友達と言う名の戦友が出来ました 1
新キャラ登場です。
今日も今日とて私は書庫に入り浸り魔術の特訓を行っている。
といっても重要な古書などもたくさんある場所なので、本で説明を読みながらイメージするだけに止めている。
「リリス、ミルクティーを入れてくれるかしら」
「かしこまりました」
少し喉が渇いたのでリリスにミルクティーを頼み、私は上級の魔術書をとった、のだが。
取ってから後ろを向いたとき視界に入った鏡が私の思考を停止させた。
ちょっと...いや少し太った気がする。
気のせいなんてことではなく、若干だが頬が膨らんだような気がするのだ。
いや、分かる、分かるぞ、私が今リリスに頼んだように喉が渇けばすぐにミルクティーや紅茶などを入れてもらう私が悪い。
だけど!
この世界じゃ水を飲むなんて庶民のすることなんですよ!
貴族様はみ~んな財力をしめすために高価な茶葉や砂糖を買うのだ!
だから、私が喉が渇いたから何か用意してと言えばリリスは紅茶やミルクティーを入れてしまうし、そこに水なんて選択肢がないのですよ。
前世を思い出した今、喉が渇いたから紅茶を、ミルクティーを飲もうなどと日本じゃ考えられない...。
...いったいこの贅肉をどうしてくれよう。
と、そんな風に思っていたらリリスがミルクティーを入れてカップを乗せたワゴンを押して部屋に入ってきた。
「マリージュア様、ミルクティーをお持ちしました」
「...」
どうしよう、自分で頼んどいてなんだけど、はっきり言って飲みたくない。これ以上糖分を体に入れたくない。どうしよう。
「リリス、ミルクティーなのだけど...」
「どうしましたか?」
「...これからは水だけにしてくれないかしら?」
「え...え!?」
「いや、あの、最近ちょっと、ちょーっとだけ太った気がするの、だからしばらくは紅茶とかミルクティーは控えようと思って...だめ?」
必殺、純粋無知な目!
私は発動と同時に顎を20°程下げ、胸の前で手を組み、上目遣いでリリスを見つめた。
「くぅ~可愛い!お嬢様かわゆうございます!!...だけど、う~ん」
「お願いリリス!」
私の必殺技をもってしても渋るリリスに、ついでとばかりに涙を浮かべる。
これでうるうるのお目目が完成だ。
そんな私にリリスはしかめっ面をしたが、結局は折れてくれた。
「も~!!分かりましたよ明日からは水をお持ちいたします!!」
と早口に言うと頬をぷぅと膨らませたので「やった~!ありがとうリリス!!」と言いながら私はリリスのもとに駆け寄り、ぎゅっと抱き着いた。
確信犯とか知らない。そんなの私に甘いリリスと私の美貌が悪い。
只でさえ社交界の華と言われていた美女の母と美男の父を持っているから。私もお兄様も美形なのだ。
お母様譲りのピーコックブルーの髪にお父様譲りの琥珀色の瞳は、流石ライバルキャラとだけあってヒロインと引けを取らない美形だ。
リリスはそんな私の行動に小さくため息をつくと「旦那様達には秘密ですよ」と言って微笑んだ。
素朴で可愛い微笑みに私の心は癒された。
◇ ◇ ◇
「あれ、この本なんだろ」
私は視界の端に映った本に目を向けると、その本を手に取った。
「精霊...召喚...?」
そんな題が綴られた本だった。
精霊、召喚...精霊召喚!?それってあれ?メルみたいな精霊を召喚できる魔法ってこと!?
嘘でしょ!?
私は急いで本を開き、ざっと読んでみた。
精霊召喚
精霊召喚とは、精霊界にいる精霊を呼び出すもの。
呼び出した精霊は、契約することが可能であり、その際契約者は精霊の力の行使することができる。また、精霊には精霊力があるが人間界では精霊力が得られない為、契約者が精霊力を提供することになる。ただ、精霊力は精霊界に帰れば自然と得られるので、提供するのは精霊が人間界から離れた際少しでも精霊力を失った場合などである。また、回復する際には契約者が精霊に精霊力を提供すれば回復は可能である。
尚、精霊は気まぐれのため契約主が気に入らない場合帰ってしまうので、無暗に精霊を刺激しないこと。
補足として、精霊召喚は契約主に精霊力がない場合は召喚は不可能とする。
そんなことがざっと書かれていた。
だが、最後のが気になる。
『精霊は気まぐれのため契約主が気に入らない場合帰ってしまう』
『契約主に精霊力がない場合は召喚は不可能』
それってやばくね?
精霊力って魔力じゃなかったの?え、気に入られないと帰っちゃうの?何それ。
ていうか私って精霊力持ってるのかな?
確かめたことないから分かんないや。
ということは、ヒロインは召喚できてたから精霊力を持ってたのか。マジか。さすがヒロイン。
でもまぁ、私もそれなりにハイスペックだから、できるかもしれないし、試しにやってみようかな。ただこの召喚、成功しても失敗してもどうなるか分かんないから場所は移動しよう。
私は精霊召喚の本を他の上級魔術書に重ねて隠しながら書庫を出た。
それから、急ぎ足に部屋に入ると渋るリリスを買い物に行かせて、私は机の上に本を置いた。
えーっと。
精霊召喚は発動と同時に幾何学模様の召喚陣が浮かび上がり精霊が現れる。
尚、召喚陣は精霊の属性や種類によって何千と模様があるので、その精霊が何の属性でどんな力を持っているかは陣を見ただけでは判断することはできない...か。
うん、こんなのはまぁどうでもいいかな。
問題はどうやって召喚するか、なんだけど。どっかに書いてないのかな?
う~ん、これか?いや違う、これか?いやこれも違うわね...。
ほんと何処に書いてあるんだろう。早く終わらせないとリリスが帰ってきちゃうんだけど。
ってあっ!これかも!
どれどれ、えっと...。
「...血?」
血を垂らして唱えれば召喚できるってこと?
そんなんでいいの?
私は少々拍子抜けしながら本に書いてある通りナイフで指を切り、床に血を垂らしながら唱えてみた。
「精霊召喚!」
すると、床に落ちた血が光り陣が浮き上がった。
「え、成功...!?」
ということは私には精霊力があるって事よね!?
流石悪役令嬢だわ!ヒロインに引けを取らないハイスペック!某制作チームの皆様どうもありがとう!
と言ってる間にも陣は光輝き、波紋が広がるように光が駆け抜けた。
______そして。
「...!!」
陣の中心に傷だらけで倒れ伏す美青年が現れたのだった。
お読みいただきありがとうございました。