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二十二譚 酷く脆い心と

 学校での放課。私達は友達といた。

 友達の茉莉花(まりか)が小林の悪口を垂れ込んでいた。きっと彼氏ができて私達との関係を蔑ろにしたのが気に食わなかったのだろう。気に食わない人がいればこうやって悪口を広め孤立させる。

 彼女は知らない間にあっという間に孤立させられた。

 彼氏にもその噂が渡り、そしてフラレ、彼女は居場所を失った。

 全ては茉莉花の仕業だ。彼氏には直に手回ししたのだろう。近くで見ていて本当に嫌らしい性格をしているなと思う。敵には回したくない。

「ヤコさん。大丈夫? 友達の私が悩み聞いてあげようか」

 そして、孤立した人に手を差し伸べ無理やり依存させる。依存させられたらもう裏切りは許さない。見えない奴隷。私は陰で彼女によって依存症となった人達をこう呼んでいた。

 可哀想に……。

 私は哀れんでいた。

 その時までは他人事だった。哀れんであた間に、私もいつの間にか孤立させられていた。そうだ。私は友達よりもバイトを優先してきた。それが気に食わなかったのだろう。

 手を差し伸べる茉莉花。

 もし手を取ればまた長い長い戦いが始まる。孤立した私には仲間はいない。一対複数。結局勝てないのに抗いたい気持ちでいっぱいだった。

 何でこんな小汚い奴が友達だったんだろう。そして、偉い立場になっているのだろう。

 全てが気に食わない。

 ウザイ──

 席から立ち上がり咄嗟に突き飛ばした。その上に降り注がせる黒い雨。彼女は雨に触れる度、皮膚が溶けていく。ドロドロに溶けていく体。泥のようになった体が廊下に敷き渡る。

 殺してしまった。

 殺す。殺される。

 思い出していくショッピングモールの雪の下に現れる屍。それらがゾンビのように現れ私を襲ってきた。そして、私は今なぜかショッピングモールにいて、ゾンビに追われている。逃げ続けているといつしか山奥の山荘へときていた。そこでの死人もゾンビとなって襲いかかってきた。

 恐い。助けて。そんな弱音を吐きながら動かないはずの足で無理やり走っていく。

 いつの間にか教室に戻っていた。

 気付けば私は茉莉花だけじゃなく和名田も殺していた。

 超強力な酸性雨。簡単に人を殺せる力を手にしていた。それを悪用して人を殺している。

 もう一度考える。人を殺している。

 私は叩かれた。痛みはないが叩かれた。叩いたのは小林だった。大切な友達を簡単に奪ったのだから当然だった。けれども、私は容易く堪忍袋の緒がきれて小林すらこの世から消えてしまった。

 いつしか教室から人がいなくなっていた。

 町から人がいなくなっていた。この町に降る酸性雨が多くの人を奪っていた。

 あれ、私の周りに人が誰もいなくなった。

 孤独が心を押し潰していく。

 誰か助けて、って呟いても誰もこない。不安とそれからくる恐怖が心を壊していく。酷く脆い心が悲鳴をあげている。

 一人こぢんまりと縮こまっている。

 もう死のうと首吊り縄を用意した。といっても、いつの間にか持っていた。

 そこに現れた偉。

 彼が私を包みこんでくれた。優しい炎が崩れ消えた心の穴を埋め合わせてくれた。

「死なないで貰いたい。お願いだから」

「……何で。私を助けるの。従業員が減るから?」

 何を言ってるんだろうか、私は。

「そんな訳ないだろ。大切な人だから死んで欲しくないんだ」

「大切な人?」

「ああ。俺はアンタのことが好きなんだ」

 燃えるように温かい。

 孤独で真っ暗闇のこの場所に眩しい光が注ぎ込んできた。

 炎の明るい光と時計から響く煩いアラーム。

 アラーム?

 私を押し潰すように乗っかかっている布団を押し上げた。そこは布団の上、さっきまでの一連の流れは全て夢。悪夢のような友達の死も夢。最後のあの言葉も、嬉しく思った気持ちも夢。

 ため息を吐きながら、アラームを止めた。

 今日も一日が始まりを迎えた。





 中国における魔力石の破壊は未確認生物の出現をさせただけではなかった。ほんの一部しか出回らなかった特殊マスクがより出回っていった。

 モンスターの登場で警察や自衛隊は人手不足となり機能が薄れていく。それに連れ、治安も悪くなっていった。マスク所持者は容易く悪の根源にもなっていった。

 元々あった反社会的組織だけでなく最近できた暴力団なども新たな次元での世界に崩壊や吸収を繰り返し、ある悪の組織がほとんどの反社会的勢力を一束にまとめた。


 最も凶悪な組織となったラグナマフィア。


 ボスの毒島(ぶすじま)春秋(しゅんじゅう)はその実力を持ってして他の勢力をラグナに吸収、そして悪の王となった。ラグナマフィアの幹部は実力主義で選ばれた強者揃い。

 包帯を口元にグルグル巻きにした春秋の付き人。命令には忠実で必ず遂行する秘書を兼ねる人。

 新暴力団組織のロウトのボスをしていた現ラグナ幹部。若さを感じさせる勢いとカリスマ性を併せ持つ男。

 現在はラグナ幹部だが、MADCROSSという長く続く反社組織の三下だった奴。唾液ダラダラの舌─人間の舌とは違う極太のもの─を人間の限界以上まで伸ばし爬虫類のように這っている変態。

 ラグナの中でも長老である貫禄あるヤクザで現幹部。仁義を持った任侠の男。

 裏では単独暗殺者。現ラグナ幹部。美貌と能力を兼ね備えた女性。その姿は物陰に隠れ見えないが、陰で薄く笑っている。

 白いドレスに身を包み白いぬいぐるみを持った可愛いものを常に追い求めているラグナ幹部。その正体は伝説とされた暗殺者の家系。その次女。


 彼らは国を乗っ取ろうと企む悪い組織。

 その強さは折り紙付きだ。


 覆面岩男、雷女漢、雪嬢の目撃がなくいない今、その組織が彼らに変わって日本に猛威を振るっていたのであった。

 この新たに現れた組織ラグナマフィアとホーレは、大激突することとなる。その予兆はどこにもない。あるとすれば、雲の形が歪だったことだけだろう。

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