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三十四譚 対決 悪頭

 次々と幹部達が敗北していき窮地と追い込まれている。

 春秋は戦闘に向けて人を収集させていたこと、日にちを早められたことなど策略の点で警察に敗北していたことを悔やんでいた。

 機械の声。壁の向こう側に仮面の存在がいる。見えない場所で話しかけていく。

「もう逃げた方がいいと思うよ。戦える者の中で残ってるのはもうキミ達しがいないのだから」

 その言葉を残し、どこかへと消えた仮面。

 春秋は彼の助言を受け入れ逃げることにした。


 彼の付き人であるアサミヤという者が先に進んでいく。

 その道とは違う道を春秋は進んでいく。廊下に向かって毒の霧を放ち廊下にいた敵や味方構わず毒霧の餌食にしていった。

 警察の軍隊を毒霧で破壊していく。

 警察達が待ち構える軍隊に突入していく。ガスマスクを装着した兵隊も存在したが、彼らは武器である銃で射たれて死んだ。何せ一面紫色の毒霧の中、彼は異能の力で視界は良好だからだ。

 毒霧による被害も受けない。その強さを活かして敵を消していく。

 すぐに警察の軍を抜け、普通の路地裏へと戻った。

 アサミヤも別の場所から陸へと戻っており路地裏で合流した。


 敵が逃亡したことを知り引き上げていく警察達。その中で櫛渕は毒霧によってもがき苦しんで死んでいった仲間達を見て、持ち合わせた令状に八つ当たりしていた。


 このような壮絶な戦いが繰り広げられてきた中、私はまだそこに辿りついていなかった。

 翔のお金でタクシーを乗って、たどり着いた町。そこから見知らぬ道を案内を頼りに進んでいく。

 私達が小道を走っている中、怪しい二人と通り過ぎた。

 愛溜から送られてきた敵の頭の写真。まさにその人物だった。

「ちょっと待って。あいつかも。ホーレの敵対する組織のボス」

 彼は振り向いた。写真の顔とその顔が一致した。

「あいつが毒島春秋か」

「ちっ。追っ手か。殺れ、アサミヤ」

 アサミヤが殺気を放ち私達に立ち塞がる。その間に彼はそのままスタスタと歩んでいってしまった。

 私達とそのアサミヤとが戦うことになった。

 目元しか見えない服のせいで、アサミヤがどんな中身かは分からないが、印象は掴めた。暗殺のために生きる無心の人間だ。

 彼は長い刀を取り出した。

 周りに鋭い蔓が蔓延り始める。

「若頭のためにもここで死ね」

 彼女はそのまま殺しにきた。私の懐に近づいてくる。このまま何もしなければ斬られて殺される。

「奈路には指一本触れさせないぜ」

 地面にある蔓が彼女を捉えようと動く。

「『(ラブ) : (トラップ)』」

 コンクリートの壁を(つた)う蔓が四方向からアサミヤを狙って進み、蔓が彼女を捕まえた。その勢いに押され刀を落とし、彼女はそのまま捕縛された。

「ラブ・トラップ。これはフィールドを有利にする技さ」

 すぐに近くにいた警察がやってきた。

 彼女は警察によって逮捕された。


 敵のボスは完全に見失ったため、仕方なくホーレの仲間達がいる所へと向かっていくことにした。

 私は歩きながら口を開いた。

「ありがとね。翔のお陰で勇気が持てたよ」

「そうか。それは良かった。今なら告白とかもできるんじゃないか」

「うん、そうだね。私ね、偉のことが気になってたんだ。だからさ、この戦いの一悶着終わったら告白してみようと思う。ほんとにありがとう」

「お、おう。そうか。それは良かった」

 彼は歯切れの悪い返事をしてきた。

 そうこうしている間に、私達はようやく本拠地へと着いた。

 そこには疲れ果てた面々がいた。仲良く二人で手を繋いでその場に座り込む椎奈と澪。現場指揮を取っている黒。その補佐をしている偉と凛。疲れて座り込むリスタ。普通に立っている愛溜とビビ。

「ズル早退したんだー。悪いのー」

「いや、ズル休みした愛溜には言われたくないんだけど」

 終わった後の独特な穏やかさに身を任せていく。

 まだ勝った訳ではない。それでもこの一服を味わなければ、心身ともに持たなくなる。

「大丈夫なのか。学校は……」

「うん。それよりもホーレの方が大事だったから」

 青い空にはくねっと曲がった白い雲が流れていた。

 殺伐とした空気の中、安堵感を感じていった。



 この戦いで多くの犠牲者が出た。

 警察、ラグナともに被害は多数。ラグナの幹部ラグナ六匈の内三名が戦死。一名が逮捕。二名が寝返りを打った。また、ボスの側近であったアサミヤという女が逮捕された。ただ、今回の目的でもあるラグナマフィアのボス春秋には逃げられた。

 警察は春秋よりも上に立つ存在がいることを入手。裏に仮面の男(女?)がいるということだけが情報として入手した。

 仮面の存在に私はピンと来ていた。

 もしかしたら全ての元凶かも知れない。私は仮面の彼(彼女?)を怪しんでいった。



 学校では、私達の行動が噂になっていた。

 翔がいち早くそのことに言及した。その一言が戦場な間に合わず役に立てなかった、行ってもほとんど意味がなかったの意味で「駄目だった」と呟いた。

 それが彼らには告白したけど駄目だったと変換され、翔は瞬く間に私にフラれた人として認定された。

 まあ、私にも好きな人はいる。翔が告白していたらフッている。それは置いておいて、告白すらもしていない翔は気の毒だなと思った。

 いつもの退屈な授業も今日この日から退屈とは思えなくなっていった。私の目の前にあった白い靄が払われたみたいだ。





 密かな山奥で待機する者達の中に仲間が一人増えた。

 毒島春秋。彼は四人目としてそこへとやってきた。

 岩男。女漢。雪嬢。そして、悪頭。彼らは密かな場所で仮面の存在に頭をツンずく機械音で話しかけられていた。

「負けちゃったね。まあ、全て予定通りだけど」

「どういうことだ。負けるのを見越してただと?」

「逆に負けて貰わなきゃ困ってたからね。だって、そうじゃなきゃ開かれないでしょ、世界サミット」

 世界サミット。それは二月の末に行われる首脳達による会議である。

「そのサミットで何かあるのか?」

「うん。そこで彼が三つ目の魔力石を破壊してくれる予定さ。その後はキミ達の出番だよ。みんなで日本を崩壊させ、世界を作り替えるんだよ」

 仮面による最大級の悪巧み。

 最も恐怖な企みが考えられている。

 真っ暗なオーラが山奥から溢れていった。

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