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二十譚 崩壊への序章

 ホーレは工事を急がれていた。

 山荘での戦いは無事黒の救出成功で終えた。ホーレの面々では偉が軽傷だったぐらいで、他は無傷で済んでいた。ただ、リスタは腹部を剣で刺されていたらしく病院へと運ばれたが、今日には無事退院する予定のようだ。

 あの日、大切な人の死を想像したことによって、私の行動の善悪を深く考えさせられるようになった。

 覆面男の立てこもり事件。そこで死んだ牙狼会。

 ショッピングモールでの事件で大量に死んだ多くの人々。

 山荘で死んだ敵の数々と警察達。

 みんな誰かにとって大切な人に違いない。そして、彼らに対して丁寧に弔うことをしてこなかった自分が痛まれる。その場にいながら、死にゆく人を見送ることがきっとその人を報わせるのだろう。

 私は敵味方関係なく墓穴の花に手を添えた。

 こうしないと、私が私じゃなくなる。殺人鬼のように、人の心を失ってしまいそう。人を殺しても何も感じない人間に成り果てたくはない。


 私達が館へと攻め入ったあの日、中国では大変なことが起きていた。

 ある日、中国にある魔力石の在り処をネット上にバラされていた。

 その情報を知り得た愉快犯かそれとも仕事人か、幾数もの人間がそれを狙い、絶え間なく攻め続けられたせいか、そこにあった魔力石は破壊されてしまった。


 その日から中国本土を無数の災害が襲った。

 地面は割れ、割れた場所から噴火した。台風は常にその場に留まり続けた。

 崩壊していく社会。その中でマスクを手にした者は身分関わらず人々を支配する者になった。彼らの横暴が中国をさらに崩壊へと導く。

 魔力石が破壊されてから数日後、中国は国としての機能を失い、国として崩壊したのだった。つまり、一つの国の消滅だ。

 群雄割拠の現状、その社会はモンゴルやミャンマーに至るまで侵略の可能性を含んでいた。近隣の国は警備を強化していった。


 世界的にも中国の消滅は大問題となっていた。それもそうだ。大国の消滅など誰が想像できただろうか。

 さらには、未確認生物の多数目撃された。動物ではない、今までの常識にとらわれることない生物(?)である。それによって、人間に危害が与えられたという報告もあり問題となった。

 このような問題に直面したため、国連で新たな組織が作られた。魔力石に対する組織だ。

 魔力石に関わったことのある重役の中で「チート=ヲ=カコウ」がそこのリーダーとなった。彼はイギリスの人間で、謎の悪人共から魔力石を守れなかった人間である。その苦い経験を持つ彼は、二度と魔力石を破壊されないという強い意志を宿すに値する人間だった。


 時代の流れ目。

 新たな時代に向かって世界が劇的に変わりはじめていった。


 全ては魔力石が関わっている。






「もうキミ達には期待しないよ」


 李ウォン、オメメ=デンゲキ、郡山望良。

 三人は電話越しの仮面の人に何も出来ず頭を垂れるしかできていなかった。度重なる失敗が彼らの信用を落とした。一方で中国の魔力石の破壊など成功を収めた仮面。その差はもう天地の差に感じられる程に。

 誰かを隠すために編成された変声。

 その声を聞く度に無能と有能の差に頭が上がらない。

「誰にも顔がバレない所で寝ていてくれない? キミ達は失敗で顔がバレているんだから」

 誰もいない密かな山の中。

 隠匿された場所。牢屋よりかは自由はあるが、一般的には自由はないが見つかることもない。

「全てはホーレにあり。だから、ホーレに近づくことにしたよ。もちろん、キミ達みたいなヘマはしないよ。次に呼ぶ時は、魔力石破壊後の……、新たなステージに入った時かな」

「おひとつ聞かせてください。新たなステージとは何のことでしょう」

「それはお楽しみだよ。けど、一つヒントを教えようかなー。マスクの能力は全て異界から流れ出てきたもの。その異界には序列のある未確認生物が存在している。その頂点こそ魔王。その下に悪魔がいる」

 未確認生物とは最近目撃された存在である。

 そして、それには食物連鎖が存在している。その頂点こそが魔王であった。その下には悪魔が存在している。

「──様、それがどうかしたのか気になりますわ……」

「悪魔はもうこの世界に降りたっているかもね」

 そこで通話が切れた。

 仮面はホーレに近づき、作戦をはじめる。その作戦に三人は用なし。信頼を失い出番を失った三人は秘密の部屋でトランプで暇を持て余していった。





 秘密組織ホーレは秘密を保ったまま、警察と連携できる組織となっていた。

 日本にも中国の崩壊という国際問題を重く取り扱っており、能力や未確認生物に敏感となっていた。それに対応する武装組織も組まれていく。それでも足りない戦力を秘密組織ホーレが補うこととなったようだ。

 警察とホーレとの関わりなどは私にはちょっと分からない。理解が追いつかないので、とりあえずホーレは存続、警察の手を借りれるようになった、とのみ考えている。

 新たなホーレの内装は何色にも染まれるシンプルさを持ち合わせ、異文化のそれぞれのフェアに合わせて内装を変えられるような仕組みが作られていた。

 新たなカウンターは木材の素材の色が光を反射し輝いている。

 少しだけ間取りも変わり、私達関係者の裏の場所が多少広くなった。

 まだ営業はしていない。未だに準備中だ。

 試しにかけているロシア風のBGMがどこか乗りに乗らせてくる。壁につけるための青の装飾が束として箱に入っている。これからは、ロシア風に店を装飾する仕事があった。

 カランコロン。

 まだ営業していないので客ではない。

 やってきたのは警察の服装、青い制服を着た男だった。

「この度、ホーレの警備に務めることとなりました。巡査部長、土岐(とき)櫛渕(くしぶ)です。以後、よろしくお願い致します」

 敬礼とともに綺麗な礼が行われる。

 幾何学模様の美しいフェイスシールド越しに見える彼の顔は真面目なイメージを与えていた。

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