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四十五譚 ラスボス

 黒い雨が止んだ。

 カコウの腹部は穴が空いていた。

「とっておきはね。悪魔に勝てやすくすること。予めチート=ヲ=カコウ氏の中に仕込んでいた爆弾を起動させて致命傷のダメージを与えたんだ。これなら勝てる可能性が出てくる。それにもう一つプレゼントするつもりだよ」

 悪魔は立ち上がった。なくなった腹の部分はおぞましく黒い物質に取って代わっている。

巫山戯(ふざけ)て貰っては困る。目的は世界征服。儂がいないと達成できない。だのに、なぜ負ける可能性を増やす」

「世界征服は目的のために必要な目標でしかないから。それに魔力石もいらなくなったし。もう目的のために君は単に邪魔なだけになったんだよね」

 鋭いナイフで切り刻まれ黒い血を流していく。耐えかねた悪魔は翼を生やして空へと逃げ、私達を見下すように視線を下に落としている。

「世界征服。不老不死。馬鹿げた夢なのに歴代の愚者はそれを追い求めた。昔はその理由は分からなかったから馬鹿馬鹿しいと嘲笑ってたよ。けどさ、このマスクを手にしてからは全てが変わった。凄いよね。力を手にするって」

 愛溜は私達の元にやってきた。

「目的のために一緒に戦ってあげる。あの悪魔、世界を……人間をも滅ぼそうとしているんだよね。正直、人間を敵にしてる。だから、人間の私からしても敵なんだよね。だから、君達に協力するよ。これがもう一つのプレゼント」

 仮面の彼女が唐突に仲間になることが全く納得できない私達がいた。特に、櫛渕は納得できていなかった。強く襟元を握りしめ睨みつけていた。

「巫山戯るな。遊び(ショー)の元凶が仲間になると? 許されると思っているのか」

「いいのかな……あの悪魔に勝てなくても。勝てなかったらウチらが死ぬだけじゃなくて人間そのものが滅亡するよ。戦力は少しでもあった方がいいと思わない?」

 彼は手を弛めた。

 弱まった手を払いその場で薄笑いを浮かべていく。

「一つだけ手短に聞かせてくれないか。なぜこんな真似をしたんだ」

 横からくる言葉に愛溜は丁寧に返していく。

「全ては世界の権力者になるためだよ。いつだったか忘れたけど、黄色の軽トラから落ちたマスクを手に入れてから人生が変わった。誰も愛溜のこと認めてくれなかったのに、その日から景色が一変したんだから」

「黄色、の、軽トラ。仮面、つまり、マスク……。omg、私、の、トラック、だ」

「世界の権力者になるのも夢じゃなかった。悪魔を復活させて、人間の上に悪魔を立たせて、その悪魔の上に私が立つ。そのために動いてきた。全てはそのためなのさ」

 雲が渦巻いていく。

 悪魔に力が蓄えられていく。

 放たれる強力な黒い炎。私は強烈なゲリラ豪雨を降らせて炎を消し去った。

「人間風情が。上位種に逆らいおって」

「何か言葉を話せるのは器の人間のお陰、日本語を喋れるのはウチら人間のお陰。わざわざ君に費やした身にもなってよ。普通ならそれ以上のリターンは当然だと思うんだけど」

 愛溜はナイフを強く握った。

 地面から拾った仮面を懐へと入れていっていた。

「私からも一つ聞いていい。どんな能力持ってるの。人と人をカップリングにする力じゃなかったの?」

「そうだよ。それもできる。ウチの能力は「()()」なんだよね。自由に立場を変えれるんだ。もちろん、他の人もね」

 立場。それは実戦では使えないが、使い方次第では相当強力な能力である。

「これを使って、人と人とをカップルの立場に変えたり、逆にカップルの立場を消失したりできる。他にも使い方は様々さ、組織の頭よりも上の存在になったりもできる」

 真っ黒い斬撃が放たれたがリスタはそれを喰らい去り、敵に目を向けず振り返った。

「おい。てめぇ。もしや霊丸組を乗っ取ったのもてめぇじゃねぇだろうな」

「そうだよ。霊丸組のトップ二人の立場を奪って、代わりに手下の岩男を頭にしたのさ。名前も変えたから乗っ取ったというレベルじゃないけどね」

「なるほどな。愛溜。黒崎黒が公安ということを掴んだのもアンタの能力によってか?」

「偉先輩流石です。立場を警察に変えて探りまくったんですよ。立場はストック式でその立場を得るには人から立場を奪わないといけない。日本だとそれで一苦労したんですよ。ようやく有用な立場を手に入れても、魔力石は公安の黒崎黒が握っているってことしか掴めなかったんだよねー。それに較べてイギリスや中国は仲間になら詳しく教えてくれたんだけどね」

 真っ黒い氷が飛んでくる。

「『火魔・鉄火肌』話している最中なんでな、少し蚊帳の外にいてくれ」

 炎をまとう鬼のような化身が暴れまくり氷を粉砕し溶かした。

 次に黒い雷が放たれた。

三十(サーティーン) : 巨壁(ウォール)直堅(ストリート)

 土が持ち上げられ土の壁ができる。その壁が雷を防いだ。

 すぐに土の壁は黒い疾風により粉砕された。

「マジかよ。じゃあさ、警察にも捕まらないんじゃね」

「いや、捕まるだろう。例え上官が罪を犯せば、躊躇いなく我々は捕まえに行く」

「うーん、やっぱり立場にも限界はあるからなー。まあ、捕まっても裁判で罪に問われないように仕組むこともできるし応用はきくけど」

 強烈な黒い水の波動が放たれた。

 近づいていくその水は突然止まり、そして一人でに動いて悪魔に直撃した。

「きゃはっ。直撃したー」

「くっ。人間如きに傷を負わされるなど屈辱だ」

 愛溜は私の横にきて、悪魔を見つめた。

「話は終わりね。倒そうよ。あの()()()()を。異界の頂点にすらなれない下に立つ存在……悪魔の一人をさ」

「癇に障る。裏切ったことを後悔させる。今なら赦すぞ。土下座して命を乞え」

「はぁ? 何その態度。散々尽くしてきたのに、四天王戦だって全て君のため。他にも君のためにやってきたことあるよね。それで君はその態度。それに想像以下の立場だし……ほんとに期待外れ。これ以上ガッカリさせないでちょうだい」

 強くキザなナイフを握りしめていた。

 私もナイフを強く握りしめる。それと同時に雨の準備もしていった。

 後ろにいる仲間達も臨時体制を取っていく。

 その場に天変地異とそれに対抗する天変地異が睨み合うように相手を威嚇しあっていった。

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