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エピローグ



「どう、いう、こと...ですか?」


歯切れ歯切れにメルは言葉を紡ぐ。


「そのままの意味よ、一言で表せば異常...でもこれは、そんな一言で片づけられるほどのものじゃないわ」


「そ、そんなっ、僕ってそんなに弱いんですか...!?」


「違うわよ...!!逆よ逆!強いって意味よ!」


「...へっ??」


私の言っていることが理解できないようで、メルは目をぱちくりさせながらその瞳に私を映している。


解析の結果、メルの手首に嵌られていた腕輪は封じの腕輪、それも三段階式のものが嵌めらられていた。

三段階式の腕輪とは、強力な封印術が3回重ね掛けされているもののことで、そっとやそっとじゃ解かれることのない強力な腕輪だった。




幾らぐらいするんだろう...?




話が逸れたわ。


ということは、それだけの力をメルは有しているという事。

そして、メルはこの腕輪の意味も、ましてやこの腕輪を嵌める意味を分かっていなかった。

そこから考えられることは一つだけ、メルの知性がまだ確立していない時期に腕輪を嵌めたという事。それは即ちなんらかの暴走を起こし、封印せざるを得ない危険な状態だったと分かる。



だからメルは自分の力に気付かないし、腕輪の意味も知らない。



「ねぇメル...その腕輪はどうしたの?」


「腕輪ですか?」


「えぇ...ちょっと気になることがあって良ければ教えてほしいのだけど」


「いいですよ、これはですね...生まれた時の贈り物だそうです」



生まれた時の贈り物ね...。


う~ん、本当はあなたの精霊力を封印するものなのよって教えたら悲しむかしら。

けど、この封じの腕輪って結構値の張るものだから贈り物っていうのは本当かもしれないわよね。


うんまあいいや、どうせ言わないと戦力にできないし。



「その腕輪って封じの腕輪って言って、よっぽど力が強くない人じゃないと付けてないのよね」


「...は?」


「うん、分かるわよ、自分は弱いって言いたいんでしょ、それ絶対違うから」


「...はぁ...」



あら、メルったら信じられなくて呆れてるわ。

これは決定的な証拠を見せない限り信じなさそうね。



じゃぁもう腕輪外しちゃえば?って思うかもしれないけど、こんな厳重に封印されてたんじゃ解いたときどうなるか分かんないし、もしかしたら暴走するかも...。



うん、取り合えず一段階だけ封印を解こう。



「メル、今からあなたの封印をちょっとだけ解くけど違和感があったらすぐに言ってね」



はじめてつかう魔法だからどうなるか分かんないけど、何事も挑戦することは大事よね。

隣でメルが「なんか嫌な予感がする...」とか何とか言ってるけど知らない。



解除(アンロック)


魔法の発動と同時に腕輪が光りだす。


「うっ...」


「メル...!?」



急に呻きだしたメルの隣に腰を下ろし、「大丈夫?」と声をかけた。


「だ、大丈夫、です...」


「全然大丈夫そうに見えないわ...ちょっと見せて」


私はメルの手をそっと持ち上げ腕輪を確認する。

金色に輝く腕輪に、生き物のように文字が駆け回っている。


じっとその様子を見ていると、やがて文字は消えていき、光が収まった。

メルの腕には最初と同じ輝く金色の腕輪が嵌められていた。

ただ一つ違うのは、そう、メルの力だ。



「うそ...」


メルは視線を彷徨わせて混乱している。



「そんな、そんな馬鹿な...ぼくは、僕はっ...弱いって...混精だから、役立たずだって、いらないって...嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だッ...!!」



「ちょ、メル...!?」



ど、どうしたの!?急にどうしたっていうの??


メルに私の声は聞こえないようでうわ言のようににブツブツと呟いている。



「嘘だッ...じゃぁなんで。なんで僕を捨てたんだッ...!!」


「...!!」


今、なんて言ったの?

捨てた...?メルは捨てられたの...?


...!!



そう言えばそうだった、メルは設定で精霊界から追放されていた。

でも!それはヒロインに出会ってからのはず...どういう事?時間軸がずれているの?それともこの世界はあのゲームと酷似した世界だっていうの??


分からない...だんだん分からなくなってきた。




じゃあ何か...?

これから私が折るはずの死亡フラグは最初から立つことのないうフラグだって事か...??


ふざけないでッ...!?


それじゃ...それじゃノア様を救えないかもしれないじゃない...!

もしも、もしもの話だけど、ノア様がもしかしたら死なない世界なのかもしれない。

でも、だからってまだどうなるかだって分からないし...。



あぁもう、なんでこんな大事なことに気が付かなかったんだろう!!


これじゃあ最初からやり直しじゃない...。

私だっていつ死ぬかも分かんないし、もしかしたら明日死ぬかもしれない、余命なんて言ってるけどそれが本当のことかも分からない。ただ一つ言えるのは、私の胸に刻まれた痣が呪いの類の陣だという事。それ即ち、私に呪いがかけられているのは事実だということだ。




どうしようどうしようどうしよう...どうしたらいいの...??


私は急に足が鉛が付いて重くなったみたいな気持ちになった。

そこからボロボロと折れていくように、足場が無くなるように...。



「...うぅ」


急な吐き気が込み上げてきて、私は両手で口を押えた。


そんな私の様子にメルが気付いたようで、先ほどの呪詛を吐くような雰囲気が無くなり私の背中を摩ってくれた。



「だ、大丈夫ですか...!?」


「うぅぅ...」



それからメルは私の背中を摩り続け、私が落ち着くまで離れることなく傍にいてくれた。



「どうしたんですか...?」


吐き気が収まり、私は詰めてた息をゆっくりと吐きだすと、メルに答えた。



「ちょっと、嫌なこと考えちゃったの...」


「嫌な事...?」


「えぇ...とっても嫌な事」


「...お聞きしても...?」



メルの言葉に私はゆっくりと頷いた。

私も知らず知らずのうちに根を詰めていたようだ。

ここは誰かに話を聞いてもらって役になった方がいい気がした。



だから私は、自分が話すのだからあなたも話してねという条件をつけて話した。




本当は予知なんて力持ってなくて、前世の記憶があること。

呪いのせいで18歳までしか生きられないこと。

助けたい人がいるけど、どうやって助けたらいいか分からなくなってしまったこと。


洗いざらいすべて話した。


そして、メルは信じてくれた。

嬉しかった。



メルも同じように全部話してくれた。


メルはやっぱり幼い時に、それも自分を生んだせいで母親が死んでしまったことを知った。


それを知って思う、メルはきっと暴走して生んだばかりで体力のない母親を殺してしまったのだと。


それが原因でメルは水の精霊の一族からも、光の精霊の一族からも忌み子として扱われながら育ったことを知った。



「僕は母は光の精霊王だったんです。でもその王を僕は死なせてしまった。だから嫌われるのは当たり前のことです...」


そんな風にメルは瞳に涙を浮かべながら語った。




私はそっとメルを抱きしめ、、メルがずっと聞きたかった、言ってほしかったであろう言葉をかけた。



「メル、私にはあなたが必要です」


そして私にも誰か信用のできる人が必要だった...そうこの心の弱った精霊の様な。


「...!!」





「だって、こんなに秘密を共有した仲だもの、これはもう友達になるしかないわよね?そうでしょうメル」


「とも、だち...?僕と友達になってくれるんですか?」


「えぇなるわよ、というか既にお友達でしょ...?」


「っ...僕は、忌み子ですよっ...?」


「それは精霊の話でしょ?私は人間だもの関係ないわ」


「そ、そうですね...はは、確かにそうだ、関係ない...」


「うん、関係なんてないわ」



そう言うとメルはははっと笑った。

どうやら吹っ切れたようだ。

良かった良かった。




「...これからよろしくお願いします...主様」


「主様じゃないわ、私たちは友達なのよ、マリーと呼んで?」


「っ!...はい、マリー、これからよろしく...」


「こちらこそよろしくっ...!」



私たちは二人して笑って、握手をした。

それからたわいない話をして、リリスが帰ってきてからは、メルを紹介して(驚きすぎて腰を向かしていたが)三人で色々話した。




メル:「マリーって前世入れたらいくつぐらいなの?」

マリージュア:「え~と、19歳で死んだから精神年齢的に29歳ね」

メル:「へ~じゃぁ年下なんだね」

マリージュア:「え、あなたって今いくつなの?」

メル:「え~教えな~い」

マリージュア:「はぁ!?乙女が勇気を出して暴露したのにそれはなうでしょう!?」

メル:「あははは~」

マリージュア:「ちょっと待ちなさいメル~...!」



とこんなやり取りがあったんじゃないでしょうか。

次回は番外編です。

お読みいただきありがとうございました。





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