粛警察、頂点、存在」

 さらっと、私達の元へときて私達と同じ方向を向いた。

「最強、の、私警察。仲間、なる。確実、に、役、立つ」

 さらに、変な男が仲間になった。


 ホーレのメンバー。奈路、椎奈、レイ、黒。

 牙狼会一同。二十二名。

 謎の男。ゼット。


 私達は敵のアジトへと入っていった。

 私達と硬岩組の戦いが始まったのであった。

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